海の防人達(後編)

○艦艇公開翌日 基地正門前 マルロクフタマルインディア


 朝も早く、辺りも静かな、海上自衛隊基地の門前で、そこに似つかわしくない、小さな女の子の声が響き渡る。


「おねがい!“いわみ石見”のおねえさんにあいにきたの!おじさん、あわせて!?」


 今にも泣き出さんばかりの顔で、基地の陸警隊々員に食い下がる海里がいる。

 おじさんと言われた、海上自衛隊向けの青迷彩の”陸上戦闘服2型”を着ている隊員は、跪いて海里に視線を合わせると、何とか帰ってもらえるよう、説得を続けている。


「『いわみ』のお姉さんに?合わせてって言われても、どのお姉さんかなぁ?」


いわみ石見のおねえさん・・・」


 海里は、石見の事を指して言っているのだが、陸警隊員は、護衛艦“いわみ”の乗員の誰かだと勘違いしている。


「・・・んー困っちゃったなぁ?良いかな、お嬢ちゃん、よぉく聞いてくれるかな?ここはね、特別な許可の・・・あ、えっと、偉い人から『入って良いですよぉ』って書いてくれた、紙とかカードとかがないとね、入っちゃ駄目な所なんだよ?幼稚園でも、勝手に入っちゃダメな所があるの、知ってるよね?ここは、そういう所と同じなんだよ?分かってもらえるかな?ね?」


 子供が1人で基地に訪れるという事に対して初めてなのか、子育て経験が無さそうに見える「おじさん」と呼ばれた、と言っても20代後半位の隊員が、困り果てているのは誰が見ても、間違いようがない状態である。


「でも!きのう、はいれたよ!?パパがのってる『とさ』もみれたよ!?なんでダメなの!?」


「“とさ”乗員のご家族かぁ・・・それにしても困ったなぁ・・・。えぇっとね、いい?ちゃんとお兄さんの話、聞いてもらえるかな?昨日はね?艦艇公開って言って、総監が・・・えっと・・・地方総監って言う、ここのいっちばん偉い人がね、『普通の人も良いですよぉ』って言ってくれたから、見られたんだよ?」


「パパのほうがえらいもん!いちばんえらいもん!!」


「いや、えっと・・・(階級の事、説明しても分かるかなぁ?・・・困ったなぁ・・・)・・・お嬢ちゃんのお名前、教えてくれるかな?『いわみ』のお姉さん達に、お嬢ちゃんの事を知ってたら、ここに来てもらうようにするから、ね?」


「ヤダ!パパもきちゃうもん!パパ、わたしのいうこと、ぜんっぜん、しんじてくれないで、おこってたもん!おねえさんにあって、パパにあってもらって、パパにしんじてもらうんだもん!!おじさん!あわせて!?」


 いつの間にか海里の両頬に、涙が筋のようになって流れ落ちている。


「困っちゃったなぁ・・・。仕方ない、”とさ”に連絡取ってご家族に連絡をとってもらうしか・・・」


 と、詰め所に陸警隊員が顔を向けた時である。


「石見3佐!やっぱり海里ちゃんです!早く!急いで下さい!」


 前を行く3種夏服でスラックス姿の女性自衛官に急かされるようについて来る、もう一人の自衛官で紺色の作業服に部隊識別帽スコードロンキャップを被る石見が、海里の目に映る。

