第5話 そしてまた
「それからしばらくしてね、あたし、偶然なんだけど、ノスポル王国と取り引きのあった商人と出逢ったの」
「・・・」
「その商人によればね、なぁんと、ノスポル王国があった海に雪が降って、新たな島ができつつあるって言うのよ!」
「・・・ああ」
「何よ、知ってたの? でもこれは知らないでしょ。なんとね、解けた氷人間達が、みんなそこへ戻ってきているのよ! 同じ種類っていうんじゃなくて、同一人物!
反応が薄いわね! あたし、自分で行って確かめたのよ! つい先週! ツラランとソルベッタ姫にも会ってきたんだから!」
「・・・二週間前にソルベッタ姫から、依頼の仲介人を通じて手紙が届いた。・・・君も連絡先を決めておけば、ただでさえ寒い時期にあんな地方にわざわざ行く必要はなかったのに」
スリサズの目が点になる。
からっぽのお皿、からっぽのコップ。
からになりかけた頭をフル回転させる。
「い、いいじゃないのよ! 自分の目で確かめたかったのよっ!」
「・・・何故?」
「…………」
「・・・俺のため?」
自分のせいで大勢の犠牲が出たと落ち込んでいるのではないかと思ったから?
「違うわよバカ!!」
他の席の客が振り返るような大声で怒鳴り、スリサズはロゼルの前からアップルパイを取り上げた。
運ばれてからずいぶん経つのに手をつけられていなかったのは、ロゼルがスリサズの話を真剣に聞いていたからか、それともスリサズの食べっぷりに見入っていたからか。
「・・・手紙によれば、争いが再燃し始めているらしい」
「あたしもその気配は感じたわ」
「・・・また二つに分かれるのかもな」
「そンでもってまた一つの海になるのね」
アップルパイがスリサズの胃袋に消えるのを、ロゼルは頬杖をついて見守った。
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