St. Valentine's day②

 2がつ3にち



 ルゥがしもやけた。



 「ふううう……ぐううう!」


 「あ! ダメよルゥ! そんなに擦っちゃ! 掻いちゃだめってロノバンが言ってたじゃない!」


 包帯でぐるぐる巻きにされてミイラみたいになったルゥが、地下室のゆかに背中をズリズリする。


 あのあと、ロノバンにてつだってもらってルゥを地下室でお風呂にいれた。


 ロノバンが、『全身が凍傷になりかけておりますので、まずは水でマッサージをして少しずつ暖めていくのです』ていうからわたしも頑張ってルゥをマッサージしたの!


 言うとおりにしたら、ルゥは元気になったけど体中まっかになっちゃった。


 これは『しもやけ』って言って、寒いところにずっといると皮膚がまっかになってあったかくなるととってもかゆくなる……わたしの手みたに……。


 わたしの手も、ルゥとおなじに包帯でぐるぐるになってるの。


 「ふっ! うう!!」


 「だめよ! ダメ!」


 包帯から血がにじむくらいズリズリするルゥを捕まえたら、手足をばたばたさせたけどそんなに暴れないの……掻いちゃダメなのはわかるみたいね。


 ルゥが、わたしをみあげてる。


 うん、かいゆいよね……わたしも手がものすごくかゆいもの。


 ルゥは、体全部だからもっともっとかゆいのね……。


 「ごめんね、ごめんね……」



 わたしは、包帯でぐるるぐる手でぎゅってしから首のところを少しだけこすってあげるとルゥは『もっと!』って目でこっちをみあげる。


 「もうだめ……もう少ししたらまたお薬をぬってあげるから……ね?」


 そういったら、なんだかルゥはしゅんとした。


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 2がつ4にち


 かゆいかゆいのとんでけ!


 

 眠れない!


 手がかゆくて眠れない!


 「う~ん……」


 この包帯をとって、手を掻きたい!


 でもだめ!


 だめだもん! 


 ルゥだって、きっとがまんしてる!

 だからわたしもがまんしなきゃ……って、でも!


 「ダメ! 眠れない!」


 わたしはベッドから起き上がって、キノコのベッドライトをつけて手の包帯を外そうとしたけど両手がぐるぐるだもん……外せない!


 でも、痒い痒い痒いの!!!


 ガブッ!


 ぐるぐるの包帯の、むすんだところに噛み付いてみる!


  ガジガシ、ブチブチ……!


 「お嬢様、何をしておいでですか?」


 「ふじゅ!?」


 後ろから声がして、振り向くといつのまにかいたロノバンがあきれたように髭をふそっとしてわたしをみてた。


 「だって~」


 「『だって~』じゃありません! しもやけは掻いてはならないとあれほど申して参りましたのに! 堪え性のない……ルゥのほうが余程耐えておりますよ?」



 ロノバンにぴしゃりと言われて、わたしはしゅんとする。


 ロノバンの言うとおりだわ。


 わたしは『ごしゅじんさま』なのに……この手だってルゥのしもやけに比べたらもう直りかけているってロノバンが言ってたのに掻こうとするなんて!


 「……分かっていただければよろしいんです……」


 しゅんとしたわたしの手の包帯をロノバンが外して、お薬をぬって新しいの包帯と取り替えながらやさしく言う。


 「さっ、もうお休み下さい」


 包帯を巻き終えるとロノバンはわたしをベッドに入れて、毛布をかけてくれた。


 「ねぇ、ロノバン」


 「はい、お嬢様」


 ベッドライトを消そうとしたロノバンが返事をする。


 「ルゥは、あとどのくらいでよくなるかしら?」

 「さぁ……ルゥのしもやけはかなり酷いですからねぇ」


 ロノバンが少し困ったように髭をふそっとする。


 「そう……」

 「では、お休みなさいませお嬢様」


 わたしが『おやすみなさい』というと、ベッドライトが消されてお部屋がまっくらになる。


 パタンとドアのしまる音がして、ロノバンの足音が遠くにいってしまったのがわかった。


 「ルゥ……」


 わたしは、地下室でかゆみに耐えてるルゥをおもいうかべる。


 体中がまっかになってぱんぱんにはれて、赤いあざみたいのがいっぱいできてしまったルゥ。


 昨日もお風呂でマッサージしてお薬ぬったけどまだ良くならないみたいね……。


 かわいそう。


 わたしの……わたしのせいでっ!


