第五話

僕はふと音のした方を振り向いた。高校生ぐらいだろうか。白く透き通るような肌が未だ姿を見せる月からの光に照らされていた。彼女はとても綺麗だった。どうやら足元を気にして此方にはまだ気づいていないようだった。彼女はとうとう僕の座るベンチまで来ると僕の隣に座った。


それからしばらくの間お互い交わす言葉もなく座っていた。

「雪なんて珍しいですね。」

突然、あたりを支配していた静寂を破り透き通るような声が聞こえた。

「そうですね。こんな日はお家でゴロゴロしているのが1番です。」

僕は初対面の人に接するように丁寧に答えた。だが、彼女は何がおかしいのかクスクス笑った。僕は不思議に思って

「何がそんなにおかしいんですか?」

と、尋ねた。しかし彼女はクスクス笑っていただけであった。しまいに彼女はクスクス笑いでは耐えきれなくなって声をあげて笑い出した。

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儚き恋の果てに 香坂京香 @Kyoka_Kousaka

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