Beyond that gate

Beyond that gate ①

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   理不尽に。


         横暴に。



   極限までに。



 肉体を。



   精神を。



        痛めつけ、ボロボロにされて。



 もう死にたいと、心から願う俺を怖いくらいに優しく手当てする不器用な小さな手。



 『あいしてる』




 と、抱きしめる細い腕。



     怖い。

          恐い。

     こわい。



 小さな手が。


 小さな唇が。


 大きくて青い目が。


 金糸のような細い髪が。




       痛みと。



              快楽と。


       恐怖と。


              安らぎと。




 ……この薄暗くて湿気た小さな世界で、俺に全てを与えるのはあの子しかいない。




 縋ってしまう。




 ああ、誰か、誰か、俺は、俺は________まだ『人』だろうか?



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 6がつ1にち



 パパとお庭をあるく。




 パパが、散歩しょうって言う。


 うれしい!


 パパとお散歩なんてひさしぶりね!


 ルゥにも連れて行きたかったけど、きのうあんなに打っちゃったからダメよ……今日はゆっくり寝かせてあげなきゃ!


 だから、今日はパパと二人きりなの!


 ロノバンにサンドウィッチを作ってもらて、葉っぱで緑になったチェリーブロッサムの下で食べる。


 パパったら、お口にツナがついてるの♪


 なんだかオートミールを食べた後のルゥみたいね。



 それから、わたしはパパといっぱいいっぱいお話したの!


 ルゥの事。


 ロノバンが色々教えてくれた事。


 リーンが甘えんぼな事。


 ケリガーが植物に詳しくて力持ちな事。


 メンフィス先生が怖い事。



 ……注射がまだ怖い事。


 スカーレットの事。


 マンバがとってもたのもしい事。


 ……ソウルの事はヒミツだからパパには妖精さんって言った。



 パパは、にこにこしてわたしのお話を聞いてくれる!


 嬉しくて、嬉しくて、日が暮れる頃になってロノバンが『お夕食ですよ』って呼びに来るまでずっとおしゃべりしたの!



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 6がつ2にち



 ルゥがちょっと元気が無い。


 ……でもご飯は食べるかれら大丈夫と思うんだけど……なんだかぼーっとしてる。


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 6がつ3にち



 やっぱり、ルゥの元気がない。



 オートミールも半分残して、わたしがスプーンでお口につめこんでやっと一皿食べれたのよ!


 いつもなら、もっと食べるのに……。



 ロノバンに相談したら、『お嬢様には全てをお教えしました。 お嬢様はルゥを『だるま』にするとお決めになったのですからココから先は主人としてご判断下さい』って言うの。



 ちょっと不安になちゃったけど、分からない事はいつもみたいに教えてくれるとも言っていたから頑張らなきゃ!



 ロノバンが言うには、ルゥは『せいしんてきなショック』と言う状態だから『きぶんてんかん』と言うのがいるって教えてくれた。



 ちょっと難しいけど……そうだ!


 ルゥって、池が好きだっけ?


 うふふ……パパに聞いてみようっと!



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 6がつ4にち



 ルゥとボートにのる!



 ぼんやりしてるルゥにオムツとブーツを履かせて、髪もリボンで結んで、リードで繋いで地下室からだしたげてリードを引っ張ってお庭に出でた。



 久しぶりのお外。



 うつむてたルゥが、少しだけ元気になったきがする。



 「ルゥ、早く、早く! パパにお願いして、ボートを出してもらってるの!」


 

 池のほうで、倉庫からケリガーがボートを引っ張って池にザボンってしてる!



 「パパ! ケリガー!」


 パパがニコニコ手をふって、ケリガーがペコってお辞儀してパパの池には白いボートがぷかぷか~。


 

 「ううう! ふぐっ!?」



 池のところまで着たら、ケリガーがルゥを持上げてボートに乗せてパパがわたしをだっこして乗ってケリガーがぐいってボートを押したらすいーって。



 岸でケリガーが手をふって、パパがオールでこいでボートが進む。



 ルゥったら、びくびくしてきょろきょろして……うふふ。


 「びっくりしなくていいんだよ?」



 ぶるぶるしながら固まっちゃってるルゥの頭をなでたげる。



 「見てルゥ! キラキラしてキレイでしょ~」


 

 んしょって、ルゥを膝に乗せてキラキラの池を見せてあげる……う……ちょと重いけどっ頑張るっ!



 ルゥは、じっと池のキラキラを見てる。


 ……気に入ってくれたかな?


