a Christmas present ②
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12がつ31にち
ルゥが、すこしげんきになった。
「さぁ、ルゥごはんですよ!」
コトリと地面においたお皿にむかってルゥがもぞもぞいどうする。
そして、お皿の前にくるとわたしの事を少し脅えたかおで見上げてからあきらめたようにお皿に顔をつこんで舌でピチャピチャと舐めはじめた。
コレは、きのう気付いたことなんだけれどルゥにはどうやら歯が一本もないかったみたい。
これじゃぁ、ソーセージやパンは食べれないよね……かわいそうなことしちゃったなぁ。
いま、ルゥが食べているのはロノバンにお願いしてつくってもらった栄養満点の特性オートミールで歯の無いルゥ用にものすごく軟らかく煮込んである。
あっと言うまにお皿を空にしたルゥにお代わりを入れてあげたらの凄く嫌なかおされた……なんでだろ?
またオートミールを舐めはじめたルゥを尻目に、わたしはある準備をする。
コキュ……ドドドドド……。
その音を聞いたルゥが、皿をなめるのを止めてこっちを振り向く。
ルゥの目にうつるのは、お湯の溜まりつつある少し小さなバスタブと長靴をはいて髪をむすんでブラシとハサミをもってにっこり笑うわたし。
そうです!
ルゥをお風呂に入れたいとおもいます!
「うう~! ううううう~!!」
ルゥにもそれがわかったみたいで、唸り声を上げお皿をひっくり返してゴロゴロ転がりながら壁にぶつかっちゃった。
そんなにお風呂が嫌いなの!?
前のルゥは大人しく入ってくれたのに……。
「ダメよ、ルゥ! こんなに汚れてるじゃない! キレイにしなきゃ!」
はっきり言って、今のルゥはかなり汚い。
もう何日も首から下は白いふくろに入ったままだし、その白いふくろなんて赤黒くなってるしおしりの所なんか黄色くなってビチャビャしてる!
きっと、オシッコだわ!
わたしは、まずふくろからルゥを出すべくハサミをもって近づいた!
「あ"あ"あ"!!! う"あ"あ"!!!!!」
ルゥは叫び声を上げて必死に抵抗する!
かわいそう…だけど汚れているのは絶対に体によくないんだから!
わたしは、心を鬼にして壁にはりついて叫ぶルゥの首のところから一気にハサミを入れてふくろを切った。
ビリィィィィィィィィ!
「きゃ!」
ハサミの切れ味がよすぎたのとルゥが暴れたせいで、手元が狂ってふくろも切れたけどハサミの刃がルゥの太ももをちょっと切っちゃった!
「ぎっつ!?」
「きゃぁ!? ルゥごめん……でも暴れるからよ!!」
ルゥは恨めしそうにわたしを見上て、『う"う"』って唸る……もう!
自分が暴れたせいじゃない!
わたしが、切れたふくろを脱がせようとするとルゥはもの凄い大声を上げて抵抗する!
「何? どうして? キレイにしてあげるんだから____きゃっ!?」
その時、抵抗していたルゥがふくろを掴んでいたわたしの手にかみ付いた!
「う"う"う"う"~~~!!」
コレでもかって顔でわたしの手に一生懸命にかみ付くルゥ。
でもね、ルゥには歯が無いからちっとも痛くないの。
わたしは、必死に顎に力を入れているルゥの口の中で指を動かしてみた。
暖かくてヌルヌルする口の中で、歯の無い歯茎を指でなぞってみたり、舌を捕まえてみたり……ヌルッ!
「ぐっ!? ゲホッ! ウエ"ェェッ…!!」
あっ!
面白くってついノドの奥にを触っちゃった~でも、先にかみ付いたのはルゥなんだかからね!
ようやく観念したのか、それっきり無抵抗になったルゥからふくろを剥ぎ取る。
「あっ」
出てきたルゥの体を見て、わたしはびっくりした!
それはとても人間に似ているようで、それでも何処か違う感じのなんだかとっても不思議なものに見えたから。
まず、肌の色がすごく黄色くて体の毛が一本の無いキレイな肌と、多分30cm位しかないとても短いおててと足……その先端には赤茶けた包帯だったものが外れかけていて見ててとても痛そう。
そっか、怪我をしていたから触られたく無かったのね……でも、ちゃんと洗って消毒しなくちゃ!
そのまま視線を落としてさっきハサミで傷つけてしまった太ももを見ようとしたら、それはついめに付いてしまった。
「あれ? ルゥ……女の子なの?」
わたしの言葉にルゥは大きなため息をついて、視線を会わせてくれない……まぁいいや!
