A Happy New Year③

 「ふぎゅ! ぐあぁ!!」


 シュッ! シュッ! シュッ! シュッ!


 う~ん、このくらいでいいかなぁ?


 ポタポタしてきたから十分だよね!


 「ルゥ! もう終わったよ! 暴れなかったね~いい子いい子~」



 わたしは、ルゥを背中からぎゅってする。



 「う、うう……」


 これで、おしりをふかないとどうなるかわかってくれたかしら?


 ロノバンは、叩くほかに気持ち悪いって感じることも『教訓』になるといっていたけど……わたしうまくできたかな?


 ちょっとの間、ルゥをぎゅってしてからわたしは臭くなった床に洗剤をかかてデッキブラシでみがく。


 もちろん、ルゥには洗剤がかからないように黄色いソリにのせて少し離れたところに移動させて、それからそれから……。


 ふぅ、生き物を飼うって大変!


 わたしが、床を磨いているのをルゥがじっとみている。


 初めてうちに来た時は地面ばかりみていたのに、最近のルゥはわたしのことをじっとみている事がおおくなった。 


 けど、目があうとため息をつくの……なんでだろう?


 あ~あ、ルゥとお話できたらいいのにな。

 

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 1がつ21にち



 おかしなリーン



 いつものようにルゥのお世話をしてからリビングにいくと、リーンがテーブルに朝食を並べていた。



 きょうはハムエッグね!


 「どうぞ、ご用意ができました」


 そう言ってリーンが椅子をひいてくれる。


 「ありがとリーン」


 そういうと、いつもリーンは顔を真っ赤にする。


 なんでって前に聞いたら、


 『麗しいお嬢様にそんな風に微笑まれたら誰だってこうなりますようぅ!』


 だって、『麗しい』ってなんだろう?


 リーンはいつも、わたしのメイドになれてしあわせっていってる。


 そういえば、リーンの家はひぃおじい様のころからうちに代々仕えていてリーンは3代目メイドだって言っていたっけ?


 いつも美味しいロノバンのハムエッグとパンケーキを食べおわると、紅茶とクッキーが出てきた。


 あれ?


 食後に紅茶はいつもの事だけど、クッキーまで出てきたのは初めてね?


 わたしは、チョコチップクッキーをかじる。


 「……?」


 ……おいしんだけど、なんか変。


 これって……。


 「どうですかお嬢様! おいしいですか!?」


 リーンが、わたしのかおをのぞく。


 グリーンの目がとても不安そう……もしかして……。


 「このクッキーは、リーンがつくったの?」

 「はい! お嬢様の事を思って我が家に伝わる秘伝のレシピを使いました!」


 目をきらきらさせてリーンは言う。


 ……どうしよう……あまり美味しくなかったとはいえないよね?


 「ありがとうリーン……おっ、おいしかったよ」


 そういってあげると、リーンは『きゃ~』といってもじもじする。


 リーンって、普段はとてもクールにみえるのにわたしと二人きりだといつもこんな風に変になっちゃうの。


 「おっ、お嬢様! 私、髪を黒くしたんですよ! どうです? にあいますか?」


 もじもじしてたリーンが、こんどはもっと顔をまっかにして肩までの真っ黒ま髪の先をクルクルする。


 この前までピンク色だったのにどうしたんだろう?


 リーンは、よく髪の色をかえるから元はどんな髪の色だたのか誰にもわからない。


 「うん、にあうよ……でもどうして黒なの?」


 リーンの目はグリーンだから、黒よりはもう少し明るい色の方がもっとにあうとおもうんだけど……ピンクよりは全然いい!!


 「……それは、お嬢様が『あの生き物』にかまってばかりでリーンをみて下さらないからじゃないですかぁ~!」


 リーンがしょんぼりして、ぷぅっとほほをふくらます。


 もう、リーンったら大人の人なのにまるで子供みたい!