 ボートが池の真ん中まで来たところで、パパがオールをこぐのを止めてじっとわたしとルゥをみてニコニコする。

 

 「楽しいかい? サシャ」

 

 「うん! きっとルゥも喜んでるわ! ありがとうパパ!」



 パパが、『ここでお昼にしようか』って持って来たランチボックスを開いて小さいポットから紅茶を注いでくれた。


 わたしは、膝に乗せてたルゥを傍にお座りさせてパパから紅茶をもらう。



 う~ん……いい匂い~ダージリンね!


 「ルゥも飲んでみる? おいしいから」


 「ぶっ! うぶっ! けふっ、ぐぶっ ゴクッゴクッ」

 


 うふふ。


 ルゥってば、ばたばたしてかわいい。


 「こらこら、もう少しゆっくりあげなさい」


 パパが、紅茶を吐き出しちゃったルゥの事ナプキンでふいたげようとして手を伸ばしたんだけどルゥってばパパにペッて唾を吐いたのよ!



 「こら! ルゥ! めっ!」


 ルゥはぷいってそっぽ向いちゃう……もう!



 「パパ、あのねっ_____」



 ガタンって、ポートが揺れる。



 そしたら、ザボーンって____ええええ!?


 「きゃあああ! ルゥ!!!」


 パパが、パパが、ルゥを投げちゃった!


 池に落っこちたルゥは、手足をバチャバチャしてる!


 大変! 早く助けなきゃ!!


 「パパ! オールをこいで! ルゥが溺れちゃうよ!!」


 「……」



 パパは、黙ってバチャバチャしてるルゥを眺めてる。


 

 「ルゥ! ルゥ!」


 

 わたしは、オールを一本とってルゥに向けてみたけど……ああ、だめ、だってルゥには手が無いんだもん!



 どうしよう! 



 ルゥが、ルゥが……あれ?



 溺れちゃうって、思ったのに良く見たらルゥはもうあんまりバチャバチャしないで水上に浮いてじっとこっちを……パパをギッて睨んでる。


 「ああ、そうだったね……コレは罰にはならなかったか……」


 パパがぼそりと言う。


 あ。


 そうか、ルゥって……うん、間違いない!


 ルゥって、泳げるんだ!



 ルゥは、ぷいってしてそのままゆっくり岸の方へ向って泳いでいちゃった。


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 6がつ5にち



 ルゥの髪をといてあげる。


 顔も拭いて、耳もコットンできれいにしてあげる。


 おててと足のぷにぷににもクリームをぬって、ミトンをはかせてあげる。


 このクリームは、お肌がすべすべになるってリーンがくれたの。


 マットレスの上に毛布を敷いて、ランプの明かりで絵本をよんだげてから寝ちゃうまで抱きしめてあげる。


 ルゥってば、うとうとしてぐぅぐぅいびきをかいて唇がピクピクしてる……うふふ。


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 6がつ6にち



 今日はぽかぽかお日様。


 ルゥに、ごはんとトイレをさせてから二階のテラスまでいって二人でひなたぼっこ。


 マンバも一緒にって言ったけど、お仕事だからダメだって……ちょっとさみしい。


 あんまり温かくていい気持ちだったから、いつの間にか寝ちゃったみたい。


 気がついたら、わたしずっとルゥに抱きついてたみたいでルゥが困った顔してた。




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 6がつ7にち



 ルゥはパパが大嫌い。



 パパを見るだけで呻ったり、酷いときは唾をはくの!


 そんな事したら、パパに酷い目に遭うのに!


 でもね、ルゥね、最近はわたしには全然そんな事ないの。


 気がついたらじっとわたしを見てて、『ぁ ぁ ぁ』って何か言おうとするんだけどやっぱり喉が潰れてるからよく分からない。


 でも、前より抱っこさせてくれるしお尻を拭くもの恥ずかしそうだけど嫌がらなくなったわ。



 うん、とってもいい子。


 でも、まだキスは恥ずかしいみたい……かわいい。



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 6がつ7にち



 ルゥをお風呂にいれる。


 ルゥはバスタブが大好き!


 体を良く洗った後、お湯をためてるバスタブをじっとみてそわそわしてる。


 喜ぶと思って、リーンからもらったラベンダーのモコモコが出るバスジェルを入れたら何だか眉をしわってしちゃった。


 ……嫌だったみたい……。


 でもね、中に入っちゃたらうっとりしてた。



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 6がつ8にち



 今日のルゥは甘えんぼさん。


 すりってして、じっと見上げる。


 どうしたのかな?


 ぎゅってしてあげたら、ぎゅってしてきたの。


 なんで泣いてるの?


