a daruma party④
そして、今日。
「あたし 乗馬……乗馬がしたい……」
スカーレットは言った。
心臓がドキンってする。
わたしは、いいわよってって言って手錠も足枷もはずしてあげた。
スカーレットは、ドアをあける。
真っ暗。
スカーレットは脅えて、わたしにぎゅーってする。
ふふふ、スカーレットったら。
ロノバンに、スカーレットがいつも自分のお屋敷でしている事がしたいって言ったらソレが合図だっていわれてた。
こうやって、スカーレットの世界を小さくしてわたしの事が好きになるように何度も何度も言わせて優しくしたら『嫌い』を『好き』に書き換える事が出来るって!
ソレにしても、スカーレットったらこのお部屋の電気がもうずーっと点けっ放しで時計もないのに全然気が付かないんだもん!
だから、今が真夜中なのも分からなかったんだ。
「大丈夫、安心して? わたしが一緒にいてあげる」
そういったら、スカーレットは『サシャ、サシャ』って。
スカーレットとの出会いは最悪だったけど、やっとお友達になれてうれしい!
けれど、なんでだろう?
ルゥならきっと、こんな事でわたしに懐くなんてしない。
ルゥならきっと、こんな事してもあの黒い目でわたしをギッってにらんで呻るはず……。
お友達が出来て嬉しいのに、なんだか変な気持ち……こういうのなんていうんだっけ?
ええと……そう、たしか。
『ものたりない』って、いうんだ。
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ロノバンの手紙
旦那様。
香港ではいかがお過ごしでしょうか?
旦那様の事ですからビジネスにはなんら問題は無いと存じますが、この度はパーティーでのゲスト様がたの処理に加えての過密なスケジュール。
さほど丈夫ではない旦那様の体調を考慮し、差し出がましくもわたくしの独断でメンフィス女医を主治医として同行させていただく運びとなりご気分を害されたと聞き及びます。
誠に申し訳ございませんでした。
しかし、旦那様のお体はご自分一人の物ではありません。
このエステバン家、ひいてはこの国の為……いいえ一人娘のお嬢様の為お体をご自愛いただきますようにお願いいたします。
それでは、お嬢様についてのご報告に移らせて頂きます。
お嬢様に置かれましては、決闘と言うアクシデントを乗り越えスカーレット様というご友人を得られ一回りも二回りもご成長あそばし一歩また一歩とエステバン家の跡取りとしての風格もそなわりつつあります。
この度の決闘におきましても、『だるま』との信頼関係は目を見張るものがございました。
通常飼育される『だるま』は、いかに人格を否定し脳を犯したとしてもあのような働きはいたしません。
コレはお嬢様の躾の……いえ、天性の『調教』の才のなせる業と言っても過言ではないでしょう。
そして、更にはスカーレット様にも素直になっていただいた様子……。
わたくしからの少ない情報の中、それらをご自分なりに調べ実際にそれを施す間も片時も目を逸らさず真摯に取り組む姿は正に若かりし頃の旦那様を彷彿とさせこのロノバン目頭が熱くなりました。
日々成長あそばすお嬢様……やはりそろそろ専属の使用人が必要であることは明白でございますが、わたくしはあくまでシェフでございます。
旦那様のたっての頼みといえど、こればかりはお受けできません。
かといって、お嬢様の純潔を護る為にもあのペドフィリアなど論外でございます!
そこででございますが、新しく使用人を雇い入れたく思いその者の履歴書を同封いたいしましたのでどうぞ目を通して頂きご判断を仰ぎたいとぞんじます。
旦那様の許可が頂ければ、すぐにもその者にお嬢様専属の使用人として研修を始めさせていきたいと思いますのでどうかご決断はお早めに。
その他、報告書の添付あり。
※履歴書①
※スカーレット様に施された嬢様の調教の様子についての報告①~③
※パーティ会場における決闘の様子についての報告①~⑤
※『だるま』の様子①
※ソウル・バトゥスキーについての報告①~⑮
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3がつ29にち
みんなでおさんぽ
きょうは、良い天気!
こういう日は、お庭をおさんぽするのが一番ね!
わたしは、スカーレットにピンクのコートにうさぎさんの耳あて白いリボンのついた手袋に白いブーツをはかせてお部屋からてを引っ張る。
スカーレットは、悲鳴をあげたけどダメよ!
お外に出る練習をしなくちゃ!
「だめよスカーレット! わたしが一緒なのにいう事きけないの?」
めっ!ってしたら、スカーレットは『きゃう!!』って言って蹲ってぷるぷるする。
おめめも泣いちゃって真っ赤だし、なんだか本当にうさぎさんみたい。
「さ、いきましょうスカーレット! ルゥだってもう準備できてるんだから!」
ルゥは今、玄関のポーチのところで毛布にぐるぐる巻きにされてわたしの黄色いそりにのせてある。
もうテンテキも取れてごはんも食べられるようになったけど、まだ包帯は取れてないからまだ動けないんだけどルゥは決闘に勝ってちゃんとわたしのところに帰ってきてくれた!
だからご褒美をあげることにしたの!