 泣ちゃだめっ!


 泣いてもルゥはよくならないもの!


 ロノバンもいってた、泣きわめいてもどうにもならないって!


 手を動かしなさいって……それってきっと『考えろ』ってことなんだ!


 そうよ!


 あした、ケリガーやリーンにもしもやけの治し方をきいてみよう!


 ロノバンにももう一度!


 もしかしたら、お薬をぬる以外にも早くルゥをなおしてあげられる方法があるかもしれない!



 待っててねルゥ!



 わたしは、毛布なかにもぐってぎゅっと目をつぶった。


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 2がつ5にち



 ルゥのちをぬく!



 「ふっ!? ふぐぅぅぅぅぅぅぅ!?」



 ひきつったかおしたルゥが、壁にはりついてうなり声をあげる。



 「ルゥ! だいじょうぶよ! このほうが早くよくなるの!」


 「がぁぁぁぁぁぁぁ!!!」



 マットレスを縫うのにつかう長い針をかまえて近づいてくるわたしを見て、すっかりおびえ……おこったルゥは大声をあげて恐い顔でぎっとにらんできた。



 もう! そんなかおしないでよ!



 これはちゃ~んと、ケリガーに教えてもらった方法なんだから!



 今朝は、リーンとロノバンが食材の買出しに町に行っちゃってもういなかったからお庭でチューリップを植えていたケリガーにしもやけの治し方を聞いたの。


 そしたら、ケリガーが 『しもやけを一発でよくするにゃ血ぃぬくんが一番でごぜぇますよお嬢さん! 庭師ってのはよくしもやけになりますんで』って、言って自分のしもやけに針をさして血をぬくのを見せてくれた。



 それで、ルゥの血も抜いてあげようと思ってリーンのソーイングセットから針を借りようとしたんだけどなんだか太い針しかなくて……その中でも一番細いのを借りたの!


 で、習ったとおりにルゥの傷に使ってた消毒液で針を良くふいて包帯を外したルゥに刺してみたんだけど…。


 「がぁ! がぁぁぁ!!! ぐぅぅぅ!!!」



 ルゥったら、あんな感じで逃げ回っちゃってもうずっと吠えてるの!



 「もう!」



 わたしが近づくと、ルゥは大慌てで逃げようとしたから『えい!』って、ルゥの背中にとびついたの!



 「ふっ!? ふぅぅぅぅ!???」



 背中に乗ったわたしにルゥは、びっくりしていやいやして振り落とそうとするけどもう逃がさないんだから!


 あ。


 飛び乗ったルゥの背中……赤くてパンパンにはれて皮がむけてる。


 「あつい……これ、わたしがやったのね」


 パンパンの背中に真っすぐさけた傷がいっぱい。


 これは、わたしが鎖のリードでぶったもの。


 「ごめんね……ごめんね……いたかったでしょう?」


 急に泣いたわたしに、ルゥがこまったかおをした。


 わたし、『ごしゅじんさま』失格ね……。


 一方的にルゥが悪いって決め付けて、こんなにぶって、お外につなぐなんて……。


 ルゥは、とってもいい子なのに……。


 わたしを、もう2回も助けてくれたのに……。


 「ごめんね、わたし悪いごしゅじんさまね……でも」


 今度は、わたしがルゥを助けるの!


 「ふっ!? あ"あ"あ"!?」



 ______ブツン______。



「あ"あ"あ"ーーーーーーーー!!!!」


 「がんばって! ルゥのしもやけいっぱい広がってるからもっともっと刺して血をぬくの!」


  ブツ!


 ブツ!


   ブツ!


 ブツ!


 「ぎゅああああああああああああああ!!!!!」


 背中が血でいっぱいになるころには、ルゥはおとなしくなったけど何だかビクンビクンしてて買出しから戻たロノバンが地下室に下りてきたあたまを抱えてため息をついてた。


 なんでだろう?

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 ロノバンの手紙



 定期報告



 旦那様、サウジ油田の利権を手になさったようで先ずはおめでとうございます。


 これで、またこのエステバン家の名が世界に轟くでしょう。


 しかしながら旦那様。


 このような事を書くのは不躾ですが、そろそろビジネスより手を引かれリタイアを考えられては如何でしょう?