 「だって、ゴートが田舎にかえってしまって今はとてもいそがしいんでしょ? ロノバンが邪魔しないようにっていってたわ」


 「ちっ、あのクソ_____」


 「え?」


 「いいいえ! そんな事ありません! お嬢様の御用なら……いえ! 御用が無くともお傍にはべりたいですぅ!!」


 リーンは、ひざまずいて椅子に座ったわたしのてをとる。


 「どうぞ、なんなりとお申し付け下さい! このリーンにとってお嬢様こそが全てでございます!」


 「そう、じゃぁ、あとでミトンをつくりたいんだけど手伝ってくれる?」


 「はい! よろこんで_____って、ミトンなんて何に使うんですか?」


 「うん、ルゥにつけてあげたいの!」



 そう言うと、リーンはまたぷぅってほほをふくらましちゃった。


 

 うふふ、おかしなリーン。


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 1がつ22にち


 ルゥの傷がよくなってきた! 



 「うん! もう少しね!」


 わたしは、包帯を取り替えながらルゥの頭をなでる。


 おしりはもう少しかかりそうだけど、清潔にすれば早くよくなるってロノバンもいっていたからきっと大丈夫!


 ルゥは、あの日いらいちゃんとおしりをふかせてくれるようになった。


 ちゃんと学んだのね! うれしい!


 今日は体もふいて、ごわごわのルゥの髪をブラッシングする。


 少し伸びてきたみたい……もっと長くなったらリボンをつけてあげちゃおう!


 首輪も赤だからきっと赤いリボンがにあうよね!


 今日はもうちょっと頑張ってミトンを完成させようっと!


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 1がつ23にち


 パパからはがきがとどいた!



 『パパの可愛い天使さんへ

 パパは、いまサウジアラビヤと言う所にいます。

 新しい油田の開発に出資する事になってしまって、今月はそっちに帰れそうにないよ……ごめんね。

 でも、バレンタインには必ず帰るから怒らないでほしいな……。パパより』



 「パパかえってこれないんだって! 酷いよ!」


 ぴちゃぴちゃお皿を舐めていたルゥが、ちらっとわたしをみあげた。


 「パパはいつもそうよ! お仕事お仕事そればっかり!」


  わたしは、パパからのハガキをやぶいてすてた!


 パパはいつも家にいない、いつもお仕事で外国ばかりにいってる。

 

 だから、わたしはいつも一人。


 お屋敷にはロノバンやリーンにケリガー……この前までゴートもいてくれたし、皆とてもいい人たち……けどやっぱりわたしは一人ぼっちなの……『ルゥ』が死んでしまってからそれをすごく感じるようになった。


 「ルゥ……!」


 わたしは心細くなって、ルゥを抱きしめた。


 「ううう?」


 オートミールでべたべたになった顔がきょとんとしている。


 「ねぇ、ルゥ……お前だけはわたしのそばにいて……もう置いていかないで……」


 泣き出したわたしに、ルゥはおとなしくだっこされていた。


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 1がつ24にち


 今日は、なにもやる気がおきない。


 ルゥのお世話をして、そのまま地下室でルゥを眺める。


 あ、うんちした。


 おしりをふいて、トイレをながす。


 良く出来ましたって、撫でてあげる。


 ルゥ、もうトイレは完ぺきだね!


 「もう、お昼すぎですよ」


 いつのまにか階段のところにいたロノバンが、少し大きめのトレイをもって降りてきた。


 「う"う"!!」


 ルゥが、ロノバンをみてうなる。


 ……いつも思うけど、なんでルゥはこんなにロノバンのことがきらいなんだろう?


 ロノバンは、うなるルゥの前にトレイからお皿をおいてわたしのほうを向く。


 「お気を落とさずに旦那様は____」


 わたしは首をふる。


 そんなわたしをみて、ロノバンは地下室のすみに置いてあったクマのレリーフの彫られた子供用のいすをもってきて座るようにいう。


 いわれるまま座ったわたしの膝にもってきたトレイをおく。


 「ロノバン?」


 「ツナサンドとサーモンサンドでございます」


 どっちもわたしの好きなサンドイッチだ。


 「ここで食べていいの?」


 「たまにはよろしいでしょう……。 その代り、はやく元気になられてくださいましリーンもケリガーも心配しますよ?」



 サンドイッチはとても美味しくて、あっという間に食べちゃた!


