312区 【大和 葵】

【大和 葵】 やまと あおい

★初登場回 3区★

誕生日:4月16日

身長:160センチ

血液型:AB型

愛用シューズ:アディダス


品行方正・清廉潔白・容姿端麗・学力優秀・運動神経抜群。

桂水高校時代の大和葵が同級生や教員から受けた賛辞の言葉はどれも素晴らしいものばかりである。


実際、彼女の学校での生活態度や成績、部活での頑張りをみれば、どれも大げさなものではないと誰もが思うものである。


だが、それは彼女の一面に過ぎず、彼女は他にも多くの姿を持っている。


例えば、小さい頃から、色々な物を収集する趣味があり、幼稚園に上がる頃には、セミの抜け殻、栗、どんぐり、桜の花びらなど、自然物をコレクションしていた。

小学生頃になると、その興味は食品関係へと代わり、板チョコの空き箱を集め始めることからスタートし、ペットボトルのキャップ、ヨーグルト飲料のボトル、お弁当に入っている魚の醤油入れ、父親が晩酌に飲んでいたビールの缶など、種類も多岐に渡るが、その数もすさまじく、ペットボトルのキャップに至っては、400個近く集まっていた。


中学生になると文具用品に興味を持つようになり、シャーペンの色付き芯、消しゴム、マスキングテープ、付箋、蛍光ペン、ノートなどを大量にコレクションしていた。


高校生になり北原久美子に出会うことで、パソコンへの興味を示し、そこからなぜかネットでの画像取集に没頭してしまい、親にねだって買ってもらった大和葵のパソコンには、「ネコ」、「雲」、「寿司」、「天体」、「神社」、「日本酒」、「指輪」、「鉱石」と名付けられたフォルダーにそれぞれ何百枚という画像が入っていた。


なお学校や部活ではきちんとしている彼女も家ではかなりだらしがない部分もある。

学校も部活もなければ、割と朝寝坊であるし、夕方ごろになっても髪がぼさぼさのままであることも珍しくなく、家族もその姿を見慣れており、もはや何も言うことはなかった。


他にも、両手に飲食物を持っており、足で冷蔵庫の扉を閉めようとして怒られたり、リビングに服が脱ぎっぱなしになっていたり、携帯や財布をどこに置いたか分からなくなって、探し回ることも度々ある。


妹の大和梓も、姉が学校や部活で先生や他の生徒にどのように見られ、どのような評価を得ていたかを察しており、大好きな姉のイメージを崩すことをしたくないので、家での姿を話すことは決してしなかったほどである。


また、好奇心旺盛で、「何事も経験」が彼女の人生のモットーであり、その無駄にすごい行動力がしばしば家族を困らせている。


作中に出て来たメイド服などは、大和家ではまだマシな部類であり、酷いものになるとNHKの番組に登場したピタゴラ装置に感銘を受け、家中をルートにした物凄く大掛かりな装置を作り、家族の生活にも支障をきたしていた。


他にも、高校を卒業し、部活も終わり、防衛大学校に入学する直前、この後の大学生活のためにと、肩甲骨辺りまで伸びていた髪をバッサリと切った。そこまでは、良かったのだが、一度やってみたかったと、切ると同時に髪を青色に染めて家へと帰って来たのである。


これにはさすがに家族も唖然としてしまい、「防衛大に行く前にきちんと黒に戻すのよね?」と確認するのが精一杯だった……。


ただ、駅伝部が発足した時に、すぐに目標を書いた横断幕を作成したり、文化祭での事務手続きやメイド服の作成など、その行動力が遺憾なく発揮される場合も多々あるのも事実である。


なお、彼女は小学生の時には「うちは医者にはならない」と早々に宣言していた。

それを聞いた両親も「あら、そうなの」の一言で彼女の意思を受け入れてしまった。

彼女の宣言に対し、特に驚くこともなく、反対もしない辺りが、大和家の器の大きさだと言える。



そんな彼女にとって人生最大の波乱が起きたのが、高校3年生の県駅伝終了後、数日してからであった。


アンカー勝負で負けたから波乱が起きたのではない。


梓が、自分の叶えられなかった都大路への夢を代わりに叶えたいと言い出したことが原因で波乱が起きたのである。


大和葵にとって、駅伝部の活動は、都大路には行けなかったが、部員全員と全力を出し切った、自分自身の青春そのものであった。それを突然妹の梓が引き継ぐというのである。決して梓が悪いわけではない。