 たかだか一介のシェフ如しが差し出がましいとは存じますが、既にエステバン家における資産はもう十二分に潤っております。


 ここで少し、ご家庭を振り返られて見ては如何でしょう?


 旦那様が三度のお食事よりもビジネスがお好きなのはよく存じておりますが、ここは一つお嬢様の為にもお傍にいて差し上げる事は出来なのでしょうか?


 この、差し出がましいシェフの戯言をどうか頭の片隅くらいにはお留め下さいませ。


 長々と失礼いたしました。此処からはお嬢様の近況報告となります。


 お嬢様におかれましては、旦那球が出国されて暫くの間は大変落胆しておりましたがやはり『だるま』の飼育を始めたとあって徐々に『主』としての自覚が芽生え始めたようでございます。

 始めの頃こそ戸惑いもございましたが、お嬢様は『サンタクロース』から貰った『だるま』を大変可愛がり世話と躾に余念がありません。

 以前は、誰かに言われるまま特に深く考える事も無くぼんやりとなさっていて些か心配な所もありましたが最近ではあれほど恐がっていたケリガーにさえ声をかけられる様になりその目覚しいご成長振りにわたくし目頭が熱くなりました。


 はじめ、幾ら伝統とは言えお嬢様に『達磨の飼育』をさせると言われた旦那様のお心をはかりかねましたがそれは間違いではなかったと遅ればせながら理解いたしました。

 お嬢様は、度々失敗なさりながらも一つ一つ学ばれ『だるま』を慈しみそれが伝わっているのか先日は逃走した『だるま』が氷の池に落ちたお嬢様を助けたのです。


 ※此方の詳細については別紙①参照。


 

 昨日もお嬢様は、全身しもやけに苦しむ『だるま』を救わんが為ご自分なりに調べ治療を行ないました。

 結果としてそれは事態を悪化させただけでしたが、それでもお嬢様は確実に学びご成長あそばす事でしょう。


 ※此方の詳細については別紙②参照。


 わたくしは、そのご成長を見守り時には心を鬼にしてお嬢様のご指導をさせていただいております。


 『だるま』が、やってきてからと言うものお嬢様は寝ても醒めてもいかに『だるま』を躾その自覚を促し、それが『だるま』の幸せに繋がると信じもうつきっきりでございます。


 それは、実に素晴らしい事ではありますが裏を返せばそれだけ孤独でいらしゃるのです。


 わたくしども使用人では、そのお心の隙間は決して埋める事は出来ません。



 どうか、上記に事をお心に道中ご無事にお戻り下さい。



 ※別紙①②


 ※【特別注意事項】①②

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 2がつ6にち



 ルゥにあえない



 ロノバンにおこられた。


 ケリガーに聞いたしもやけの治し方は、ロノバンがいうには『げんしてきなみんかんりょうほう』というものでそれでケリガーはよくなってもルゥやわたしには絶対にやっちゃダメだったみたい。


 それでルゥはすっかり熱をだしてしまって、そしたら、ロノバンが『お嬢様はルゥの体調が良くなるまで地下室には立ち入り禁止でございます!』って。


 わたし、またルゥにひどいことしちゃった……。


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 2がつ7にち



 まだ、あえない



 ルゥの熱がまだ下がらないって、ロノバンがいった。


 だから、今日もあえない。


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 2がつ8にち


 まだまだ、あえない

  


 ケリガーに熱を下げる薬草をもらいにいったんだけどわたしの顔をみるなりケリガーったら走って逃げちゃうから薬草は貰えなかった。


 ロノバンは、ご心配には及びませんって言うけど……心配よ……心配すぎて……。


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 2がつ9にち



 あいたいよぉ。


 

 きょうもパンケーキの味がしない。


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 2がつ10にち



 ひとりのさんぽ



 『お嬢様、お部屋にばかり篭らずお庭を散歩されては? てゆーか行ってください! そんな風にじっとしていては体に悪いんですから!』って、リーンがいうからわたしはお気に入りのピンクのコートに白いブーツをはいてお庭にでた。


 つもった雪の上をサクサク歩きながらコートのポケットに手を入れて中身をさわる。


 うん、ちゃんともってきた。


 ポケットの中には、この前ケリガーがおとしたきんぴかの腕時計が入っている。


 昨日は逃げられちゃったけど、今日はちゃんと返してあげなきゃ……。


 けれど、チューリップの球根を植えていたケリガーはわたしに気付くとやっぱり走ってにげてしまう!


