第7話

「貴方が猫を食べた人?」

 それが紀香の僕に対する第一声だった。

 僕は中学生になっていた。中学校は家から遠く、自転車通学で一時間近くかかる場所にあった。田舎の中学校にはよくあることだけれど、周囲の複数の小学校に通っていた子供は皆、その中学に通う決まりになっていた。つまり、僕のことを知っている同じ小学校出身の人間は多く、他の小学校からやってきた生徒が僕の噂を耳にしていても、別段おかしな事とは思わなかった。

 事実、こんなことは中学校に入学して数週間、何度かあった出来事だった。同じ小学校だった奴らも、中学生ともなると僕の存在は不気味さよりも、話の種としての要素の方が強くなっていたようだった。出身小学校の奇妙な行事だとか、変わった先生だとか、そういう無難な話題の一つ程度の物に変わっていた。

「ああ」

 僕も別段、否定することはなくなっていた。もうそうやって孤立する事にも、異端視される事にも慣れ切ってしまっていた。無駄にあたふたと慌てても、相手を喜ばす事にしかならない。僕は肯定を一つだけ返して、すぐにその場を離れようとした。

 取りつく島も無く対応すれば、大抵の人間はすぐに諦めた。

 だが、紀香だけは他の人間とは違った反応を見せた。

「私も興味あるんだ、死体を食べる事」

 その日以来、紀香は僕につきまとうようになった。

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