 泣かないで……ごめんなさい……。



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 6がつ9にち



 リーンのお部屋から泣き声が聞こえたから、心配になってそっとドアの隙間から覗いてみたの。


 ……マンバが、ロープで手足を縛られて床にころんってしてるリーンの上にまたがってほっぺを叩いてる……。


 ………リーン、とってもうれしそうね。


 マンバもなんか楽しそう、うん、そっとしておこう。


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 6がつ10にち


 パパがお仕事でバングラディシュに行く事になっちゃった。



 パパは何度も『寂しい思いをさせてごめんね』って、わたしを抱きしめてキスをしてくれる。


 今度は少し長お仕事になるってパパは言う。



 大丈夫よパパ。



 わたし、もう、ちっとも寂しくないの。


 ルゥもマンバもロノバンもリーンもいるしケリガーだっていてくれる。


 だから、『いってらっしゃい』ってにっこり笑って手をふるの!




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 6がつ11にち


 ルゥのお世話をしてたら、ロノバンが『お昼ですよ』って呼びに来たからリビングにいく。


 この匂い……今日はサラダにレーズンパンのトーストにコーンポタージュのスープね!


 とってもおいしそう!


 食事のトレイの乗ったワゴンを押してきたロノバンが、お髭をふそりとしてどうぞってしてくれたんだけどトレイをもった手に包帯が巻いてあって少し血が滲んでた。

 

 「ロノバン、手、どうしたの?」


 「………少し作業に手間取りまして……大した事はございません」


 

 ロノバンは、お髭をふそってしてにっこりするけど……なんだろう?



 今日のロノバンなんだか変よ?


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 6がつ12にち




 むに~。


   むに~。 



 「………ふひゅ ふぁぁああ? う"~あああ?」



 ルゥのほっぺ、つまんでむにむにして遊んでたらお口から涎が垂れてべちゃべちゃになっちゃた。


 ルゥったら、眉をくしゃってして『う"~う"~』って困った顔してる。



 かわいい。



 ルゥ……わたしの『だるま』。



 パパは酷い人。



 ルゥの事、手も足も歯も声もみーんなもいで『だるま』にした。


 ……でもね、パパなんかよりわたしのほうがもっと悪い子。



 だって、ルゥを自由にしてあげないんだから。  



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 6がつ13にち



 今日は、ロノバンがケリガーとリーンと食材の買出しにいくって街にいちゃったの。


 だから、お屋敷にいるのはわたしとルゥとマンバだけだから________。



 「ねぇ! ルゥ、マンバ、かくれんぼしようよ!」 



 そういったら、ルゥとマンバがきょとんとしてわたしをみた。


 うふふ、二人ともおんなじ顔してる。


 「………かくれんぼでございますか? わたくしめとルゥ様と?」


 「そうよ? 他にだれがいるの?」



 マンバは、『あの……えっと』って変な顔をしてルゥとわたしをちらちらみてルゥも溜め息をついて頭をふりふりした。



 「だって、今ならみんないないしお外にはでないわ! お屋敷の中だけ! ねっ? いいでしょ?」



 おねがいしたらマンバは『わかりました』って言ってくれた!


 あとは……。


 「ルゥもいいでしょ? かくれんぼ、楽しいよ!」



 一生懸命おねがいしたら、ルゥも『しょうがないな……』って顔してこくんてしてくれた!



 「では、まいります! 1 2 3 4…………」


 マンバがリビングの柱に手をついて、カウントする。



 「いこ、ルゥ」


 

 最初にわたしたちを探すのはマンバ。



 ルゥとわたしは足音を立てないようにそーと、そーと、リビングを出た。

 

 「いい、ルゥ! マンバが100数える間に隠れるのよ! あと、お外はダメだからね!」


 ルゥは、こくんてしてぽすぽす廊下を歩いてく。


 今日のルゥは、足と手にミトンを二重に履かせただけだけだけどお屋敷の中で遊ぶんだから多分ぷにぷにの所も破けたりなんてしないわ!


 ルゥが、おしりをふりふりしながら廊下の角を曲がってちゃった。




 ……さぁ、わたしも早く隠れなきゃ!







 「お嬢様! 見つけましたよ!」



 パパの書斎のカーテンをまくってわたしを見つけたマンバが、白い歯を見せて嬉しそうに言う。


 「あーあーみつかっちゃたぁ~」



 もう! 


 マンバってば、こんなに早く見つけるなんて。



 「さっ、今度はルゥ様を探しましょう!」



 マンバはわたしの手を引いて、ニコニコしてすごくはしゃいでる。



 うふふ。


 マンバね、このところいつも忙しそうであまり笑ってくれなかったから喜んでくれて嬉しい!