 「まって! ケリガー!!」


 「ひぃぃぃ! お許しくだせぇお嬢さん!!!」



 ケリガーはあっという間に見えなくなっちゃった……もう!


 別に、ケリガーのことは怒ってないのに!


 しかたがないから、リーンとケリガーが雪かきしたお庭の道にうっすらつもった雪をサクサク踏みながらただあるく。


 どうしたんだろう? 何もやる事がうかばない。


 一日ってこんなに長いものだったかな?


 わたし、ルゥがいない時はどうやって一日をすごしていたんだっけ?


 思い出せない……。

 思い出せないよぉ……!


 わたしは、もう歩くのもいやになって膝をかかえてうずくまった。


 「ルゥ……あいたいよ……」



 

 「こんな可愛い子を泣かせるなんて、ルゥって奴は罪作りだな」



 聞き覚えのある声がして、わたしは顔をあげた。


 「やぁ! 久しぶりだねお嬢ちゃん!」


 少し盛り上がった雪の向こう、お庭とお外をしきっているブロンズの格子の外側に、この前うちにきていた警察のお兄さんがにっこり笑って立っている。


 「そんなに泣いてどうしたんだ? ルゥってのに虐められたのか?」

 「ちがうもん! ルゥはそんなことしない……わるいのはサシャなんだから……」


 お兄さんは、大声でどなったわたしにびっくりしたみたいだったけど優しい声で『こっちにおいで、俺でよかったら話聞くよ』って言って手招きした。




 「ふぅん……そりゃなんとも『痛い』話だな」



 わたしの話を聞いたお兄さんは、格子の向こうで『あちゃ~……』って言って顎のあたりをぽりぽりしている。


 「う"……」

 「わぁ! 泣くなよ! 気持ちは分かる、心配だったんだよな! 大丈夫だって! サシャはさっルゥの事こんなに大事に思ってるんだから分かってくれるよ______」


 『多分……』って、お兄さんは小さくいう。


 「ううう……」

 「い"? ごめん、ごめんって! ほら、次から気を付ければ良い訳だし! ああ! もう泣くなよ~」


 お兄さんは、格子の間から手をつっ込んでわたしの頭をくしゃりと撫でる。


 「な?」


  パパやわたしと同じ青い目が、困ったように笑う。


 「俺もさ、新しい相棒の気持ちがよく分からなくて結構悩んでるけどお互い時間をかければきっと分かり合えると思うし、『犬』だってそれなりに訓練すればこっちの言ってる事だって結構わかるようになるから心配すんなよ……」


 お兄さんは、そっと髪をなでながらやさしく言うけど……。


 「ぐじゅ、ふえ? ルゥは犬じゃないよ?」


 「え? てっきり_____危ねぇ!!」



 パーン!



 「きゃぁ!?」


 突然、空に乾いた音がして木に積もってた雪がどさどさと落ちる!


 格子から伸びたお兄さんに抱き寄せられならがらゆっくりと目を開けて振り向くと、少し離れた雪の山からこっちにショットガンを向けているリーンがいた!


 リーンが、ショットガンをジャコンってする。


 「今度は当てます……3数える間にお嬢様から離れなさい!」


 リーンの目がぎょろぎょろ動いて、ショットガンをかまえる手がガタガタしてる!


 「1」


 お兄さんが慌ててわたしをはなして、格子の向こうにてを引っ込めようとしたけど


 「あっあれ!?」

 「なっ! いてっ!?」


 わたしのコートのポケットと、お兄さんのジャンパーの胸の刺繍が格子にデザインされたブロンズのバラの弦に引っ掛かって取れないよぉ!!


 「2」


 リーンの声が近づいてくる!


 「破くぞ!」


 ビリッって音がして、わたしのコートのポケットとお兄さんのジャンパーの刺繍が強引に引っ張られてやぶけてやっと離れることができた。


 わたしは、すぐにリーンのほうに行こうとしたけどいきなりお兄さんが腕をつかんできたの!