とにかく寒いし、早くお風呂に入れて傷の消毒しなきゃ!
『おいで』といってもやっぱり来てくれないので、わたしはバスタブからバケツにお湯を汲んでそこでルゥを洗う事にした。
「うんしょ! うんしょ!」
ザバァ……。
「……」
ルゥの頭にバケツのお湯をかける。
すると、透明なはずのお湯がルゥの体を流れると茶色くなって床に流れて匂いもとても臭い。
ちょっと触りたくないと思ったけど、わたしはルゥの飼い主なんだからしっかりしなきゃ!
もう一度バスタブのお湯をくんで、ルゥの体をよく流して持ってきたお気に入りのシャンプーをカピカピになった黒い頭にたらす。
ワシャ。
ワシャ。
ワシャ。
いつもわたしが使うときは、まっしろな泡しか出ないのにルゥに使うと茶色い泡がモコモコたつ。
……後2・3回は洗わないとだめかも。
「どう? いいにおいでしょ? ストロベリーのシャンプーなんだよ~」
ルゥは、下をむいたままピクリとも動かない。
わたしは、またお湯をかけてまたシャンプーをたらして茶色い泡が出なくなるまでルゥの頭をゴシゴシする。
バシャ!
よやく汚い泡がきれいな白い泡にかわった所で、お湯で流して今度はスポンジで顔をこする。
「う"っぐ……!」
「ルゥ! 目と口を閉じて! 泡が、ほらぁぁ~」
目に泡が入ったのかルゥは、スポンジから顔をそむけようといやいやする!
「もう! 動かないで! もっと目に入っちゃうんだから!」
そういってもルゥは言うことなんて聞かないから、わたしはルゥの口に親指をつっこんで下あごをつかまえた。
「ぐぅ!?」
「泡をとってあげるから動かないでっていってるのに!」
バケツのお湯を含ませたスポンジで目の泡をとってあげてるあいだ、ルゥは怒って歯茎でガジガシ親指をかむけど全然痛くないんだから!
「ほら! きれいになったよ!……つぎは」
わたしは、あごを捕まえたままスポンジにシャンプーをたしてよくあわ立てる。
「はい、うーしてごらん! うー!」
捕まえたあごを上に持上げて、ルゥの垢で茶色くなった首をあわ立てたスポンジでゴシゴシこするとまた茶色い泡がたつ!
あああああ!
よく見たら、耳も耳の後ろもまっくろじゃない!
「もおおおおお!」
こうなったら、徹底的にきれいにするんだから!!!!
ルゥが、どんなに呻いても首も耳のうらもワキも背中も前足の傷も容赦なく徹底的にスポンジで磨き上げる!
強く磨きすぎて傷口から血がにじんでるけど、そんなの後よ!
今はとにかく汚れを落とすんだから!!!
それは、わたしがそこにをゴシゴシしようとした時だった。
「あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!!!」
「きゃ!」
いままで、呻きながらもじっとしてたルゥが突然叫び声をあげてわたしの手を振り切っると泡まみれまま床をゴロゴロゴロ転げて地下室中を逃げ回った!
「こら! ルゥ!」
「ぐぅぅぅぅぅぅぅっぅぅぅぅぅ!!!!!」
壁を背に唸りながら、ルゥはすごく怒った目でわたしを睨む!
「ダメ! そこが一番汚れてるんだから!」
わたしは、ルゥのおまたを指差す!
体の上半分は洗えたけど、おへそから下がまだでとくにおまたとおしりがもの凄くくさいしきっとあのこびり付いてるのはウンチよ!
お湯で流したくらいじゃとれない……スポンジかブラシでよく擦らないと!
「ぐぅぅぅぅぅ……!」
わたしは、壁ぎわにおいつめたルゥの汚いおまたに泡の付いたスポンジで_______ドン!
わたしは、勢いよく地面にしりもちをつく!
「~~~~いたぁ……」
思わず付いた手が擦りむけて少し血が出る……わたしはとても悲しくなった。
そんな……なんて事……ルゥが、ルゥが、わたしを突き飛ばした?
どうして?
わたし、こんなにルゥが好きなのに!
汚れているから、キレイにしたいだけなのに?
ホントは、ウンチなんて触りたくないんだよ!
あんまり悲しくて、もうルゥの世話なんて放り出してしまいたくなる……。
そうよ!