 「元気になられたようですね?」


 ロノバンのひげがふそりとする。 

 

 「ん……ありがとうロノバン」


 うん、しっかりしなきゃ!


 一生懸命お皿をなめるルゥをみる……かわいいルゥ。


 お前の為にも強くならなくちゃね!


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 1がつ25にち


 刑事さんがやってきた!


 「お引き取りください!」

 

 ルゥのお世話がおわって地下室からでてくると、リーンの怒った声。


 なんだろう?


 階段のかげに隠れてようすをみると、外のポーチの所でリーンが誰かと話しているのが見えた。


 誰? 男の人?


 首をのばすと、その人はリーンに写真を見せながら何かいう。


 「______ですから___」


 「知りません!」


 「___見覚えありませんか?」


 「お帰り下さい! 警察を呼びますよ!」


 「自分、刑事なんですが?」


 え? 刑事!?


 べしゃ!


  一生懸命首を伸ばしてたらころんじゃた!


 「お嬢様!!」


 転んだわたしをみてリーンが慌ててかけよる。


 こんなの全然大丈夫なのに! 


 「おじゃましま~す」


 「ちょっと! 入らないで!!」


 あれ?


 『刑事』なんていうから、きっと本に出てくるみたいにトレンチコートや革靴きてもっと偉そうな感じだと思ったのに。


 『やあ! だいじょうぶかい?』と、いってにっこりしたのは金髪の髪を短めにセットした青い目の若いお兄さんできているものもGパンにスニーカーに99って刺繍されたジャンパーだし全然『刑事』にはみえない。


 外は雪なのにそれだけで寒くないのかな?


 「あー……ホントホント、お兄さん刑事だからバッジみて!」


 お兄さんはそういって、わたしとリーンにバッジを見せる。


 うわ~本物のバッジなんて初めてみた!


 「お兄さんは、だれかさがしているの?」


 「そいうなんだ~実はね……」


 「ちょっと貴方!!!」


 「え? 写真をみせるだけですよ?」


 わたしに写真を見せようとするお兄さんは、ちょっと意地悪そうにニッてする。


 「リーン! わたし写真みたい!」


 「お、お嬢様!」


 「じゃじゃじゃ~ン!」


 リーンが、ちょっと目を離したすきにお兄さんはわたしに見える様に写真を見せた!


 「………知らない人……」


 「そうか~ざんねーん」


 お兄さんは、オーバーにガックリする。


 「もう、お帰り下さい! そんな『日本人』の事なんか知るわけ無いじゃないですか!!!」


 リーンが怒って、お兄さんを外に出そうと背中をおす。


 「へぇ~、この写真で彼が日本人だなんてよくわかりましたね~」


 その言葉に、リーンがはっとした顔をする。


 「それじゃ、近いうちまた来るんでっその時はコーヒーくらい出して下さいよぉ~」


 お兄さんはそう言うと、ひらひら手をふりながらおとなしく帰って行った。


 また来るんだ……なんだかたのしみ!


 「お嬢様……写真の……本当に見覚えがないですか?」


 「うん、知らないひとだったよ?」


 『そうですか』と呟くと、リーンはそのままキッチンの方へいってしまった。


 どうしたんだろう?


 見せてもらった写真に写っていたのは、プールサイドに立っている笑顔のきれいな真っ黒に日焼けした水着姿の男の人だったけどそんな人ウチにはいないのに。


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 1がつ26にち



 みんな元気がない。


 今日は雨だからかな?


 ロノバンがルゥのごはんを忘れるなんて……なにがあったんだろう?