品行方正・清廉潔白・容姿端麗・学力優秀・運動神経抜群。

学校内ではそう褒められていた大和葵も、世間では「妹に頭の良さでは勝てない可哀想な姉」と言う心無い声を耳にすることが何度もあった。


そんな声を「自分は自分の人生だし、妹は妹の人生がある。それは決して交わることは無いし、それでいい」と聞き流していたが、大和葵も一人の人間である。無自覚ではあるが、そんな声を聞くたびに心の奥には黒いヘドロのようなものが溜まっていき、気が付けば溢れる寸前にまでなっていたのだ。


彼女は、梓の申し出を聞くと同時に、妹がついに自分の人生にまで介入して来たという事実に、自分の感情を抑えきれずに、それを一気に爆発させてしまう。


梓は入部の際、部員に葵から言われたことをサラッと流して説明しているが、この時梓は相当に酷い言葉で、何度も何度も罵声を浴びせられている……。それだけ、大和葵も感情を抑えきれなかったのだ。


ただ、大和葵のすごいところは、頭の片隅に、その感情に逆らえる理性がほんのわずかにあったところである。


「このままだと、家族が崩壊する」

そう思った大和葵がとった行動は、永野綾子に電話をすることであった。


そういう意味では、永野綾子は部員からかなりの信頼を得ていたと言えるだろう。

その出来事が土曜日の昼過ぎだったこともあり、永野綾子は大和葵に「今から迎えに行くから自分のアパートに泊まりに来い」と誘う。大和葵もすぐに両親の許可を貰い、出かけることとした。両親としても、それが大和葵のためと思ったのであろう。


その日の夜、晩御飯を食べ、お風呂も済ませた後、結果的に2人は一睡もすることなく電気を消した部屋で朝まで色々なことを語りつくすこととなった。


その時、普段の姿からは想像もつかない、暗く重い言葉を吐き続ける大和葵を見た永野綾子は、「いつもの彼女が純白なら、今はこの暗がりの中ですら黒く見えるくらいに漆黒だな」と感じると同時に、これだけの感情を抱えていながら、普段の大和葵があれだけ白く綺麗でいるために、彼女は無意識にどれだけ自分を抑え込んでいたのだろうかと考え込んでしまった。


それでも、夜が明けるころには、

「綾子先生に心の闇を全部吐き出したら、なんだかスッキリしたし、へんな拘りもなくなりました。てか、ここまで吐き出しといてなんですが、来年から梓のことよろしくお願いします」と、大和葵は永野綾子に笑ってみせた。


ちなみに、この日、永野綾子が大和葵の心の奥に潜んでいた思いを聞いたことと、自分は生徒を名字で呼ぶと決めていることが、梓が入学し大和姓は一人しかいなくても、梓のことを頑なに大和妹と呼ぶ理由である。永野綾子なりの、大和葵と大和梓は別々の人間であり、それぞれの人生があるのだから、自分も同じ「大和」と呼ぶことはしないという、気遣いである。


なお、その後防衛大学校へと進んだ大和葵は、当然のごとく陸上部へと入部する。


そして、4年間のうちに800mからマラソンまでの中長距離種目において防衛大学校陸上部女子の歴代記録をすべて塗り変えるほどの大活躍をみせる。


防衛大学校を卒業後は陸上自衛隊の普通科という厳しい部署を自ら選び、きつい訓練などにも自分から積極的に参加していく。また、海外派遣や災害派遣などにもチャンスがあれば参加し、日々全力で生きている。そういった大和葵の現状を聞くと、永野綾子はあの日の夜のことをいつも思い出し、「あの夜の大和の姿は、とても世間に見せれるものではないが、彼女の人生にとっては必要なことだったのだろうな」と思うようである。


ちなみに、永野綾子があの日の夜、気になって聞いてみたが、大食いとメイド服が大好きなのはただの個性であって、ストレスなどとは全く関係が無いとのことであった……。


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