おさんぽ。
怪我をしたルゥを地下室に入れるのは可哀想だったから、わたしのベットで寝かせていたけんだけどそのあいだね起きてる時はずっと窓の外を見ていたもの。
だから、ちょとだけ。
スカーレットもお外にでる練習をしないとだし、みんなでお庭を歩いたらきっと楽しいとおもうの!
わたしは、スカーレットとてをつないでルゥののったソリを引っ張る。
ふぅ、ふう、ちょっと大変。
でも、お友達とルゥと一緒にお庭を歩けるなんて!
わたしってきっと、とっても幸せ者なんだわ!
ぎゅっ。
スカーレットったら、わたしの手をぎゅってして青いかおで『サシャ、こわいよどこいくの』って震えてるの……かわいい。
うふふ、そんなに脅えて可哀想だどついてからのお楽しみなんだから!
「さっ、もう少しよ! がんばって! ルゥももうちょっとだからね!」
つもった雪で歩きにくいけど、わたしはスカーレットとルゥをつれて一生懸命あるく!
パパが鯉を飼っている池をよこぎって、お屋敷の裏にまわて……。
はぁ、ふう……つかれちゃう。
ううん!
ダメよサシャ!
しっかりするの!
二人がこっちをみてるし、おさんぽするって自分で決めたんだから!
もう少し……ほら、見えてきた。
「サシャ、あれなに?」
「うん、ここね温室っていってケリガーが……ケリガーってうちの庭師なんだけど珍しいお花や温かいところにしか生えない植物なんかを育ててる場所なの」
「温室!? おおきい……うちにあるものなんかコレに比べたらただの小屋だわ……」
スカーレットは、温室を見上げてため息をつく。
ふぅん。
そんなに大きいんだ……わたし温室ってコレしか見たこと無いから大きいなんて知らなかったなぁ。
わたしが、ガチャンてドアをあけると、スカーレットがビクッてする。
「おいでスカーレット、大丈夫……怖くないわとても暖かいから」
スカーレットは、コクンてして中に入る。
良い子ねって髪をなでから、ルゥの乗ったそりを一緒に引っ張って中に入れた。
ルゥは、わたしたちを少しだけ眉をよせて見てるの……何でそんな目で……あっ!
そうだった!
ルゥは、わたしとスカーレットが友達になったの知らないんだ!
「ルゥ」
わたしは、少し雪をかぶっちゃったルゥの髪をタオルで拭いてあげる。
「わたし達ね、お友達になったの。 それに、スカーレットは今とてもいい子になったからもうあんな事はしないわ……これもルゥが勝ってくれたおかげよ?」
『ありがとう、大好き』って、ぎゅってしてほっぺにキスしたらルゥはやっぱりいつもみたいに変な顔をしてぷいってするの。
ルゥって、キスが嫌いじゃないと思うのになんで嫌がるふりをするんだろう?
照れやさんなのかな?
ふぅ。
温室の中はとても暖かいから、中に入っただけですぐに汗が出てきちゃう。
わたしは、ドアの横にあるケリガーの作業着をいれておく木でできたクローゼットのハンガーに自分のコートをぬいでかける。
「さっ、サシャ……」
スカーレットがもじもじしてわたしをみてる……あっそか。
「スカーレットもコートを脱いでいいわよ、あついでしょ?」
そう言ってあげたらやっとスカーレットはコートを脱いで、ハンガーにかけた。
汗びっしょりね。
スカーレットは、わたしが言わないとなにも出来なくなっちゃたんだから気おつけないなかったのに……後で風邪を引かないようにしてあげなくちゃ。
「さ、ルゥもあついでしょ?」
わたしは、毛布でぐるぐる巻きになって少し汗をかいているルゥから毛布とってあげる。
毛布をとると、ルゥは肩に包帯をまいていて痛そう。
けど、ソリの上でもぞもぞしてるルゥのおむつのおしりがふりふりするの!
やっぱり、おむつカバーをピンクにして良かった!
とってもかわいい!
「ぐっ……!」
ルゥは少し顔を赤くして、ぷいってする。
「ふふふ、あれ? どうしたの? もう、かわいいんだから」
ルゥったら、もう何回もおむつをかえてあげてるのになにがそんなに恥ずかしいんだ_____あっそうか、スカーレットに見られたのが恥ずかしいのかな?
とっても似合ってるんだから気にしなくていいのに!
それに、顔を隠してもおしりはふりふりなのにね?
温室の床は、レンガでできてるからソリは引けない。
だからわたしは、ルゥにプランターを運ぶカートに乗るように言ってそれをスカーレットと押しながら歩く。
スカーレットって、お花や木にとても詳しいの!
歩きながら植えられてるものの名前を全部いうのよ!
びっくりしちゃった!
これならきっと、アレをみせたらとても喜ぶわね。
……ほら、見えてきた!
「みて、スカーレット! ルゥ! とてもきれいでしょ?」
温室の中にある小さなガラスのお部屋、その中にあるたくさんの紫色のバラ。
「あ、あれって……」
「そうよ、あのバラはねメンフィス先生が_______え?」
ガン!
急に走ったスカーレットが、ガラス壁にに体当たりする!