 それから、わたしとマンバは二人でルゥを探したんだけど……。


 「みつかった?」


 「いいえ……申し訳ございません」

 

 

 どうしよう!


 もうすっかり暗くなっちゃったのに、ルゥが、ルゥが、どこにもいないの!



 「どうしよう……ルゥ、ルゥ……」


 「お嬢様、わたくしめはあちらを探します!」



 マンバがリネンのほうに走ってく……どうしようもう全部探したのどこにもいない……もしかして……!



 わたしは、エントランスのドアをみる……閉まってるわ……ルゥは一人じゃドアなんて開けられないもん……大丈夫よ……。


 それに、お外はダメだって約束したもの!


 『うん』って、言ったもの!



 ……そんな事無いもん! 




 わたしは、もう一度お屋敷中のお部屋を見て回る!


 リビング、リネン、キッチン、リーンのお部屋、お客様用のお部屋、上の階のパパの書斎、本の部屋、スカーレットの為に使ってた白いお部屋、わたしのお部屋。


 いっぱい走って、いっぱい探したけど見つからなくて……!



 「はぁ……はぁ……グスッ、いない、いないよぉ……どうして?」



 冬のときの事思い出して何だか怖くなる。


 ルゥはあの時、逃げようとした。


 そうよね……ルゥは来たくてわたしの所に来たんじゃないし、なりたくて『だるま』になった訳じゃないもの……。


 「後は……ココだけだけ……」



 わたしはルゥの地下室のドアの所にいく……あれ?



 「グスッ……あ、あいてる?」



 あ。


 わたし、ルゥを地下室から出してドアをちゃんと閉めなかった?


 もしかしたら、ルゥ、ココに!?


 「ルゥ!」



 わたしは地下室に飛び込んで、階段を駆け下りる!



 「ルゥ! お願い出てきて! 降参する! もう、かくれんぼお終いにするから! お願いよ!」



 電気が遅れてついてライトで明るくなったんだけど、見えたのは、白いタイルの床、バスタブ、ルゥのお世話道具の入ってる小さいクローゼットに奥のほうにルゥのマットレスとトイレ……いつもと変わらない地下室。



 けれど、ルゥの姿は見えないの。



 そんな。


 そんな!



 バスタブの下やマットレスのところもさがしたけど……いない……いないの!



 どうして……?


 ホントにお外に?


 逃げちゃったの?


 追いかけなきゃ……捕まえて……それから?



 いつもみたいに罰を?



 鞭で打って、ルゥはそれで納得するの?



 ルゥは、わたしが嫌いなのよ?



 毎日ちゃんとご飯をあげても、おしりを拭いても、抱きしめても、キスしてもダメ……どんなに頑張ってもルゥはわたしのモノになんて……!



 もう、どうしていいか分からなくて立ってられなくて冷たいタイルの床にペタンってなる。



 目の前がうるうるになって、床も見えなくて、苦しくて、息が出来ないよ……!


 

 「ルゥ……」



 どうして分からないの?



 もう、お前にはわたししかいないのに……!




 

 「ルゥ……どこ? 出てきてよぉ……」




 ぽすん。



 背中に何かあたる。


 振り向いたらルゥが、じっとわたしを見てた。

 


 「ルゥ!」



 わたしは、ルゥにぎゅーってする!



 「もう! どこ行ってたの! わたし、また逃げちゃ たって おもっ、グジュ」


 「ぐぐぐっ……」



 ルゥは苦しそうにしてるけど、いつもみたいに暴れたりなんかしないでぎゅーってされてる。



 「ルゥ、どこに隠れてたの? 心配……あれ? なんか臭い……」



 ぎゅーってしてたの離してあげて良く見たら、ルゥってば何だかすごく汚れててとってもオシッコ臭いの!


 「なぁに? ミトンもこんなに汚して……?」


 

 ルゥは、ちょっとばつの悪いような顔をしてわたしから目をそらすの!


 「ルゥ! こっち向いて! 一体どこにいたの? ちゃんと答えなさい!」


 「ぅぶぶぶっ!」


 

 ほっぺを手で挟んで、ぷいってしてたのこっちに向かせる。


 ふふ……ルゥぶにってしてる可愛い。


 「お嬢様! ルゥ様は_____」



 階段をぎしぎしして駆け下りてきたマンバが、ルゥを見てほっとした顔をした。


 ほっとしたマンバが、ルゥもみつけたしもうすっかり暗くなちゃったからそろそろお夕食にしようって。


 わたしは、ロノバンが作り置きしててくれたお料理をマンバに温めてもらっているあいだ汚れたルゥをお風呂に入れてあげる事にした。


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 6がつ15にち



 ルゥがおしっこ臭い。


 どうしてだろう?