 若い陸警隊員が思わずそちらに注意を向けると、その脇を抜けてカイリも石見に向かって行ってしまう。


「あ、お嬢ちゃん!ダメだって!戻って!」


 手を伸ばそうとする陸警隊員。

 そこに海里と入れ代わりに、先を走っていた女性自衛官が立ち止まって挙手敬礼し、話を始める。


「おねえさ~ん!あいたかったよー!」


 一方の海里は、よほど嬉しかったのか、石見に抱きつくと、先程より大粒の涙を激しく零している。

 石見はしゃがんで左腕を海里の背中に回し、右手で海里の頭を撫でる。

 海里は石見の肩に顔を埋めると、泣きじゃくりながら、何かを言おうとしている。

 しかし、激しく泣いているため、所々の単語らしき言葉しか聞き取れない。


「どうしたの?こんな朝早く?彼女から海里ちゃんが門の所にいるって聞いて、ビックリしちゃったよ?」


「えっと・・・ひっく・・・パパがね・・・えっぐ・・・おねえさんをね・・・」


 石見は息を整えるように一息着き、話を聞きながら、海里の頬をハンカチで拭いていると、女性自衛官に促されて3人で門の外側に移動した。


「石見3佐?これって十分すぎる位、騒ぎになってますよね?陸警隊のほうにお願いして、長浦2佐のお宅に連絡入れてもらいました。奥さんと一緒に迎えに来るそうです。警察に連絡入れる直前だったそうですよ?」


 『ジトー』という表現が似合いそうな目で、石見を睨む女性自衛官。

 睨まれている石見は、やや申し訳無さそうに苦笑いすると、跪いて海里と向き合う。


「いわみのおねえさん、こっちのおねえさんは、いわみのおねえさんといっしょにはたらいてるの?」


「ううん。別々の艦に乗ってるの。こっちのお姉さん、海里ちゃんのお父さんと、今、一緒に働いてる“土佐とさ”って言うのよ、ね?土佐3佐?」


 いたずらっぽく笑みを浮かべながら、土佐と呼んだ自衛官を見上げる石見。

 それに対して、呼ばれた土佐は明らかに狼狽える。


「なっ!やめて下さい!私まで巻き込まないで下さい!石見3佐!」


 即座に非難する土佐だったが、石見は柳に風のように何事もなく振る舞う。


「まぁ、良いじゃないの?乗り掛かった“ふね”なのよ?乗っちゃいましょう?ね、土佐3佐?」


「・・・はぁ・・・、了解したくはありませんが、“ふね”には、無理矢理にですが、乗せられてしまいました。諦めるしかないですね。」


 土佐は姿勢を正して、自衛官の基本である『不動の姿勢』を海里に正対してからとる。


「自己紹介しないとですね。初めまして、長浦海里さん。私は『とさ』に乗艦しています、“土佐”と申します。よろしくお願いします。」


 姿勢よく挙手敬礼を決める土佐に、海里も帽子を被っていないが、思わず挙手の敬礼を返す。


「えっとね、“とさ”のおねえさん?あたし、おねえさんのこと、なんどかみたよ?だから、はじめてだけど、はじめてじゃないね?いわみのおねえさんもだけど。」


「「えぇっ?」」


「おかのうえのこうえんからみえたよ?みなとにはいるときとか、でるときとか、みんなをみてるおしごとなの?」


 完全に動揺を押さえきれておらず、絶句してしまった2人。

 そこに海里は言葉を続ける。


「それとママってね、”とさ”のおねえさんと”いずも”のおねえさんに、”かが”のおねえさん、ぜんぜんにてないのに、わかんないんだって。”いわみ”のおねえさんと”あたご”のおねえさんもちがうのに、ね?」


 聞き終えると石見と土佐は、顔を見合わせてしまう。

 困ったような顔をしながら、海里に質問する石見。


「そ、そうだね?海里ちゃん?ところで、ちょっと聞きたいんだけどね?”いずも”のお姉さんってどんな人だったかな?髪型とか?覚えてるかな?」


「えっと・・・たしかね?ふゆにみたんだけどね?かみはうしろでしばってて、すっごくながかったきがするよ。きれいだなぁっておもったんだ!」


 一旦区切った海里は、ハッとした表情をする。何かを思い出したようだ。


「そうそう!”かが”のおねえさん、すっごくかっこいいかんじだったよ!かみはみじかくて、でも”とさ”のおねえさんより、ながかったきがするよ?」


「そっか、”かが”のお姉さんも覚えてたんだ?後で出雲1佐と加賀2佐に、海里ちゃんが誉めてたって伝えとくね?」


 しばし黙っていた土佐と石見は小声でしゃべり始める。

 海里は訳も分からず、不思議そうに2人を見る。


『確かに・・・見えてますよね、石見3佐?入出港時は皆は、見られないように注意を払っているはずです。こちらから見せるようにしない限りで見られる事は、極めて希ですがあります。ですが、彼女はそれに関係なく見えて・・・、いえ“認識”しているのではないでしょうか?』


