Beyond that gate ②

 わたしはまるでルゥみたいにはいはいして、頑張って温室からでてころげながらお屋敷までかけてって地下室に戻ったの!


 怖い!


  怖い!



 腕!


  蛆がもじもじ動いてた!


 取れちゃったの?

 


 「はぁ……ハァ……どうしっ けりがっ」




 どうして?



   どうして?



 立てない……息が出来ない……!


 くるしぃ……!

  


 「ふぅぅ!? あああ!!」



 ルゥが、うずくまちゃったわたしをぎゅーってする!



 「る"ぅ うえっ うえ"え"え"え"え"え"え"え"え"え"!!!」

 

 

 気持ち悪くて、いっぱいうえってちゃう!


 ルゥが、わたしをぎゅーってする……うえってしたのいっぱいかかってるのにそれでもぎゅーってするの……。

 

 「る"っ……う、うわああああああああん!!」

 

 「……」



 怖くて、怖くて、抱きついていっぱいいっぱい大声で泣いたの。






 どれくらいそうしてたのかな……ルゥは汚れちゃうのにぎゅーぎゅーってしてわたしが泣き止むまでそうしてくれた。



 「ぐじゅ……ご めんね、ルゥ」



 うえってしたのでべちゃべちゃのルゥとわたし、早くルゥを洗ってあげたいけど急がなきゃ……。

 

 「ろ ろのばんにっ 早く言わなきゃ グスッ」


 

 心配そうなルゥを置いて、わたしは階段を登ってキッチンに行く……あれ?



 廊下が暗い?


 もう暗い……ううん、電気がついてない?


 「ロノバン? いないの?」



 キッチンを覗くけど薄暗くて、誰もいない。


 いつもならお夕食の準備してるのに……。


 それよりも、早くケリガーの事知らせなきゃいけないのに!



 ドアをしめて、リネンとリーンの部屋を覗くけどいない……だれもいない……!



 「マンバ! まんばーーーーーー!!」



 怖くなって、走って、走って、マンバを探す!



 マンバ!


  マンバ!!


 誰か!


 誰かいないの!?



 上手く走れない……暗い廊下がいつもより長く感じるよぉ……怖いよ! 



 バン!


  バン!

 

 「きゃっ!?」



 上?



 何の……ううん、コレ知ってる……リーンの?


 今度は、何かが割れる音と叫び声する……リーン? マンバ?



 どうしよう!



   どうしよう!



 パパ……パパ……怖いよ……!



 バン!


  バン!


 バン!



 って、また!



 怖くて、足が動かないよ!


 でも、でも……行かなきゃ……マンバやリーンになにかあったのよ!



 

 「はぁ……はぁ……はぁ……グジュ」



 目の前がぐらぐらする……息がうまく出来なくてくるひぃ……。


 上手く歩けないけど、ルゥみたいにはいはいして一生懸命階段をのぼる。


 怖い……怖いけどっ、マンバもリーンもわたしの友達で使用人よ!


 怪我をしているかも知れない……わたしっが、がんばらなきゃ!


 階段からちょっとかおだしたら、また叫ぶ声がして、何かが倒れる音がしてドアがバンってする!



 わたしのお部屋?


 開いたドアの所……メイド服の手が床の上でくてんってしてる。


 「り -ん……?」


 

 ドアがギギ~ってして、ショットガンの筒がにゅってした!



 ダメ!


 「______!! 止めて! 痛いことしないで!!!」



 わたしは、走ってぐったりしてるリーンをギューってする!

 




 「サシャ!」




 聞き覚えのある声? 


 わたしの事よんだ!?


 怖いけど、顔を上げ_____ぎゅ。



 「良かった! サシャ!」



その人は、わたしをぎゅーってする。



 「ソ……ウル?」

 

 

 ソウルだ。



 ソウルが、ぎゅーってして『よかった、みつけた』っていう。



 「ソウル な ん」


 「サシャ! 君はここにいちゃいけない! オレといこう!」



 行く?


 どこに?


 

 ソウルは、ぎゅーってしてたのはなしてわたしの腕を掴んで立たせる。



 「ぁ、まって! リーンを」


 「放っておけ!」



 すごく怖い声で、ソウルはどなってわたしを引っ張るの!


 なに?


 何で?