 昨日もきれいにしたのに、もう体中おしっこの匂いがするの!


 うーん……。


 ちゃんとおしっこはトイレにしてるのに、なんでこんなに臭いんだろう?

 わたしは、ルゥにお湯をかけてボディソープをかけておまたをゴシゴシゴシゴシゴシゴシ。

 

 「う? うぎゃっ!?」


 「動かないの! ……髪もおしっこ臭い!? なんでよ! もう!」

 

  

 じたばたするルゥをめってして、頭もゴシゴシ。


 泡が目に入ちゃってう~う~してるけどダメよ、もっとちゃんとゴシゴシしなきゃ!



 「ふぎゃっ! ぎゃうっ!」


 

 よ~くゴシゴシしてお湯をかけて、あわあわの顔もキレイにしてバスタブにいれたげる。



 「もう! ルゥったら……あれ?」


 

 ルゥのおててのぷにぷに……傷?


 これ、どうしたの? って、いったらルゥはザボンってお湯にもぐちゃった。



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 6がつ16にち



 みんなの様子がへん……何が変かていうとうまくいえないけど。

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 6がつ17にち


 お屋敷はとても静か。


 ロノバンもリーンもいつも通りだけど何だか静か。


 ケリガーがまだ戻ってこないの。


 聞いても誰も教えてくれない……どうして?

 

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 Beyond that gate



 6がつ18にち


 ルゥとおさんぽ。



 今日は、ルゥとお庭をおさんぽする。


 だって、みんなが変なんだもん、息苦しいの。


 ブーツもリードもちゃんとつけて、少し気分をかえて髪も編んだの!


 ルゥが歩くたび、リボンをつけた三つあみがゆらゆらしてるの可愛いでしょ?


 ぽかぽかのお庭をルゥとゆっくり歩く。


 マンバはお仕事だから二人きりね!


 「よーし、お庭をぐるーって回って、ケリガーの温室までいこう!」


 

 ルゥはこくんてする。


 最近ルゥはとっても素直だわ……いい子ね。


 ルゥの髪をそっと撫でてあげる。


 「ルゥ、ブーツで歩くの上手くなったね」



 ルゥは『ぅぅぅ』って、ぷいってした。



 もう!



 黄色のレンガの上をカポカポしならがルゥとわたしはお庭をぐるーってして、ケリガーの温室にいく。



 ココに来たのは久しぶり。


 この前、スカーレットと一緒にきていらいね……。


 温室のドアを見てルゥがきょとんってしてる。



 「うん、ここにケリガーいないかなって……」



 ルゥが、『何で?』って顔して『ううう?』っていう。


 

 「ケリガーねロノバンたちとお買い物にいったきり帰ってきてないの……だから、わたし、心配なの」


 「……」



 わたしは、重いドアを力いっぱい押してあける!


 ふぅ、一人だとこんなに重いのね!


 

 「う、なにこの臭い?」



 温室の中はむわっとしてて、とても臭い……なんの臭いだろう? 


 ウンチやおしっこなんかじゃない……まるで何かが腐ってるみたい?


 チャリッ。


 「ルゥ?」 



 中に入ろうとしたけど、ルゥがドアの所から動かなくてリードをどんなにひっぱてもいやいやするの! 

 

 「もう! じゃ、ルゥはそこで待てて!」



 わたしはリードを床において、温室の中に入る。



 むわっとしてる温室。


 あつすぎるのかな?


 あんなにキレイだったお花もしおれてるの。


 それに、すごい臭いウエッてなる……。



 「う"、臭いよ……」


 でも、ケリガーを探さないと。


 わたしは奥に奥に歩く……あれ?


 一番奥のスカーレットが壊しちゃったガラスのハウスの所……どうしてあんなに土がお山みたいになってるのかな?


 「あれ?」


 天井までありそうな大きなお山……そこから何か……土を少しはらってみたっ、あ、これ……て_____。


 「やっ……! きゃああああああああああああ!!」



 ずるって、ぼたって、ぐちゃって、落ちる!



 落ちたの!



 「やぁ!! ケリガっ 」



 土からころげたもじゃもじゃの腕にいっぱい蛆がついてるっ!


 ケリガー……ケリガー……なんでっ!?


 「うっ! うっ!」


 地面にペタンてしちゃったわたしのスカートをルゥが噛み付いてぐいぐいひっぱる!


 「る"っる"ぅ っ あ どうしよう はっ あああ……」

 

 ルゥは一生懸命わたしのスカートを引っ張って、『立て!』って、言ってる!

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