第4話

 宇宙船ドーピング・ウーに死にゆく宇宙の人類の突撃があった。外郭に隙のできた宇宙船ドーピング・ウーは小破した。次々と敵兵がのりこんできて、乱戦となった。

 敵兵アーシスはいう。

「外なる宇宙より来たりし強き民よ。汝らの善悪を問う。罪なき宇宙を食らうは極悪であろう。汝ら、仲間を拷問し、首をはねるのを見たり。汝ら極悪なり。死ね。血を見せよ」

 ドーピング・ウーの民が吠える。

「あまたの宇宙を食らい集めた『財宝わきいずる泉』は我らが得たり。実力競争に負けた弱き宇宙は滅びよ」

 お互いに惨殺があった。

 混乱する戦場で、族長カノウがジャラテクをなだめていった。

「兄の死もメキの死も幻覚だ。この船は沈む。ジャラテク。許してやる。お前も逃げろ」

 そこに、死にゆく宇宙の特攻兵アーシスが来た。

「まずい。両軍とも全滅するかもしれん。手を組みたい。実は我々も宇宙を越える方法を開発している。その方法で宇宙ワープして、食性宇宙へ行こう」

 一瞬、一瞬、何が起こったかわからない戦場で、それに同意したのは、族長カノウ、ジャラテク、生きていたメキ。

 特攻兵アーシスが宇宙ワープの方法を説明した。

「物質は宇宙を越える過程ですべて滅びる。だから、心だけを別の宇宙に投影する。感情をひとつ選べ。そのひとつの感情に精神と肉体の情報すべてを圧縮して送る。心も宇宙を越える過程でほとんど滅ぶがひとつぐらいは届く」

 特攻兵アーシスの説明を三人はほとんど理解できなかった。だが、とどまっている暇はなかった。四人とも感情をひとつ選ばなければならなかった。

 宇宙の中でただ一人、もっともつまらない性格をしているかもしれないおれは、仲間に見捨てられ、メキに嫌われ、たった一人孤独で、生きていく価値を奪われ、メキを守ってやることもできず、もう自分が情けなさすぎて何も考えられない。何の希望もない。こんな異人の劣化科学で宇宙ワープできるわけない。

「絶望だ。おれは絶望を選ぶ」

 ジャラテクがいった。

 メキはジャラテクが絶望を選んだことにちょっとびっくりした。メキが選ぼうとした感情の第一感は殺意だった。だけど、やめた。なんか、優しくなれた気分になったのだ。冷静に考えれば、メキが選ぼうとしたのは信念だった。だが、もう死ぬのだろう。『財宝わきいずる泉』を探し出して、わたしは幸せになれるだろうか。

「恋」

 メキはいった。顔を真っ赤にしていた。メキが選んだ感情は恋だった。

 族長カノウは自信をもって、

「勇気」

 を選んだ。

 そのことばに満足して、特攻兵アーシスは

「献身」

 を選んだ。

 特攻兵アーシスの機械で、四人は食性宇宙に宇宙ワープした。

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