 ソウルのもってるショットガン……あれはリーンのもので、リーンは床に倒れて動かない……そんなっ!



 「まって、まってよ! ねぇ、ソウル!」



 ソウルは黙ったまま、あっと言う間にわたしの腕を引いて階段を降りようとする!



 「放して! いやっ! 誰か助けて!!」



 わたしは、怖くなっていやいやしたけどソウルは全然手を放してくれないの!



 腕を引っ張るソウル。


 振り返てどんなに叫んでも、リーンは動かない_____!



 「ソウルっ、ソウルが、リーンを撃ったの?」



ソウルは黙って引っ張るだけ……そんな……そんな……ほかのみんなも?



 ロノバンは?


 マンバは?


 ……ケリガーがあんな事になったものソウルがしたの?


 腕にソウルの指、ギギッてする。



 「いや! 放して! 放してよ!! どうして!? どうしてそんな事したの!?」


 「サシャ! 大人しくついて来るんだ!!」



 床にペタンってして、いやいやするわたしを抱えようとしたソウルがすこしかがんで______。




 「がっ!?」


 「ソウル……?」


 

 急に苦しそうな顔をしてぶるぶるしたソウルは、後ろを振り向いて『な……?』って言ってがくって手を地面についた。



 ぬるっ。



 指に何かつく……血!? 



 「お嬢様を放せ!」


 「マンバ!」



 ソウルの体の向こうから怒鳴るマンバの手には、真っ赤になった果物を切るナイフ。


 

 ザクッ!



 て、マンバはソウルの背中をもう一度でナイフを刺したの!



 「があぁぁあぁぁ!!」


 「お逃げ下さい! お嬢様!!」

 

  

 そう叫んだマンバをソウルが突き飛ばして、白いお部屋のドアにぶつかっちゃう!



 マンバ!



 わたしは、ソウルの腕から抜け出して階段を一気に駆け下りる!



 誰か助けを呼ばなきゃ!



 ロノバン!


 ロノバンはどこなの!?


 ソウルが『サシャ! 待て!!』って、叫んでる____いや! 


 どうして!


 どうしてよ! ソウル!


 いい人だと思ったのに!


 マンバの言うとおり……わたしの所為だ!


 ソウルの事、パパとロノバンにちゃんと言うべきだった……!



 頭がぐらぐらする。


 お屋敷がいつもと全然違って見える。


 ……走っても、走っても、前に進んでないみたいに感じる!



 ダメ!


 しっかりしなきゃ!


 わたしは、ごしゅじん________あ。



 「……ルゥ______!」


 

 そうだ……! 


 ソウルは、ルゥを探してたんだ!


 このままじゃ、ルゥを連れて行かれちゃう!


 わたしは、急いでルゥの地下室にいく!


 マンバが大変なのは分かってる……でも、でも!!



 「ルゥ! るぅーーーーー!!!」



 階段を駆け下りてルゥを探す!


 けど、いない!

 

 「そんなっ! ルゥ! ルゥーーーー!!」


 

 どうして!?


 ドアはちゃんと閉めてたのに! 


 マットレスも、バスタブも、クローゼットの後ろも探したけど見つからない!


 どうやってか知らないけど、ルゥが地下室をでてっちゃたなら大変___ソウルに見つかったら連れてかれちゃう!



 わたしは、階段を駆け上がってドアをあけて廊下にに出ようとした!  


 

 「きゃぁ!?」



 廊下が……廊下が、燃えてる!



 みわたす限りいっぱいいっぱい燃えて、天井まで火の柱が出来てる!


 熱い!


 煙が!


 どうして?!


 さっきまでなんとも無かったのに!!


 こんなに燃えて、出られないよぉ!!

 


 「ケホッ ケホッ!」



 もうもうの煙が凄くて、ドアを閉めるけど隙間からドンドン入ってくる……どうしよう!  


 「あっあっあっあ!!」


 どうしようって思ってたら、階段の下のほうでルゥが鳴いた! 



 「ルゥ!?」


 わたしは駆け下りて、ルゥをぎゅーってする!



 「悪い子! どこにいたの!!」



 おしっこ臭い_____けど、無事で良かった……でも。



 「ケホッ ケホッ……」



 どんどん煙がドアの隙間から入ってくる……早く逃げなきゃ!