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 1がつ27にち



 刑事のお兄さんのお友達がきた。


 『今日はお部屋から出ないように』ってロノバンに言われたんだけど、気になって話し声のするリビングの方へいくと怒った男の人の声といつものとおりのロノバンの声が聞こえてきた。


 扉を少しだけ開けて中をのぞくと、黒い肌のトレンチコートをきた男の人とロノバンがテーブルに向かい合わせにすわっている。


 「とぼけるのか!」


 黒い人は、ロノバンを怒鳴りつけた。


 もの凄く怒ってる! こわい!


 「我が主は、海外へビジネスの為出かけております。 出入国記録をしらべれば直ぐにわかることですよ? レイニー刑事」


 あの人も刑事なのね……たしかにあのお兄さんよりも刑事に見える。


 でも、なんでウチにきたんだろう?


 あのお兄さんと同じ御用かな?


 「この屋敷に日本人がいるはずだ!」


 あ、やっぱそうなんだ!


 「はて? そのようなお客様はご滞在ではありませんが?」


 ここからじゃ、ロノバンがどんな顔をしているか分からないけどレイニーっていう刑事さんはもの凄く恐い顔でロノバンを睨んでる!

 

 ロノバンの言う通り、このお屋敷にはそんな人いないのに……?


 「話にならない!  探させてもらう!」

 「令状をご提示下さい!」


 席を立とうとしたレイニー刑事は、ロノバンの言葉に動きを止めてドスンと椅子にすわる。


 「こんな事が許されると思っているのか……!」


 「当方には覚えの無いことですし、令状もご提示いただけないなら法廷の場で争う事になりますが?」


 今にも、呻り出しそうなレイニー刑事にロノバンが紅茶をいれる。


 「年代モノの良い茶葉です、気分が落ち着きますよ」


 レイニー刑事は、血走った目でロノバンを睨みながらこうちゃ_______ポン!


 「お嬢様!」


 「きゃ!!」


 もう! 急に後ろから肩を叩かれてびっくりしちゃった!


 「り リーン~びっくりし」

 「お部屋から出ちゃダメじゃいないですか!!」


 滅多に怒らないリーンが、すごいこわい顔でわたしをみて腕をつよくにぎる。


 「い いたいよリーン……?」


 「はっ! 申し訳ございません! はやくお部屋に__________」


 ガチャン!


 リビングで何かが割れる音がした____なに?


 振り返ると、レイニー刑事がテーブルに顔をふせてる……どうしたんだろう?



 「お嬢様!」


 リーンが、私の手を強くググってつかんだ。


 「おや? お嬢様にリーンではないですか? 此処で何を?」


 わたしがのぞいていたことに気が付いたロノバンが、リビングからでてきた。


 「ロノバン、あの刑事さんどうしたの?」


  ロノバンは、いつものようにふそりと笑う。


 「どうやらお加減が悪いようですね~……刑事のお仕事は大変なようです」


 「大丈夫なの?」


 「はい、わたくしとケリガーでメンフィス先生の診療所までお運びしますのでお嬢様はお部屋でリーンと遊んでいてくださいませ……さっ、リーンお連れしなさい」


 そういわれて、リーンはわたしの手を引いて廊下を早歩きする。


 「ねぇ、あの刑事さん大丈夫かな?」


 わたしが聞いても、いつも答えてくれるはずリーンは口をつぐんだままだった。

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 1がつ28にち


 ミトンをルゥにつけてあげた!



 「どう? これで足を床につけてもすれないよ!」



 リーンにならって作ったミトンで、ルゥの手足の先をすっぽり包む。


 ミトンといっても、普通のものとちがうのよ!


 ルゥ専用のミトンなの!


  コレすごいのよ~地面とふれるところに綿を多めにいれた特別なものでピンクの花柄の生地で脱げないように赤いリボンで結べるようにしたの!


 ちょっと形が悪いけど頑張ったんだから!


 つけてあげると今までハイハイしかしなかったルゥが、ゆっくりと手と足をじめんにつけて立ち上がろうとする。


 「大丈夫! 痛くないよ! がんばって!」



 「ふっ うう……」



 少し時間が掛かったけど、ルゥは四本の足で地面にたったわ。


 あああ、本当に『ルゥ』がもどってきたみたい……!



