320区 【藤木 紗耶】
【藤木 紗耶】 ふじき さや
★初登場回 3区★
誕生日:3月8日
身長:155センチ
血液型:O型
愛用シューズ:アシックス
小学生の時は運動会では常にリレーの選手、マラソン大会では上位と、走ることに関しては成績抜群だった。
当然、中学に上がっても迷うことなく陸上部へ入部。
短距離と長距離どちらをやるか聞かれ、「両方まんべんなくやりたいです」と答えたら、顧問に笑われ「じゃあ、間を取って中距離にしよう」と言われる。
そしてデビュー戦となった県選手権。ラストスパートには絶対の自信を持っていた藤木紗耶だが、競り合いの末、僅差で貴島祐梨に負けてしまう。
ラストスパートだけなら、同じ中学の3年生にだって負けない自信があっただけに、藤木紗耶にとっては大きな衝撃だった。
だが、この競り合いがきっかけとなって、2人は仲良くなる。
レース会場で顔を合わせれば近況を報告し合い、レースではお互い意地のぶつかり合いのラストスパート勝負となっていた。
ちなみに、勝敗は5勝4敗で貴島祐梨の方が勝ち越している。
中学最後のトラックレース前に泉原学院、聖ルートリアの2校から藤木沙耶に推薦が来ており、それを貴島祐梨に報告すると大いに驚かれていた。だが、そのレースの数日後に貴島祐梨にも城華大付属から推薦が来るのだが、彼女達は連絡先を交換しておらず、お互いの進路先を伝えることは出来なかった。
なお、藤木紗耶は、泉原学院と聖ルートリアのどちらにも顔を出し、練習に参加させてもらったが、規律が厳しい部活の雰囲気がマイペース気味の自分には合いそうにないと判断し、どちらの推薦も断っている。
そうなると受験による進学となるが、早くから亜耶が地元の英語科のある高校を志望しており、「高校まで一緒じゃなくていいかな」と言う非常に軽い気持ちで桂水高校を選んでいる。そんな軽いのりで選んだので、湯川麻子と同様に桂水高校に陸上部が存在していないことを知らなかった。高校でも陸上を続ける気でいただけに、随分と焦ったが、駅伝部ののぼりを見つけ、思わずほっと溜息をついている。
なお、彼女にとって、高校2年生の時の県駅伝は、人生を変える大きな分岐点となってしまった。
駅伝が終わって一カ月はほぼ毎日のように悪夢にうなされ、部活中はみんなに迷惑をかけたくないと、必死で笑顔を取り繕っていたが、内心では自分の不甲斐なさをずっと感じていた。
そして、自分に対する怒りと情けなさを糧に、永野綾子にも内緒でずっと追加練習をしていたのである。
彼女の腰が悲鳴を上げ、それをまほさんが治療のため診察した時、真っ先に感じたのは、藤木紗耶の精神力の強さだった。「藤木様。普通はここまで体がボロボロになるまで走れませんよ……。随分前から、違和感があったのではありませんか? 永野先輩は生徒に対してそこまで無理をさせる人ではないのは私も知っています。そもそも、あの方は、生徒の体の状況をよく観察されています。なぜ、その永野先輩すらも欺けるくらいに、藤木様は部活で平然を装い、無理を押してまで走り続けなければならなかったのですか?」まほさんにそう聞かれ、藤木紗耶は、高校2年の駅伝のこと、そして部員にも言えなかった自分の気持ちもすべて吐き出す。
その話を聞き、まほさんはかなり難しい選択を迫られることとなる。
藤木紗耶の思いを知ってしまうと、何としてでも都大路に間に合わせてあげたいと思うし、実際かなり強めの治療を続けて行けば、走らせることも可能である。ただ、それは無理矢理に走らせるだけであり、走ればゴール後に今以上に腰を悪くする可能性が非常に高い。
本来であれば、もっと時間をかけ、ゆっくりと治療をしていくべきであるのは分かっている。
だが、藤木紗耶が「これが最後になっても良いから走りたい」と言い出すのは容易に想像できてしまう。
無理矢理でも走らせてあげるか、それともここはきちんと治し、これから先の陸上人生を豊かなものにしてあげるか、まほさんは悩みに悩んだ末、藤木紗耶にすべてを話し、彼女に選ばせることにした。
当然、彼女から出た答えは「これが人生最後のレースになってもいいから都大路を走りたい」というものであった。
その答えにまほさんも覚悟を決め、藤木紗耶の治療を始めたが、その紗耶自身からある申し出があったのは、県駅伝を勝ち抜き、都大路を決めた後最初の治療の日だった。
「まほさん。気持ちが変わりました。わたし、都大路はあきらめます。今のチームが最強であるために、わたしがするべきことはわたし自身が都大路を走ることではないと分かりました。それに……。自分の体のことは自分が一番分かります。多分、わたしは都大路を走ったら二度と走れなくなるくらいに体が壊れてしまう気がします。そうなったら、うちのキャプテンが絶対に悲しむと思うんです。あの子、普段はすごく強くてかっこいいんですけど、たまに物凄くもろいところがあって……わたし駅伝当日の早朝に、思いっきり悲しませてしまったから……。あんな悲しそうな顔をした彼女、初めて見ました。もう、あんな顔をさせたらいけないって、決心がつきました」そう言って、藤木沙耶はまほさんに治療プランの変更を申し出た。
そして、さらに都大路が終わって最初の治療の時、藤木紗耶はまほさんに「ここ数週間ずっと悩んでいたんですけど、決めました。わたし、鍼灸師になろうと思います。だから、これからも、色々とお願いします。ちなみに、まほさんが嫌といってもわたしはなるつもりです」と宣言し、笑ってみせた。
それに対してまほさんは「藤木様は私のことをよく観察していらっしゃるんですね。そういう言い方すると私が断れないのをよく理解されています。でも、まだ甘いですね。弟子となると私が厳しく接することを理解されていません」と答えた。ちなみに紗耶は「まほさんでも冗談言うんですね」と返していたが、8年間東京で修行したのち、まほさんのお店で働くようになった時に、この時の言葉が嘘では無かったことを知ることとなる……。
その後は、まほさんからも色々とアドバイスをもらいながら、学校で必死に勉強し、東京で鍼灸師として働きだす。その間に同じ学校で知り合った男性と結婚もするが、紗耶の独立に関することがきっかけでお互いの意見がすれ違い出し、結局は離婚となった。
「まぁ、こればっかりは仕方ないんだよぉ~。どちらが悪いとかじゃなくて、お互いに譲れないものが、どこまで行っても平行線のままだったってことかなぁ~。でも、正直もう結婚はいいかなぁ……」と離婚後に藤木沙耶は湯川麻子に語っていた。
なお、藤木紗耶のお店は、紗耶が本来ターゲットとしていたケガをした運動部所属の中高生はもちろんのこと、足腰の弱った年配の方、働き盛りの社会人の腰痛治療、出産明けの女性の骨盤矯正などかなり幅広く治療にあたり、評判も良く、繁盛しているようである。
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