『そうじゃなければ、偶然かもしれないけど・・・、二人を偶然でここまで的確に当てるのは無理・・・よね?少なくとも。これ、何かの能力なのかしら?』


 小声で話し合う二人の3佐。終わったのか、お互いにうなづくと、石見が海里に改めて向き合う。


「ごめんなさいね、ちょっと土佐3佐とお話しちゃってて。それでね、海里ちゃん?ビックリさせちゃうかもしれないけど、お姉さん達、“艦魂かんこん”って言って、えっと・・・たましいって分かる・・・かな?」


 そうに石見に聞かれた海里は、小首を傾げている。


「わかんな~い?」


「そっかぁ・・・、じゃあ、”分身”なら、わかるかな?」


「ぶんしん?にんじゃの”ぶんしんのじゅつ”とおなじなの?」


「ちょっと違うんだよ?うんとね、ふねの命の塊みたいなものなの、私達。」


 護衛艦『いわみ』の停泊している方を指さす石見。


「かたまり?へぇおねえさんたち、ふねのいのちのかたまりなんだ?」


「そうなの。でね?普段の私達が見える人ってね、スッゴく少ないの。多分、長浦2佐・・・あなたのお父さんも私達が見えないと思うの。」


「でもさっきのおにいさんは、みえてたんじゃないの?」


 首を傾げた海里は、石見に質問する


「うん、見えるようにも出来なくはないの。艦が近くないと使えない力なんだけど、すっごく疲れるの。だから外ではなかなか使えないの。ちなみに今は使ってないんだよ。」


「そうなんだ。じゃあ、きのうママもみえたのっておんなじ?」


「同じだよ。あれは艦の直ぐ側だったからね。」


「へぇ~!すごいんだね!」


 海里はよく分かっていなさそうだが、石見は続ける。


「私達“艦魂”はね、わたしたちに乗った皆の、行って来ますしてからお帰りなさいって言うまで、一人もけがや病気をしませんようにっていう気持ちから生まれたんだよ?」


「みんなのきもち?わたしのも、はいってるの?」


 自分を指差す海里。石見も微笑んで、「入ってると思うよ?」と返答した。海里は満面の笑みを浮かべた。

 側にいる土佐も、海里の笑顔を見て思わず笑みをこぼす。


「それはそうと海里ちゃん、黙ってここに来たんだって?お父さんとお母さんが来たら、言わなきゃいけないこと、分かるよね?」


 表情を変えた石見は、海里にそう問いかける。


「ごめんなさい・・・だよね?」


 消え入りそうな小さな声で、俯きながら答える海里。


「良かった!分かってるわね、海里ちゃん?素直にお話すれば、お父さんとお母さんもちゃんと分かってくれるから。でも!いい?今度ここに来る時は、ちゃんとお父さんお母さんから、『来ても良いですよ』って、そういうの“許可”って言うんだけど、それを“ちゃんと”もらってから来るんだよ?皆が心配しちゃうからね?」


「うん、ちゃんと“きょか”もらってからくるね!」


「良い返事だよ。あ、でも基地の中は、お祭りとか艦艇公開以外に、海里ちゃんは入れないから気をつけてね?」


 人差し指を立て、注意を促す石見。


「わかった!そとから“おねえさんたち”ながめてる!でも、おまつりとかのときは、あいにくるね!」


「分かったわ。“お姉さん達”も、ここの”みんな”で待ってるから、また遊びに来てね?」


「うん!・・・あっそうだ!いわみのおねえさん!とさのおねえさん!あのね!」


 力強い声で、石見と土佐を交互に見る海里。


「ん?どうしたのかな?海里ちゃん?」


「パパとおんなじ、“ふくちょー”さんになれば、いつでもあえるよね?」


 カイリの突然の提案に目を丸くする2人。石見が口を開こうとすると、先に土佐が話しはじめた。


「海里ちゃん、“副長”じゃなくても、艦に乗れればいつでも会えます。私と一緒にお仕事できるか、までは配属の事なので分かりません。ですが、私は・・・長浦海里、あなたと、一緒に仕事を・・・したいと希望・・・します・・・」