 

 「ああ……ルゥ、ルゥ……」



 うれしくて、ルゥをぎゅってする。



 「ううっ?」


 「あっ、ごめんね! もうすこし底の綿多くしたほうがいいかもね……」



 ルゥの傷がよくなるまでに、後4つは作らなきゃ!



 わたしは、いっぱいルゥをなでてから地下室をからでた。



 それにしても、昨日からリーンのようすがおかしい。


 いつもおかしいけどなんだかやっぱり変なの……どうしてかな?


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 1がつ29にち



 雪がつもった。




 こんな日は、『犬のルゥ』の事を思い出す。


 『犬のルゥ』は雪が大好きだったから、よくお庭で雪の中に飛び込んでいたっけ……。


 ルゥとも早くお外で遊べたらと思うけど、まだまだかかりそう。


 遊べてもルゥの体には毛が無いからきっと雪ではあそべれないかなぁ。



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 1がつ30にち



 まだ暗いのに目が覚めちゃた!



 ベッドでめをさましたら、まだ4時でお外はまっくらだった。



 もう一回寝ようとしたけどぜんぜん寝れないから、窓から外を見てみる。



 雪はすっかり止んでいて、灰色の雲の切れ間から月と星がみえる……きれい……。



 月のあかりが、お庭につもった雪にはんしゃしてそこらじゅうがキラキラしてる。




 「あれ?」



 お庭の奥のほうから、なにかがこっちに向ってくる。


 なんだろう?


 良く目をこらしてみると、それは懐中電灯の光だ!

 だれかがお庭にいる!



 んん?


 「あ、な~んだケリガーじゃない! びっくりした~」



 でも、こんな朝早くなにしてるんだろう?



 ケリガーは、暖炉の蒔きを集めるソリを引いて雪の上をがぽがぽ歩いてわたしの部屋のしたを通って表のお庭のほうへいってしまった。



 ケリガーのお仕事って大変なのね……あれ?



 ソリを引いていた跡に何かキラキラしたものが見える!


 ケリガーが、なにか落としたのね!



 「あ」



 また、雪が降って来た……大変!


 早く拾ってあげないと、雪埋もれてどこに行ったか分からなくなっちゃう!


 わたしは、ガウンを着て急いで部屋を出る。


 早く拾てあげなくちゃ!


 もし、大切なものだったら大変だわ!



 階段を下りて、キッチンの方へ行く。


 たしか、キッチンの奥の食材を入れるときに使う扉をからの方が近いわ!


 わたしは、ガチャって開けて外に出る。


 うう~寒い!


 雪がどんどん降ってくる……急がないと!



 キラキラしたそれはすぐにみつかった。


 「わぁ~時計ね……」



 それは、金色の時計で中の文字盤にキラキラした石が埋め込まれている。



 「ダイヤモンドみたい……きれい……」



 これは、きっとすごく大事な物よ!


 あとでケリガーにとどけよう!



 すごく寒くなったわたしは、急いでキッチンにもどって扉を閉める。




 「さ 寒い……」



 とりあえずお部屋に戻ろう…。


 わたしは、氷みたいにつめたい時計をガウンのポッケにいれて部屋にもどった。 



 


 「お熱がありますね」



 朝になって、わたしのほっぺが赤いってリーンがいって、体温計で測ってみてため息をついた。


 薄着で外に出たのがいけなかったのかなぁ?