ケリガーかロノバン頼んで……。
あ。
そうか、ロノバンが言いたかったのはこう言う事だったんだ…。
わたし、犬のルゥのときは一緒に遊んだしお散歩もしたけれどお風呂やウンチのお世話はメイドのリーンやケリガーがしてたしお仕事の休みの時にはパパがやっていた。
わたしだって何もしなかった訳じゃないけど……。
ルゥの方をみると、唸りながらまるで自分は悪くないって反抗的でギラギラした獣みたいな目でわたしを睨んでくる。
きっと、このまま階段を上がってキッチンにいるロノバンに頼めば代わりにルゥの体をあらってくれる……でも……!
それじゃダメ!
そんな事ではいつまでたってもルゥは、わたしのモノにならないの!
それは嫌、ルゥ……お前はわたしのモノなのよ!!
「……ダメじゃない……いい子にしなきゃ……」
わたしは、立ち上がってズボンについた埃をはたく。
そして、ギロッて此方の様子をうかがうルゥに背を向けてバスタブの方へ歩いてボイラーから突き出た蛇口を閉めて注がれていたお湯を止める。
この地下室は、もともと犬のルゥのお部屋でもあったからこのバスタブはもちろん犬のルゥが使っていたモノでこの小型のボイラーもパパがルゥが暖かいお湯でお風呂に入れるように地下室に入れたモノ。
わたしは、そのボイラーのスイッチを切った。
すると、ボイラーと連結していたヒーターも一緒に切れる。
今まで暖かかった地下室が一気に冷えて、吐く息が白くなる……。
ああ、そういえばニューイヤーは雪だとケリガーがいってたかしら?
わたしは、バスタブの近くに置いてあったコイルのように巻かれた古いガーデニング用のホースの先端を蛇口にセットする。
キュキュキュ……。
「ふー……うう……ふーぅうう?」
振り向くと、ルゥが白い息を吐きながらガタガタと震えている。
そうよね、少し濡れただけのわたしがすごく寒いものルゥって体に毛が生えてないしさっきかけたお湯で体がびしょ濡れだからきっと寒いよね。
わたしは、ガーデニングホースのレバーを握る。
ブブブッ! パシャァァァァァ!
シャワーのようになっているホースの所から、冷たい水が飛びだして地面をぬらす!
「う"-!! う"-!! う"-!!!!!!」
今から、何をされるのか分かったルゥはズルズル這いながら逃げようとするけど、ダメよ……ルゥがいい子にしないのが悪いんだから!
わたしは、イモムシみたいにモゾモゾ逃げるルゥのおしりにシャワーを向けてレバーを握った。
バシャァァァァァァァァァァァァァ!
「!!!!~~~~~~!!!!」
シャワーから飛びだした冷たい水がおしりに当ると、ルゥは声にならない声を上げてビチッてのげぞる!
それでも、わたしはシャワーの水を止めない!
そう、コレは『罰』悪い事をしたら罰を与えなくちゃ。
「ふぎゅうぅぅぅぅぅぅぅ! がぁぁぁぁぁぁ! あああああああ………」
口から白い息を吐きながら絶叫するルゥに心がぎゅーってなる……でも、ルゥには『ルゥ』みたいないい子になって欲しいから今の内にちゃんと躾をしないと!
コレはルゥの為なのよ!
地下室は、すっかり暖かさを無くしてまるで冷凍庫のように冷え切り水しぶきが跳ねるわたしの右手の感覚が無くなっていく。
プシュ!
わたしは指先が痛くてレバーを放した、多分15分くらい立ったかな?
その頃には、ルゥは微かに震えていたけどすっかり大人しくなっていた。
わたしは、シャワーを地面になげだしてスポンジとブラシとシャンプーを持ってうつ伏せのまま動かないルゥのおしりの所に屈む。
ブリュッブシブシッ、ブッブ!
残りのシャンプーを逆さまにして、ルゥの汚いおしりにかける。
ゴシゴシゴシ……。
まず、おしり全体をスポンジで磨いて割れ目のところからウンチのこびり付いた穴のところまで丁寧に洗う。
……それでも取れない所はブラシで…あ、爪で引っかいた方が取れるかも。
おしりがキレイになったので、今度はルゥをひっくり返しておまたを洗う……ルゥは痩せてて軽いのでわたしでもひっくり返す事ができた。
ワシャワシャワシャ。
あれ?
ルゥ、さっき見たときは女の子かと思ったけどよく見たらやっぱり男の子だったみたいね……とっても短かかったから触るまでわからなかったや。
「あ"あ"あ"……っ……」
わたしが、おまたを洗っているとルゥの真っ黒な目から涙がポロポロ溢れ出した。
「ルゥ? どうして泣いてるの?」
顔をのぞきこむと、ルゥは鼻をすすりながら顔をプイッそっぽむく。
そっか、寒かったよねごめんね。
おまたの汚れを落として、足の傷の汚れもそっとスポンジで撫でるように洗う。
痛かったのかルゥは、目をぎゅってして息をとめてる。
「ちょっと、待っててね」
すっかりルゥを洗い終えたわたしは、バスタブの方へ走ってボイラーのスイッチを入れる。
ブゥゥゥゥン!