「どうして! どうして! なんでサシャに!! 何で何で何で何で!? レットに下さるっていってたのに!!」
ガンガンガラスを叩いて叫んだスカーレットは、すぐそばにあった小さい植木を持上げる!
「ダメ! やめ________」
止めようとしたけど遅くって、ガシャァァァンって音がしてガラスが割れてそれだけじゃなくてビキビキって割れたところからいっぱいいっぱいヒビが入る!
大変!! ガラスのお部屋が壊れちゃう!
「逃げて! スカーレッ!?」
スカーレットの所に行こうとしたのに、いきなり何かが足にぶつかってカクンってなってわたしは後ろに転んじゃった!
「いた~……」
ドン! ガラガラガラ……。
え? え? なに? 動いてる!?
これ、カート!?
わたしはびっくりして、起き上がる。
あ。
見えたのは、ふりふりしてるピンクのおむつカバー……が一生懸命はしってる?
凄い音。
キラキラのガラス。
ルゥは、スカーレットに飛びついた。
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3がつ30にち
罰とごほうび
「ごめんなさい! ごめんなさい! ゆるじでぇ!! やぁぁぁぁぁぁぁあああああ!!!」
スカーレットが叫んでる。
ドアの向こう、まっくらなお部屋で鎖に繋がれて。
でも、スカーレットが悪いのよ?
ちゃんとわたしの話をきかないから!
あのバラのお部屋は、メンフィス先生がここでお留守番しないといけないスカーレットの為にパパにお願いしておいた物だったのにむちゃくちゃにして!
ほんと悪い子!
『お部屋から出すのが早すぎたのです』って、ロノバンが言ってた……もっとちゃんとスカーレットの様子を見るべきだった……もっと気おつけていればこんなふうに罰で苦しめる事もなかったのに……。
スカーレットは、もう一晩中叫んでるけどだめよ。
もっと反省しなきゃ。
わたしは、スカーレットの部屋の前をはなれて自分の部屋に行く。
ドアをあけると、わたしを見たルゥがベッドの上でもそってしてぷいってする。
あの時。
ルゥは、わたしをカートの中に転ばせてスカーレットにだきついて壊れるお部屋のガラスからスカーレットを助けたの。
ルゥは、少し背中を切って肩の傷からも血が滲んじゃったけどスカーレットには傷一つ無かった。
わたしは、ベッドに上がってルゥをつぶさないようにマットに膝立ちをする。
「ひゅっ!? ぶえっ!?」
ほっぺを手で挟んでうごけなくして、ルゥのお口の中をいっぱいなめる……にげる舌を追いかけて歯のない歯茎をなぞって。
ルゥがぐったりするまでつづける!
「けほっ……ルゥ、今度から良い事をしたらルゥが一番好きなことしてあげる……キスしてあげる」
「ぎっ……ぐぅうぅぅ!」
「そんな真っ赤な顔で睨んでもダメよ、好きでしょ…キス」
キスをしているときのルゥって、とろんとしてるもの。
目をうるうるさせて真っ赤な顔をしたルゥは、またぷいって壁をむく。
「ルゥ、話はおわってないわ」
壁を向いたルゥの口に親指をつっ込んで、ほっぺをつかんでぐいってこっちを向かせる。
ルゥは、少し驚いてわたしをぽかんと見あげて眉をよせた。
……そう。
……やっぱりルゥ……わからないんだ。
がりっ!
「ひぎっ!? ぐっ!?」
わたしは、ルゥの胸に強く噛み付く!
やさしいルゥ。
わたしをもう何度も助けてくれたルゥ。
嫌な事でも……もっと暴れることだってできるのに最後はちゃんと我慢するルゥ。
わたしの友達を命がけで助けてくれたルゥ。
ルゥはやさしい。
きっと、ルゥにといってわたしもスカーレットも『同じ』なんだわ……。
それは、良い事のはずなのにスカーレットが無事でよかったはずなのに!
「ろうひてよ……? ろうひて? るぅは わらひのれしょ!」
どうしてだろう?
許せないの!
ルゥがわたし以外の事で怪我するなんて!
それに、なんでスカーレットに抱きつくの!!
ばか!
ルゥのばか!!
いっぱいいっぱい、体中に血が滲むくらいルゥに噛み付く!
「ぎゅっ!! きゅひゅ!?」
のどのところのぽこってした所を噛んだら、ルゥがへんな声を出す。
あ。
気が付いたら、ルゥ……わたしの噛み付いたあとでいっぱい。
ああ……ルゥは怪我してるのに……。
「わたし わたしも……悪い子だ」
スカーレットの事なんて言えない……なのにどうして?
なんでそんな目でわたしをみるの?
いつもみたいにギッて睨んで呻ってよ……。
どうして?
どうしてそんなに、やさしい目をしているの?
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3がつ31にち
ねむたいひ
みじかいおててがぎゅってしてくれる。
ぽかぽかであったか。
めをあけたくない。
きっとおむつはびちゃびちゃかな?
けど、もうすこしだけ……。
きっと、もうすぐロノバンがきておこられちゃうけどもうちょっと。
こんこん。
ああ、もうおきなくちゃ。
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