 「サシャ! なんで君がコレをもっているんだ!!」


 パパと同じくらい優しい目をしていたお兄さんが、もの凄く恐い顔でわたしを見る。


 『コレ』って何のこと?


 お兄さんの左手には、ケリガーの落とした金ぴかの時計。


 あ、ポケットから落ちて……え?

 でも、どうしてお兄さんそんなに怒ってるの?

 わたしが早くケリガーに返さなかったから?

 刑事さんだから?


 「サシャ! コレは大事なことなんだ! 何処で手に入れた!?」

 「いたっ!」


 お兄さんが握ってる腕がギリギリ痛む!


 どうしよう、あやまらなくちゃ!


 その時、ガシャコンって音が頭の上でして振り向くとリーンがわたしの真後ろからお兄さんの頭にショットガンの銃口を向けていた。


 「りっ リーン!」

 「お嬢っさまっままにっ! おとおと男が手手手をふれたたたたっKILL killるぅぅぅぅうぅっぅぅぅぅ!!!!!」


 リーンの目がぐるぐるしてショットガンに手が掛かる!


 「だめ! リーン! 撃っちゃだめ!!」

 「んなななななぜですかぁぁ!」

 「撃ったらきっととても痛いと思うの! だからそんなの駄目よ!」


  リーンは目をギョロギョロしながらふーふー言ってる、どうしよう今にもお兄さんを撃ってしまいそう!


 「お兄さん! 放して! 撃たれちゃう!」

 「駄目だ! 答えろサシャ!」


 お兄さんはぎゅうぎゅう握ったうでをしめつける!


 「ふふふふ!! 許さないこのおお男! お嬢様に触ってぇえっぇぇぇ!」



 わたしは、お兄さんの手に噛みついた!


 「っつ!?」

 「ほら! もう外れた、だからもう良いでしょ?」


 それでもリーンは、お兄さんから銃口を逸らさず指が_____



 「だめぇぇぇぇえ!!!」



 わたしは、リーンに飛びついた!



 パーン キキン!


 飛びついたわたしは、雪の上にリーンと一緒に倒れたけど……!



 「っく!」


 お兄さんが肩を抑えてる!


 わたしは、リーンの上から飛び起きて格子の所へ這って行く!


 「お兄さ……きゃぁぁ!?」


 お兄さんの肩からぼたぼた血が流れて白い雪が真っ赤になる!


 どうしよう! とっても痛そう!


 「ぐふふ」


 リーンが、雪の上に座ったままショットガンをジャコンってする!


 「だめ! リーン! お兄さん逃げて! 早く逃げて!」


 お兄さんは、ようやくふらふらと歩き出す。


 「ふひっ!  逃げられるとおも_____へ?」


 バチン!


 リーンは、何が起こったかよく分からないって顔をした。


 「リーン!  どうして撃ったりしたの!?  わたし駄目っていったのに!」


 わたしはもう一度、今度は力いっぱいリーンのほっぺを叩いた!


 「ひゃう!?  お おじょうさま!?」


 叩いたリーンのほっぺが、わたしの手の形に赤くなる。


 「わたし、何度も駄目って言ったのに! それでもリーンは撃った!」


 キッと、わたしが睨むとリーンはおろおろしながらグリーンの瞳にいっぱい涙をためる。


 「嫌い」


 ヒュッっと、リーンの喉が変な音を立てる。


 「リーンなんか知らない!! もう、わたしのお部屋にも入れたげなしおやすみのキスもさせてあげないんだから!」


 そう言ったら、急にリーンが震えだして言葉を忘れたみたいにあうあう言ったかと思うとなんだが湯気が______あれ?



 リーンったら、お漏らししちゃったの!?


 リーンは、メイド服のスカートの周り雪を黄色くしながらまるで小さな子供みたいに『ごめんなさいもうしませんすてないで』って、言ってわんわん泣き出しっちゃた。


 ちょっと可哀相。


 わたしは、雪の上でへたりこんでるリーンを立ち上がって見下ろした。


 『もうしわけありませんおゆるしくださいすてないですてないで』って、うわ言みたいに言いながら涙と鼻水と涎で顔をべとべとにしながらお漏らしてガタガタ震えてるリーンはルゥみたいでちょっと可愛く見える気がする。


 でも、やっぱりいくら大人のリーンでも悪い事をしたら罰をしないといけないよね?

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