 「どうしよう……ケホッ」



 廊下があんなに燃えて、ルゥをつれてどうやって逃げたら良いんだろう……?


 それに、マンバやソウル……リーン___!


 パパ……パパ、わたし……。


 煙がどんどん地下室に入ってくる!




 「ふううう! ぶぶぶっ!!」



 ぎゅーってしすぎちゃって、ルゥがばたばたする。



 放してあげると、ルゥはいきなりわたしのスカートの裾に噛み付いた!



 「うっ! うっ!」


 「ルゥ、なに? どうしたの?」


 

 ルゥは必死な顔で、引っ張って『う~う~』言う。



 マットレスの所?



 「そこに何かあるの?」


 「ああっ! うううう!!」



 ルゥは、マットレスの所に走って頭でずずずって押す。




 「あ!」



 ルゥがマットレスを押すと、そこにはすごくボロボロに錆びた鉄の柵?



 「これって……」


 わたしはルゥの傍に駆け寄って、柵に手をかざす____ひゅうひゅうしてて煙もどんどん吸い込まれてく。

 これ、たしかケリガーがルゥのトイレを作る時に言ってた……地下室にお外から空気を入れる所、『つうふうこう』って言うのだ!


 「そと……外に繋がってる?」


 「うっ! うう!」


 ルゥが『早く! 早く!』って、わたしの背中を頭で押す!


 錆びた柵を掴んだらガコンって簡単に外れる。


 ……真っ暗な四角い穴。


 ルゥが伏せしてやっと通れるくらいの大きさのとこに、ひゅうひゅう煙が吸い込まれてく。



 そして、凄くおしっこ臭い。



 ……ルゥ……逃げようとしてたんだね。



 ルゥはじっとわたしをみて、『あ あっ!』っていう。


 ブーツ脱がせてって、そう言ってるからぬがせてあげる。


 きっとそれは、あの中に入る為。


 そうよね……急がなきゃ、外にでて誰か呼ばなきゃ……!



 わたしは、先に入ってってルゥに言われて『つうふうこう』の中に入った。



 う。


 狭くておしっこ臭い…それに急な坂みたいになってるからのぼりにくい。


 「ケホッツ ケホッツ!」


 後ろから煙がどんどん入って来ちゃうから、喉と目が痛い……急がないと!


 わたしはルゥみたいにはいはいして、一生懸命狭くて臭くて暗い坂を上る!


 急がなきゃ!


 助けを呼びに行かなきゃ!


 けど、つるつるしてる『つうふうこう』の中はすべってなかなか前にすすまない……!


 ズルッ!


 「きゃっ!」



 足がすべって、折角登ったのに滑り台みたいにすべっちゃうけどおしりが後ろからついて来てるルゥにぶつかってすぐにとまった。


 「ルゥ、ありがと」



 ルゥは、そのままわたしのおしりを押しながら登ってくれる。



 ……そっか、こういう狭いとこでは手足の短いルゥのほうが動きやすいのね……。




 ガコン!



 上についたわたしは、錆びた鉄いの柵をはずす。



 「ルゥ! おいで」



 ルゥの首輪をひぱって、『つうふうこう』からんっしょってだしたげる。



 ここは、お屋敷の直ぐ横のゴミを燃やすところだわ……こんなところに繋がってたなんて。



 どうりで、ルゥが最近とっても汚れてたのね! 



 「うっ! うっ!」



 ルゥが、またわたしのスカートに噛み付いて引っ張ってる。



 「うん! いそ_______」



 お屋敷のゲートへ急ごうとしたんだけど、わたしの目に何が見えた。



 まって______何で?




 「うううう!! ふうううう!!!」



 ルゥは、動けなくなったわたしのスカートを必死にひぱってる。



 『見るな!』って呻るの。



 わかってるの……けど、けど!


 ゴミの焼くとこに頭から入ってるのよ……見覚えのある白いズボン!



 「ロノバン!!」



 わたしはルゥを振り切って、ロノバンの足を掴んでゴミを燃やす煙突のついた暖炉みたいのからひっぱる!



 ずるって、ロノバンは落ちた。



 「いやあああああああああああああああああ!!」




 ロノバンの顔っ、焼けちゃってる!


 皮がこげて、お肉が黒くなって……!