っと、音がしてヒーターもいっしょに動きだす。
お湯が暖まるまで少し掛かりそうだったので、バスタブに残っていたお湯をバケツに入れてルゥの所へ急いで持って行く!
ザバァ!
泡だらけのおまたにお湯をかけると、唇をまっさおにしていたルゥが少しほっとした顔をした。
わたしは、もう一度バケツにお湯をくんでルゥにかける。
それから、ようやく温まったボイラーの蛇口からホースをはずしてすっかり減ったバスタブにお湯をためて……何とかルゥをこの中に入れたいんだけど……そうだ!
ズルズルズル……。
「ルゥ、ルゥ!」
わたしは、去年クリスマスプレゼントにパパにもらった黄色いソリを引いてルゥの所まで行きまっさおな顔で目をつぶっていたルゥのほほをぺちぺちとたたいた。
「う……ぅ……」
「寒かったでしょ? コレにのって、あっちにいこう! お湯をためてるんだよ!」
わたしは、ほかほか湯気をたてるバスタブを指差す。
すると、それが何なのか分かるのかルゥは一生懸命体を返そうと身をよじる。
「まって、そう、そんな感じそんな感じ……もう少し!」
「ん"うっ!」
ひっくり返るのに会わせて、体の下にソリを素早く滑り込ませるとなんとかルゥを乗せるのに成功した!
「うんしょ! うんしょ!」
わたしは、そのままソリを引いてバスタブのところまでルゥを運ぶ。
バスタブからは、暖かいお湯が溢れて地面を濡らしているけど……どうしよう。
バスタブは丁度わたしのおへそより少し高いくらい……どうやってルゥを中に入れよう?
お湯をバケツに入れてかけようかなぁ?
なんて考えていると、ルゥが突然ソリから転がりだしてバスタブのましたにはっていく。
う~う~いいながら、血のにじむ短い腕と足を地面に付き反動をつけて立ち上がったみたいになって右腕をバスタブの縁に引っ掛けた!
「え!? ルゥ!?」
「ふヴうヴヴヴ~ぅぅうぅ~~~!!!」
でも、腕が短すぎてそれ以上はどうする事も出来ないみたい!
そんなに中に入りたいの!?
「まって! まって! 押したげるから!」
わたしは、ルゥの後ろから腰のところに手を回して上に持上げ_______ザボン!
あ。
思ったよりかなり軽かったルゥの体は簡単に持ち上がって、勢いあまって頭からバスタブの中に投げ込んだみたいになっちゃった!
ぶくぶく……ぶくぶく……。
……あれ?
浮いてこない……。
「きゃぁ!! ルゥ!!」
わたしは、お湯の中に手をつっこんでルゥの髪を掴んで頭を上にひきあげる!
「ゴホッ! ゴホッツ!!」
引き上げたルゥは、短い両腕をバスタブの縁に引っ掛けて咳き込みながらわたしをギッてにらむ。
「ごめん、今のはわたしが悪かったわよ……」
両手を縁に引っ掛けて、ぽかぽかのお湯にうつ伏せにぷかぷか浮かぶルゥ。
青ざめてたほっぺにも赤みがもどってきて…ああ、よかったぽかぽかで気持ちいで_____。
ポタッ。
「あっ!!」
バスタブの縁に突き出したルゥの手の傷口から、血がボタボタ落ちる!
ああああ!
足らも血が出てきてお湯が真っ赤に!!!!
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
わたしの悲鳴に、ロノバンとケリガーが地下室に駆け込んできて気を失ったルゥをお湯から出して傷口を止血して、血を見て泣き出したわたしの代わりに血まみれのバスタブや泡まみれの地下室の床を掃除してくれた。
もう少しでルゥが死にそうだったっと、ケリガーに聞いて涙が止まらなくなる。
そんな、わたしを見てロノバンが『分からない事は人に聞くべきです』っといったので、もっと惨めな気持ちになった。
床にしかれた毛布の上で、ぴくりともせずに眠ってしまったルゥ。
ごめんね、ごめんね……こんなつもりじゃなかったの!
「大好き……大好きだよ、ルゥ……」
その日、わたしはこっそりルゥの隣でねむった。
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