 感極まったのか、声を詰まらせながら海里に自分の気持ちを伝えた土佐は、制帽でさり気なく目元隠した。しかし、土佐の行動とは裏腹に、海里の目には土佐の目元に光る粒が見えた気がするのであった。


「私もね、海里ちゃん・・・、私も一緒にお仕事したいなぁって思ってるよ?でもね、“私達”とお仕事するまで大変なんだよ?入隊する勉強とか、艦の勉強とか。一緒にお仕事するようになっても、大変よ?毎日厳しいよ?頑張れるかな?」


「うん!がんばる!」


 はっきりと返事し、大きく頷く海里に、くすりと笑うと続ける石見。


「じゃあ、カイリちゃんの嫌いなピーマン、食べられるようになれるかな?」


「えぇ~、ピーマンきらい!にがいもん!でも・・・なんでしってるの?」


「それは、防衛機密ね。簡単に言うとね、な・い・しょ、ってことよ?」


 人差し指を口元にあてウインクする石見。


「ないしょなの?でも、やっぱりピーマンたべたくない・・・」


 家や幼稚園での事を思い出したのか、俯いて足で軽く地面を蹴っている海里。


「あのね、よく聞いてくれるかな?“私達の仲間”には、私よりも小さな艦もあるの。でね、“体”がちっちゃいから、キッチンも小さいの。」


「そうなの?しらなかった!」


「そうなの。だから食べ物も、そんなに沢山は積めないの。それに、美味しい料理作ってくれる給養員さん・・・コックさんの事なんだけど、その人達にも失礼じゃないかな?海里ちゃんも、想像してごらん?自分とママが作ったカレー、パパに残されたら嫌でしょ?それとおんなじなんだよ?」


 石見の言葉に、びっくりした顔をする海里。


「えっ!カレー、ママとつくってるのもしってるんだ!それも“ぼーえーきみつ”なの?」


「そっ、“防衛機密”なの。ごめんなさいね?」


 土佐は石見の肩を軽く叩くと、「そろそろの様です」と小声で言いながら、右の人差し指で自分の腕時計を指し、時間切れだとジェスチャーし、先に行こうとする。


「海里ちゃん、そろそろお迎えが来るみたい。土佐3佐はそろそろ行かなきゃだから、ここで海里ちゃんとお別れね?」


「えっ!?あの、石見3佐?一緒に戻るのでは?」


 行きかけた土佐、驚きで立ち尽くす。石見は何を考えているんだと言わんばかりの表情になっている。


「だってこのままだと、カイリちゃん一人じゃ可哀想だし、私に会いに来てくれた以上、長浦2佐にも説明しなきゃね?」


「しかし・・・長浦2佐に会ってしまったら、またいろいろと問題が・・・」


「多分、大丈夫よ。ね、カイリちゃん?」


「パパならだいじょうぶだよ!おこられそうになったら、あたしがまもってあげるよ!」


 両手を広げ、土佐を見上げるカイリ。一瞬顔が綻んだ土佐は、石見の側の壁を背にして、“休め”の姿勢をとって辺りを見回し始めた。


「土佐3佐、どうしたの?急に?」


「石見3佐は、強いですが、自身の身辺に気を配るのが不得手の様ですので、私が警戒します。本来はDDの夕立2佐達に来てもらうか、私の所に来ているSHを飛ばしたい所ですが、それは無理ですから。それに・・・普段私は”護られる対象”です。たまには、イージス艦を“護る側”に回ってみたかったんですよ、石見3佐?」


