第7話 扉

 一面に積もった雪に、昼の日差しが反射する。

 鳥の声すらしない山道を、スリサズは一人きりで登っていく。


 手にはコメティア王国の王様から受け取った、本来なら持ち出し厳禁の、国家機密レベルの地図。

 時が来れば貸し出すと王様はソーンに約束をしており、お城の門番にはソーンが来たら通すように命じていたのだけれど、肝心のソーンの死も、娘のスリサズの存在も、王様には知られていなかった。

 そのせいで王様に会うのにずいぶん手間がかかってしまった。


 大きな岩の前に立ち、スリサズは懐から取り出した彗星玉をかかげた。

 占い師はこれをスリサズに渡すのを渋っていたが、占い師の師匠を通したらすぐにオーケーが出た。



 彗星玉が光を放つと、岩が動き、後ろから巨大な扉が現れた。


「…………?」

 たたいてみる。

 ビクともしない。


「………………」

 鍵穴を覗き込むが、何も見えない。

 スリサズは天を仰いだ。


 七十年おきにくり返されてきたカブ神祭り。

 それが終わっても天のカブ神様が去らないという、史上初めての事態に、コメティアの市民はこれが吉兆なのか凶兆なのかと戸惑っていた。

 それからさらに時間が経ち、彗星はなおも近づき続けている。


 スリサズは扉をガンッ!と殴った。

 ここの鍵を持っているとすれば……

「あいつか……」


 重い足取りで下山を始める。

 けれど。

(いつまでもスネてはいられない……っ!)

 もう時間はあまりない。

 呪文を唱えて氷のそりを作り、スリサズは一気に滑り降りた。

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