310区 【滝川 由香里】

【滝川 由香里】たきがわ ゆかり

★初登場回 40区★

旧姓は府内(ふない)由香里。


石城市にある従業員110名を抱える府内建設株式会社の社長令嬢。


作中で永野綾子が説明していたが、永野綾子とは実家が100mほどしか離れておらず、保育園から中学までずっと一緒である。「地元に密着してこその建設業」という社長であり父の考えの元、特に私立の学校には通っておらず、滝川由香里自身も地元の県立高校を出たのち、芸術大学の音楽学部を卒業している。


なお、滝川由香里には2つ上の兄がおり、こちらが府内建設株式会社の4代目社長を目指し、現在修行中である。


性格はまったく違うが、なぜか永野綾子とは馬が合い、幼いころからずっと親友である。


なお、本人の耳には決して入ってこなかったが、周囲のクラスメートからは「あの永野綾子と親友でいられるなんて、府内さんはすごい。あれが社長令嬢の心のゆとりというやつか」と囁かれていた。そんなことを囁かれるほど、永野綾子には破天荒なエピソードが多いのも事実である。


例えば、小学生の時、成長が早く他の子よりもちょっと大きかった滝川由香里の胸をクラスの男子数名がからかった際に、その男子達に永野綾子が食ってかかり、3人を殴り倒してしまう。永野綾子の両親が必死に謝ってまわり、永野綾子自身もしばらくは男子から野蛮女と呼ばれていたが、「私は悪くない」とずっと言っていた。


なお、滝川由香里は中学の時にこの事件を振り返り、「綾子の行動力が羨ましかったし、自分の弱さを感じてしまった」と、そっと本人に言ったことがある。


滝川由香里の仕事について、本人は澤野聖香が1年時の夏合宿打ち上げで、桂水高校女子駅伝部員に分かりやすく、「ピアノを弾いてたまに歌を歌っている」と伝えており、彼女が結婚式場やパーティーなどでピアノ演奏をしているのも事実だが、実際にはかなり幅広く多岐にわたって活動している。


府内建設株式会社の社長であり滝川由香里の父の教えを、彼女自身もしっかりと引継ぎ、「音楽で地元に貢献する」を自身のコンセプトとして石城市、笠戸市、桂水市を拠点として活動しており、「任された仕事の出来栄えには拘れ。だが、持ち込まれる仕事の内容には拘るな」という父の教えを守り、音楽に関することならどんなことでも引き受けている。


「子供達のお手本用に校歌をCDに録音してほしい」と小学校から頼まれれば、滝川由香里が自身でピアノを弾き、自ら歌って作成。また、「うちのお店のテーマソングが欲しいのよね」と言う地元の肉屋さんの依頼を受け、作詞作曲:滝川由香里、歌:滝川由香里でオリジナルのテーマソングを作り、なおかつ肉屋の前で彼女自身がギターを弾きながら歌ってみせた。喫茶店のマスターが店にぴったりなクラシック系のBGMを探していると言えば、その選曲をしたこともある。


他にも、「魚嫌いな子供が多いので、子供が魚を好きになるような元気で楽しいダンスを作ってほしい」と近所の保育園からむちゃぶりをされた時も、作詞作曲を自ら手掛け、鯛の被り物とヒトデやワカメを貼り付けた服を自作した上で、「おさかなは~♪おいしいたべもの♪えいよういっぱい♪たべるとげんきがでてきちゃう~♪」と自らが園児の前で歌いながら踊ってみせた。


なお、その一週間後には桂水市野球場で行われたプロ野球の試合前に、黒のドレスにしっかりと結った髪型で登場して国家斉唱を行い、現地でたまたま観戦していた保育園の先生を「え? あの人先週園に来た人? 全然雰囲気が違うんだけど……」と、混乱させている。


ちなみに、旦那と知り合ったきっかけは、「府内建設株式会社の永年勤続表彰者に細やかな慰労会をしたいから、石城市内の飲食店を食べ歩きして、ここだという店を見つけてこい」という父からの指示の元、経費で落とすのは無理と言われ自費で食べ歩いていた時に、和食系の店で働いていた旦那と出会ったのがきっかけである。


「それがさ、彼がこういうのもありますよ? って、自分が作ってくれた料理を出してくれたんだけど、もうめちゃくちゃ美味しくてさ! あの瞬間に私の胃袋は完全に彼に捕まれた」と後に滝川由香里は永野綾子に語っていた。


交際も順調に進み、結婚すると旦那は桂水市に自身の店を開き、それを期に夫婦で桂水市に移り住む。


なお、旦那は滝川由香里の料理が壊滅的なことを熟知しているため、彼女には店の手伝いは一切しなくていいいし、日々の食事も自分が作るから、そのまま音楽を主体として頑張れと強く念押ししている。


結果的には、桂水市に住んでいたこと、海の家を手伝っていたこと、大きな車を持っていたことが、永野綾子の餌食になる要因となってしまった……。


最初は、どうしていいか分からなかった滝川由香里だったが、駅伝部メンバーのひた向きに努力する姿と、「やっぱり陸上の時の綾子は普段とは別人だな」という思いに引きずられ、澤野聖香が教師となって桂水高校に赴任してくるまで、仕事の合間を縫ってではあったが、副顧問を引き受けてくれていた。


ちなみに、「陸上部での綾子の姿を見ていると、私生活の破天荒ぶりが余計に目立つ気がする」と滝川由香里は永野綾子に暴露し、大いに反論を受けている。だが、そういうことを言えるのも彼女達の信頼の深さゆえなのかもしれない。


また、部員の前では、頑張って抑えているが、滝川由香里の永野綾子に対する辛口は相当なものである。


ある時、「子供を授からないし、2人だけだと寂しいから」と滝川夫婦がウサギを飼いだし、早速永野綾子が見に行った際、永野綾子が「よし、このウサギに私の名前の一部を授けよう。このウサギの名は今日から『アヤ』だ」と宣言すると、滝川由香里は瞬時に「嫌よ! あなたみたいな性格のウサギになったらどうするのよ! 滝川家の汚点じゃない!」と反論し、その返答に唖然としていた永野綾子を見て、滝川由香里の旦那が後ろで大笑いしていたことがあったくらいである。

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