315区 【若宮 紘子】

【若宮 紘子】わかみや ひろこ

★初登場回 72区★

誕生日:5月20日

身長:164センチ

血液型:A型

愛用シューズ:ミズノ


澤野聖香達が若宮紘子のアパートを訪れた際、彼女は「昔は大人しくて、スカート大好きで、本当に女の子女の子してましたし」と語っていたが、それは半分嘘である。


確かに、若宮紘子の両親は、彼女が小さい時から、英会話とピアノを習わせ、大和撫子に少しでも近付けたいと思っていたのも事実である。


だが、実際の若宮紘子は、一つ上の兄の影響もあり、大和撫子には程遠い口の悪さと活発さを発揮し、しばしば兄と取っ組み合いの喧嘩をし、生傷も絶えない子供であった。


澤野聖香達が見た写真も、若宮紘子の両親からすると、紘子が体のどこにも絆創膏を貼っていない奇跡の一枚である。


あまりに活発的な紘子に、ついには両親も教育の方針転換を図ることとなり、彼女を陸上クラブへと入れたのだ。


兄と毎日のように喧嘩をしていたせいか、かなりの負けず嫌いな紘子にとって、自分の努力でいくらでも強くなれる陸上競技は肌に合っていたようで、水を得た魚のごとく、ぐんぐんと成長していく。


そして、若宮紘子が中学1年生の初レースで、彼女は澤野聖香に出会ったのである。

県大会1年1500mの部で優勝した若宮紘子は、2・3年生はどれだけ速いのだろうとスタンドの一番最前列で競技を見ていた時に、目の前を走る澤野聖香に一目ぼれしたのである。高校時代、若宮紘子は澤野聖香に内緒にしていたが、そのレースの直後、彼女は澤野聖香を間近で見てみたいと思い、ゴール付近まで行って、澤野聖香の横を通っていたりもする。


そこから、約半年間、若宮紘子の中で自問自答の苦悩の日々が始まるのである。

まず彼女が考えたのは、自分の気持ちは何かの間違いだろうと言うことだった。

でも、数日たっても澤野聖香のことが頭から離れず、ついには夢にまで出てくる始末……。


意地になっても仕方がないので、澤野聖香のことが気になっていることは自分自身で認めることとした。


それを踏まえて次に思ったのは、恋愛的な好きと言う意味ではなく、ランナーとして澤野聖香の走りが好きかと言うことだった。


だが、自分が澤野聖香と喋ったり、一緒に遊びに行ったりしたいかと想像してみると、したくてたまらない自分がいることに気付き、澤野聖香が明らかに恋愛対象となっていることに気付く。


そして、他の女性に対してはどうだろうと興味が沸き、クラスで誰もが認める可愛い子や、美人で有名な先輩、誰にでも優しい自分の友達を頭に浮かべてみたが、別に恋愛をしてみたいとは微塵も思わないことに気付く。


それを踏まえ、若宮紘子が出した結論は、「自分は澤野聖香を好きになってしまった。けど、それは相手が澤野聖香だからであって、その性別がたまたま自分と同じ女だった」ということであった。


そう自覚してからの若宮紘子は、吹っ切れたように真っ直ぐ歩み歩き出す。


澤野聖香に名前を憶えてもらうために、少しでも速くなろうと練習を頑張り、澤野聖香と同じレースに当たれば、積極的に話しかけてみたり……。


そして、自分でもさすがにやりすぎかと思ったが、彼女と同じ高校で走ろうと考え始める。


ただ、この計画には大きな誤算があった。若宮紘子は、澤野聖香が城華大付属に進むと信じていた。だから、自分ももっともっと強くなれば、城華大付属から推薦が来ると思い、中学3年生の時に必死で練習したのである。その結果が全国2位であった。


だが、夏に全国で2位になった後、若宮紘子は知ったのである。なんと、澤野聖香は城華大付属に進学していないということを……。


まさかの桂水高校。名前くらいは聞いたことはあったが、どこにあるのか、どんな学校かは全く分からなかった。そして、若宮紘子は桂水高校を調べて愕然とする。なんと、県内でも有名な進学校であったのである。しかも、彼女の中学区域からは、校区外で普通科は受験がかなり難しい。ただ、理数科であれば県内誰でも受験は可能だが偏差値はかなり高い。


勉強が好きではない若宮紘子は、一瞬、澤野聖香と同じ高校で走ることを諦めそうになる。だが、すぐに「でも、桂水高校だと城華大付属と違って部員数も少ないし、聖香さんといつも一緒にいて、いっぱい喋ることもできそう」と考え直す。


自分で、ふと思っただけだったが、その考えは若宮紘子に大きな希望を見出させた。


そのおかげで、好きではない勉強も「澤野聖香と一緒に走る」と言う目標のために必死で頑張ることが出来た。中学の担任をとおして、永野綾子に連絡を取ってもらい、受験を自力で突破してくるなら、入部はもちろん大歓迎だし、桂水市で1人暮らしが出来るように学校側の内部調整は整えておくことも約束してくれ、あとは彼女自身が努力するのみとなり、さらに勉強にも力を入れる。


勉強面ではそこで力を使い果たし、高校に入ってからはそこそこ程度の成績しかとれなかったのはご愛嬌だろう。


ちなみに、澤野聖香との関係は、園村晴美というこれ以上無いほどに頼りになる味方のおかげで、自分の気持ちを伝えることが出来る。ただ、若宮紘子自身あの場面でキスされるのは全くの予想外であった。でも、その日から3カ月くらいは夢に何度も出てくるくらいに、強烈な思い出となったようである。


それと、若宮紘子が高校2年の県高校選手権で澤野聖香と2人で撮った写真を彼女は大人になった今でも大切に保管している。一緒に都大路を目指し、気持ちを伝え、たくさん同じ時間を過ごし、若宮紘子が出した結論は「やっぱり澤野聖香が好き」と言うことであった。


自分でもその思いはいつか消えてなくなると思っていたが、大人になっても心の隅にずっとその気持ちは残っているようである。


最後に陸上のことを語るなら、高校を卒業後、実業団へと進んだ彼女は、トラックでは5000mで日本選手権7年連続6位入賞と全国でも安定的に好成績を残す。さらには、社会人になってからは、高校生の時以上に駅伝で強さを発揮させる。彼女が所属するチームは若宮紘子をエース区間以外で使えるほどに選手層も厚く、彼女はいつも任された区間で、首位でタスキを貰えば2位以下を圧倒的に突き放し、チームが出遅れた場合はごぼう抜きで上位へとチームを押し上げる言わばゲームチェンジャー的な役割を果たしていた。


一度引退したのちは、親友の住吉慶に触発され市民ランナーとして再び走り始める。

市民ランナーとなってからは、もっぱらロードレースへの参加が多く、あちこちの大会で優勝もしているようである。

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