 「ロノバン! ロノバン! しっかりして!! いやっ! やああああああああ!!」



 ゆすっても、ロノバンは動かない……そんなっ……どうして……?



 ソウル?



 ソウルがこんな事したの?


 どうして……?


 ロノバンが何をしたっていうの!



 「ロノバン……ロノバン……!」


 

 ロノバンをぎゅーってする。



 物知りなロノバン。



 知らない事。


 分からない事。


 何でも教えてくれた……この手が作ってくれる紅茶もクッキーもお料理もとっても美味しいかった。



 パパとルゥの次に大好きなわたしのシェフ。


 「うっ! ああっ!!」



 ルゥが吠えるけど、ロノバンの事があきらめられなくて手を握って動けなくなる。



 ぐいぐいってルゥが引っ張る……うん、うん、分かってるの。


 ……分かってるのよ……急がなきゃ……全部燃えちゃう前に。



 「ロノバン……」



 ロノバンの手をそっと胸にそっと組ませてあげる……目の前がうるうるで何も見えないのをルゥが引っ張ってくれる。



 行こう。



 急げば、誰か助けを呼べば、マンバを助けられるかもしれないもん!



 こげちゃったロノバンにキスをして、わたしはルゥとゲートへ向った。


 




 もう少し!




 もう少しよ!



 わたしのずっと後ろで、ルゥは一生懸命走ってる。


 手も足も短いくて、ブーツも履いてなくてミトンだけじゃ黄色いレンガできっとぷにぷには破けて痛い筈なのにルゥは笑ってる。




 嬉しいのね。



 ルゥは、ここから出て行けるのがそんなに嬉しいのね……。



 あのチェリーブロッサムをこえたら、ゲートはすぐよ……お外に出たら……お外に出たら……。




 誰かにルゥを見られたら。



 きっと、さよならしなくちゃいけなくなる。


 ルゥはそれでも嬉しいのね……。


 池を横に通り過ぎて、少し盛り上がった坂を越えてチェリーブロッサムの下を通り抜けた。


 ルゥは走るの遅いから、どんどん後ろになっていく。



 見えてきた。



 ゲート。



 あそこを潜れば外。



 外に出て、助けを呼ぶの。



 ガシャン!



 閉じたゲート。



 高い、高い!


 こんなに近くでゲートを見たのは初めて。



 掴んだ手にブロンズの薔薇のレリーフから伸びて巻きついた棘がザクッてして、血がぼたぼたする。



 ガシャン ガシャン ガシャン ガシャン ガシャン ガシャン

   ガシャン ガシャン ガシャン ガシャン ガシャン ガシャン

 ガシャン ガシャン ガシャン ガシャン ガシャン ガシャン

     ガシャン ガシャン ガシャン ガシャン ガシャン ガシャン

   ガシャン ガシャン ガシャン ガシャン ガシャン ガシャン

 ガシャン ガシャン ガシャン ガシャン ガシャン ガシャン




 あいて!


 お願い!!



 「どうした!? お嬢ちゃん!?」



 少し遠くの方からチリンチリンってベルの音がして、自転車に乗ったマンバと同じ黒い肌のでっぷりとしたおじさんが慌ててわたしに駆け寄って棘にささった手を外そうとする。



 「あぅ! あああっ! ともだちっ 燃えちゃ!!」


  

 上手く言えなくて、ルゥみたいにあうあうしちゃう!



 「こんなに酷い怪我をして! 一体何に________!!!???」



 おじさんは急に悲鳴をあげて、わたしから飛退いて地面にペタンてしてずりずり後ろに下がってく。

 

 

 「あああ……なんてことだ……! 神よ! もっ、もうすぐ定年なのに……」


 

 おじさんは、耳になにか四角い物を当てた。



 「ううう」



 ルゥがわたしの足にすりってした。


 おじさんは凄い顔でルゥをじっとみて、耳に当てた四角いのに怒鳴り声をあげている。


 コレで……コレで……助けをよんで、それから、それから……。



 ルゥがわたしを見上げてる。


 心配そうな目。



 棘にささった手が急に痛くなる。


 「ルゥ……ルゥ……」



 ルゥをぎゅーってする……ふふふ……おしっこ臭い。



 「ううう? ぶぶぶぶ?」



 ルゥはいやいやして、わたしの腕からぬけだしてまたスカートに噛み付いて『ふーふー』言ってぐいぐいする。


 「……? ルゥ?」



 引っ張る、お外に?