 苦笑する石見は「ありがとう」と言うと、カイリに寄り添うのだった。


○某国沖40km 輸送艦”LST4004 いわしろ”内 ヒトヨンサンマルi《インディア》


 多国間合同演習のために、某国沖に停泊したばかりの”いわしろ”。

 この艦は”おおすみ型輸送艦”である、”くにさき”の2年後に建造された4番艦で、第1輸送隊に所属している。

 そんな”いわしろ”の艦内通路に2人の人影が見える。


「そう、そんなことがあったのね?」


「はい、あの後、父から思いっきり叱られまして、しばらく落ち込んでました。」


 2人の女性自衛官。うち1人の肩には、太線が一本の「3等海尉」の階級章を着用している。

 ネームプレートには、上段に『いわしろ 船務士 長浦』、中段に『NAGAURA』、下段に『CIC Officer JS IWASIRO』とある。

 もう一人は、太い線が上下2本と真中が細い線で1本。“3等海佐”のものである。


「それにしても、初めて声をかけられた時はビックリしたわよ!声かけられるの自体、初めてなのよ?」


「あの時は私もビックリしましたよ!いきなり『きゃぁ!』なんて大声で驚くんですから。」


「それはそうよ、私からしたら、『幽霊』が出たのかと思ったわよ!?灯火管制中に、後ろから声かけられたんだもの!気配は感じてたわよ?それに、私から声をかける事は、無くもないけど、まさか、そっちからかけられるなんて、考えたことも無かったもの。」


 右手で左腕をさする3佐。よほどビックリしたのだろう事が判る。


「艦魂って、“魂”ですよね?”幽霊”と同じじゃないんですか?」


 首を傾げ質問する海里。

 3佐は眉をつり上げ、怒りの表情でたじろぐ海里に詰め寄る。


「ぜんっぜん!ち・が・い・ま・す!一緒にしないでちょうだい!いい!?わかったかしら!?」


「も、申し訳ありません!“岩代”3佐!」


 反射的に頭を下げる海里の姿は見事に決まっている。謝罪慣れでもしているのだろうか。


「そこまで頭を下げなくても・・・。それより、土佐って一緒に来てるのよね?話した?」


「いえ、まだです。なかなか時間がとれなかったもので。」


「船務士は忙しいし、ましてこれから、副長目指してるんだものね?なら・・・“石見”には“土佐”から話してもらおうかな?」


「今から会いに行かれるんですか?他に会う機会、あると思いますよ?」


「だと・・・良いけど。でも、私達“輸送艦”はいつ海外派遣されたりとかあるか分からないから、伝言頼んでおく方が良いかもね?無線使うほどでもないし。それに土佐ちゃん、あの子の相棒なのよね。会う機会なら私よりあるのよ?」


「そうでしたね。」


「さて、そろそろミーティングじゃない?ポツポツ集まり始めてるのが“見える”わよ」


「え・・・見える?・・・あ、ピーマンの件て!」


「実は昔、石見から聞いた事あったのよ。けど、その件は、くれぐれも“ぼーえーきみつ”でお願いね、カイリの“お嬢ちゃん”?ああ、それと、今のうちに言っとくけど、お父さんの長浦にもよろしく言っておいてね?」


「“防衛機密”・・・ですか?了解しました。それから、お伝えしておきますが、父は先日、になることが決定したそうです。」


「あら!?そうだったのね?じゃあ、長浦元艦長には、伝言訂正で、『おめでとう』にしてくれる?」


「それも了解しました。土佐3佐に会うなら、私からも伝言をお願いいたします。『ピーマンは食べられるようになった』と。では失礼します。」


 海里は10度の敬礼をし、それを受けて岩代3佐も答礼した。


 海里を見送った岩代は、どこかに向かって歩き出す。


「この距離なら・・・余裕ね。さて、“土佐ちゃん”に、“お嬢ちゃん”の『ピーマン』の話でも、しに行こうかしら?」



 人気ひとけのなくなった艦内通路に、海上自衛官が戻ってきた。そしてその中に混じって陸上自衛官も見受けられる



 そして演習に向け、人の動きが活発になっていく



 まるで、そこにあった出来事をなかったことにするかのように

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