第10話 独白

むねがくるしい。

 産まれてからずっとこうだ。

 外にでることも、走り回ることもママに禁止されている。

 学校にも行かず、一日中、本を読んだりして過ごしている。

 家庭教師が入れ替わりでボクの部屋にやってくるので、学校に行く必要なんてない。

 けれど、ボクは学校に行ってみたかった。

 ボクの周りには遊んでくれるような友達なんていない。

 病気だからだろうか。たぶん、病気じゃなくてもボクと友達になってくれる人はいないと思う。

 だって、お姉ちゃんにも友達がいないのだから。 

 にやにやとした大人ばかりがボクの周りにいる。

 おかしくもないのに笑っている彼らは気味が悪い。

 誰かがボクは恵まれているといった。いっぱいお金もあるし、パパが有名だからだ。

 ボクが普通の家の子だったら、病気に治療費もだせなかった。

 別に産まれたくて、この家に産まれたわけではない。

 パパもママも大好きだけど、ボクはみんなと同じような家に産まれたかった。みんなと同じように学校に行きたかった。健康でいたかった。

 死ぬのが怖くて、毎日お祈りをしている。 

 ママの泣き声がきこえてきた。 

 どうしたんだろう。もうすぐ手術をして体がなおるとのに。

 ママが泣いているのなんて初めてだ。

 なにかあったのだろうか。

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