 おじさんが開けてくれたのかしら?



 ゲートが少し開いている。

 

 「もう、いいのよ? 助けはよべたの……どうしたの?」


 

 それでもルゥは放さない。



 ああ、そうか。



 わたしは一生懸命なルゥの頬を撫でて、引っ張るの止めさせた。





 「いきなさい」




 ルゥがきょとんとする。




 「ホントのお家にかえるの、きっとあのおじさんが連れてってくれるわ」



 ルゥは目を大きく開いて、目の中の黒いところをががくがくさせた。



 「いくの、いう事を聞きなさい」


 「ふぁ!?? あああああ!???」


 


 ルゥはまたわたしのスカートに噛み付いて、引っ張ろうとする。



 ああ、そんな目で見ないで……勘違いしちゃう……!



 ガッ!



 わたしは、スカートを引っ張るルゥを思いっきり蹴り上げた!


 「ぎゃう?!」


 ルゥはひっくり返って、頭を黄色のレンガに頭をぶつけちゃう。

 


 「おっ、お嬢ちゃん! 何するんだ!!?」



 四角い物に怒鳴ってたおじさんが変な声を出しているけど、そんなのかまわないわ。


 ルゥはすぐにわたしのとこに這って来て、またスカートを噛むの。



 「ご主人様のいう事聞けないの? 悪い子!」



 また、ルゥを蹴る。



 ああ……お口がきれちゃったね。


 ルゥはわたしの足にぎゅってして鳴くの……どうして?



 お家に帰れるのよ?



 どうして、そんなに苦しそうなの?



 ルゥは涙をぽろぽろして、あうあうする。


 「放しなさい」


 もう一度蹴って、今度は頭をグリッてふんずける。



 じたばたするけど、やめないわ!


 だって、ルゥはホントのお家に帰らなきゃ……帰さなきゃいけないのよ!


 「あ"あ"あ"あ"あ"!!!」


 「きゃっ!」

  


 ルゥは大声をあげて、わたしの足をおしのけてドンってぶつかって、地面にコロンってしたわたしの上よじよじ登ってうるうるの目でギッてする。



 怒ってる。



 そうよね、わたし、わたしはお前に悪いこと痛いこといっぱいした。



 人間なのに『だるま』にした……けど、けど……! 



 あいしてる。



 それはホントだよ……だから______ぎゅっ。


 「……ルゥ……!?」


 ギッてしてたルゥが、わたしをぎゅーってする。



 耳の所で、泣いちゃってるルゥの鼻がぐじゅぐじゅして苦しそう。


 震えてる。


 こんなに泣いてかわいそぅ……わたしもぎゅってしてあげたい……けど、だめ。



 甘やかしちゃダメ。


 甘えちゃダメなの。



 わたしはルゥを髪をひっぱて、引き離して突き飛ばす!


 どんなにぎゅーってしても、短いおててじゃ簡単にはずれちゃう。


 ころんってしちゃったルゥは、もだもだしてじっとわたしをみてお口をぱくぱくして苦しそうに叫んだ。

 

 「ざじゃ! お"え"ど い"ご! ごどっ" ぞどっ!」


 ゲホゲホって、辛そうに咳をしたルゥはもっと叫ぼうとしたけどもうカサカサの声しか出ない。



 ルゥ?


 いま、今、何て言ったの? 


 「あ」



 ルゥの後ろから茶色の毛布がバサッてかけられて、黒い手が持ち上げる。


 あっと言う間に毛布に包まれたルゥは、もの凄い悲鳴をあげて暴れるけど、どうにも出来なくて連れてかれちゃう。



 ルゥ……。

  ルゥ……。


 いつの間にか、ゲートの向こうにたくさん車。


 ゲートが大きく開いて、赤い車やたくさんの人達が黄色のレンガを走っていく。



 黒いおじさんに抱っこされたルゥが、白い車に乗せられちゃう。



 


 「ルゥはちゃんとお家に帰れる?」


 

  

 ルゥを白い車に乗せた後、凄く怖い顔でわたしに駆け寄ってきた黒いおじさんに聞いたけどなにも答えてくれなかった。

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