前のエピソード――３１０区　【滝川　由香里】

【永野　綾子】　ながの　あやこ

★初登場回　７区★

誕生日：４月３０日

身長：１５８センチ

血液型：Ａ型

担当教科：化学・生物

ランナーとしての永野綾子のみを知る人は、彼女を褒め称える言葉を惜しみなく発する。

ランナーとしての永野綾子を一切知らない人は、あんな滅茶苦茶な人は見たことがないと口を揃えて言う。

それほどまでに、陸上に関することと、それ以外のことでの差が激しいのが彼女、永野綾子である。

陸上での伝説的な走りや、指導者としての功績も多く語られるが、それ以上に私生活における破天荒なエピソードにも事欠かない。

特に男関係に関しては、本当にダメなエピソードしかない……。

不思議と彼女は人を引きつける魅力を持っており、そのおかげで全国トップレベルのランナー達とも知り合いだったりもする。

その不思議な魅力は私生活でも存分に発揮され、社会人になってからは、彼氏がいない期間が半年以上あったことはない。別に永野綾子が自分からお願いして周囲の人間に男性を紹介してもらっているわけでもないのに、なぜか彼氏がよくできる。

ただし、半年以上同じ人と続いたこともない……。

もっと言うなら、3カ月間すらない。

今までの最短記録は８時間、最長記録は2カ月と２８日１１時間である。

ちなみに、永野綾子の方から別れを切り出したことは過去一度もなく、毎回、男性側の方から言い出してくる。

数人に1人は、はっきりと言い出さず音信不通になることもある……。

親友の滝川由香里も、後輩のまほさんも、永野綾子の恋愛が続かないことは毎度のことであり、さらには私生活の永野綾子を見ていれば納得なので、もはやフォローすることも励ますことも、生活態度を改めさすことも一切しない。

そんなこともあり、永野綾子の血液型がA型ということを、誰も信じてくれない。

大学時代に付き合っていた彼氏には「もう一度ちゃんと検査してみた方がいいんじゃない？　ひょっとすると生まれた時に病院で入違っている可能性もあるかもよ？」と言われたこともある。

永野綾子の両親も、自分達の子育てが間違っていたのかと、かなりへこんでいるが、救いは妹の永野恵那が陸上面では姉を尊敬していても、私生活の面では反面教師にしてくれたことである。

滝川由香里からは「手料理まで作って逃げられるって、相当よね。男性からしたら胃袋掴まれてるのに、逃げ出したくなったんだから。うーん、私はすっかり綾子の料理の味に慣れてしまったけど、世間では美味しくない部類なのかなぁ？　いやぁ、でも、作れない分味覚には自信あるしなあ」と言われる始末。

なお、言われた時期が、澤野聖香が２年生の時の夏合宿前であったので、あの合宿中、永野綾子は料理の腕を気にしていたのである。

まほさんは永野綾子に対して「永野先輩が結婚するためには、通常出会い、お付き合い、結婚と言う手順を踏むのが常識ですが、そこを出会い、結婚、お付き合いとするしか手段はないと思われます。今までの戦歴から行くと、確実にセットで離婚が付いてくると思いますが、結婚出来たと言う事実の前では些細な誤差です」と、言い切っている……。

ちなみに、ここまで永野綾子の恋愛が続かない原因の一つは、彼女があまりにも陸上バカすぎることもある。

選手時代はもちろんのこと、引退してからもありとあらゆるレースをチェックし、毎月陸上雑誌を隅から隅まで目を通す。また、指導者としては素晴らしいことだが、最新のトレーニング方法の論文なども読み漁り、筋トレなどは自分でも試してみる。さらには栄養学についても独学で勉強しており、実際に自分で調理してみたりもする。

この永野綾子の生活と考え方に、大体3割の男が脱落する。

「今の彼女の職業上、仕方ないな……、いや、むしろ仕事熱心だな」と思った７割の男のうち、８割は永野綾子の私生活を見て脱落する。

最後に残った僅かな男性も、ほぼ全員が、「せめて一夜を共に」と思い頑張っているだけで、それが果たされると、さっさと逃げてしまう……。

最後に指導者としての功績を語るなら、彼女が城華大付属高校の監督に就任し、阿部監督のやり方や伝統を大きく変える部分もあり、OG会から批判的な声も出ていたが、自分の指導方法を決して曲げることなく、就任３年目から全国３連覇を達成することで、周囲を納得させてみせたのは、彼女の才能というべきであろう。