 「今日は、ベッドから出てはいけませんよ?」


 「でも、」


 「『でも』じゃありませんよぉ! あの生き物のことでしたらロノバンにたのみます! 今日は安静にして下さい!」



 そういって、リーンは部屋を出て行ってしまった。


 そうね……時計を返すのは明日にしよう……。



 わたしは、そっと目を閉じた。




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 1がつ30にち



 ケリガーがいない。




 「ケリガーでしたら、町に苗と食料の調達にいっております2日はもどりませんが?」



 お庭をいくら探してもケリガーがいないから、ロノバンにきいてみたらそんな答えがかえってきた。



 「お嬢様が、ケリガーをお探しになるとは珍しい……ルゥになにかありましたか?」


 「そうじゃないんだけど……あ、そうだ聞いてロノバン! ルゥね、四本の足で立てるようになったの!」


 「それはそれは、おめでとうございます!」



 はしゃぐわたしに、ロノバンがふそりとひげを動かす。



 「では、傷がもう少し良くなりましたら装具をつくらせませんと」


 「装具?」


 「はい」


 

 ロノバンの目がキラッとする。



 「いずれ、お外を走らせるなら装具は必須でございます。

 ルゥの足の断面はとても柔らかいので、アレでは地面を10歩も行かないうちに破けてしまうでしょう」



 「それはいたそうね……」


 「はい、そうならない為に必要なのが『装具』です」


 

 「それは、どういったものなの?」



 「はい、それはルゥのような『少し残したタイプ』に着せる人間でいうならブーツのようなものです。


 それを着せることで、やわらかい断面を守りその他の怪我も軽減されます」



 

 「それは良いわね! すごく欲しいわ!」


 

 「わたくしの知り合いが専門で作っておりますので、もう少し傷が良くなったら屋敷にお呼びしますね」



 「楽しみ!」



 わたしは、嬉しくなってルゥのいる地下室に急ぐ!



 傷の具合を確認しなくちゃ!


 あああ、ルゥ!


 早くお散歩したいね!

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 1がつ31にち



 ルゥをおふろにいれる。



 きずもすっかりよくなったので、わたしはルゥをおふろにいれる事にした!



 「ルゥ! お湯かけるよ~」



 ザパァ……。



 初めてのときとは違ってルゥは、素直にお湯をあびる。



 「みてみて~きょうはバラのかおりだよ~」



 バラの香りのシャンプーをルゥの頭にかけて、ワシャワシャあらう。


 少し茶色い泡が立つけど前に比べたら全然きれいよ!



 スポンジで顔も耳の後ろもゴシゴシしてきれいにする。


 ん~いい子~全然動かない!



 ザバッとお湯をかけて次は体。



 ゴシゴシゴシ。



 次は、おしりとおまた。



 モソモソモソ。



 恐いくらい静か……それどころか洗いにくそうにしたら体を動かしてくれた! 


 びっくり!



 お湯できれいに流す。



 今度は、前に恐い思いをしたバスタブ。


 大丈夫、もう傷口はドコにもないんだから!



 ルゥも早くは入りたそうにわたしをみてる……よし!



 「いくよルゥ!」



 わたしは、ルゥの手をバスタブのふちにかけて後ろから腰をもって_______ザバン。



 

 あ。



 ルゥは頭からバスタブに沈んだ。




 ぶくぶく……ぶくぶく……。



 やっぱり浮いてこない。




 「きゃぁぁぁぁぁ! ルゥ!!」


 

 わたしはルゥの髪をつかもうと________ズルッ!




 「え?_____がぼっがぼっぼぼぼっぼ!!?」




 シャンプーの泡!?


 あしがすべった からだ だめ あしがゆかに つかない


 わたし  はんぶん落ちて  どうしよう あきあがれない  いきが おゆが  くるし  たすけて



 ぱぱ……




 ぎゅっ。



 頭がぼーっとしたとき、なにかがわたしのからだを捕まえてお湯のなかに引き込んだ!


 ああ……わたし、しんじゃうんだ……。


 体 の ちから ぬける


 けれど次の瞬間わたしの体は、バスタブの縁に投げ出された!


 「ゴホッ! ゴホッゴッホ……はぁ はぁ はぁ……」


 な……に?


 どうして……?


 温かいおゆのなかで呆然としていると、後ろのほうで少し咳きこむ音がして振り返るとはんたいがわのふちに手をかけてちょっとばつの悪そうなかおしたルゥがこっちをすまなそうにみていた。

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