第25話 齟齬(そご)


○横須賀地方総監部 逸見へみ桟橋 護衛艦するが飛行甲板


 見事に晴れ渡った横須賀では日本側の四谷坂防衛大臣達が、ある国側の首相達と共に陸自中央即応集団中即団第1ヘリコプター団特別輸送ヘリコプター隊所属機である要人輸送用ヘリコプター“スーパーピューマEC-225LP”に乗って来て、H1に着桟している護衛艦“するが”艦尾の第5スポットと第4スポットの順に着艦した。

 このスーパーピューマであるが、この機体そのものは海上保安庁や東京消防庁の他に民間ヘリコプター会社でも導入されている。

 陸自では、スーパーピューマをシュペルピューマの後継機として3機導入し、木更津駐屯地に所在する特別輸送ヘリコプター隊で運用と管理をしている。

 そんなスーパーピューマが着艦した護衛艦“するが”の艦橋の近くには、外務省や防衛省に海自の広報、それに加えて国内外マスコミの一眼レフやビデオのカメラが、ある国の首相と四谷坂大臣達が降りてくる所を撮影していた。

 終始和やかな雰囲気で、横須賀地方総監、護衛隊群々司令、護衛艦“するが”艦長達と握手を終えると、艦長の先導で艦首の第1エレベータから格納庫へと降りていった。

 飛行甲板に残されたスーパーピューマの機内を見ると、操縦席にそれぞれ座る機長と副機長に、キャビン側から話かける女の子の姿がある。

 この子の服装はWACの第1種夏服でボトムはスラックスである。

「機長、お疲れ様です。」

 停止時のチェックリストを確認している2人に声をかけた女の子は、1度後ろを振り返ってキャビンを見渡してから、またコックピットの方を向く。

「お疲れ様、サラちゃん。君も疲れてるんじゃないのかい?」

 やや間を開けてから、チェックリスト確認を終えた機長は右手を軽く上げてると女の子に返答する。

「機長、そろそろ名前着けてあげた方がいいんじゃないですか?いつまでもニックネームだけっていうのも・・・」

 副機長は横を向いて機長にそうに言うのだが、機長は特に気にする様子がない。

「そうか?木更津所属だし、似合ってるんじゃないか?整備も全員そう呼んでるし、本人も気にいってるって言ってるし、問題ないだろ。」

 そう言って副機長がサラの方を見ると笑顔を見せていて、彼は少し呆れるような表情をするも彼女の笑顔につられて、微笑ましそうに笑顔を浮かべる。

 スーパーピューマの子供が出現したのは東富士演習場や空自の政府専用機等で起きた異変と同日ではあったが、たまたまこの日は要人輸送や訓練飛行等が予定されていない日であったため、そこまで大騒ぎにはなっていなかった。

「そういえば、サラちゃんは飛行中、どこに隠れていたんだい?」

 機長は何気なく思った事を質問すると、サラは困った表情で腕組みをする。

 うんうんと唸りながら顔をゆっくり上下させると、腕組みをほどき俯いてしまう。

「えっと、隠れたいって思ったら隠れられるんですけど、どこにって聞かれると、機内としか・・・。」

 申し訳なさそうに答えるサラに、機長は慌てて気にしないように言ったうえで謝った。

 こういった何気無い事の中からも、一連の異変には様々な疑問が山積している事が分かり、まだ自衛官達や子供達にも気付かない疑問点も、今後掘り起こされていくものと思われる。


 一方の格納庫では、海上自衛隊横須賀音楽隊の演奏で護衛艦“するが”隊員達による、ある国の首相に対しての栄誉礼が行われた。

 その後、首相達は多目的区画に移動して“するが”艦長達から、“いずも”型や“するが”の概要説明等が行われた。

 この首相は特に医療設備とその運用機能、ヘリコプターの運用能力、他艦への洋上補給能力に強く興味を引かれたようで、首相側の通訳を介して積極的に質問がされている。


○神奈川県横浜市中区 赤レンガパーク 十二時五十八分


 大塚と鮎沢は昨夜宿泊していたホテルをチェックアウトした後、別に予約した施設に荷物を預けてから辺りを散策し、近くにあった青いコンビニエンスストアで買った弁当を食べていた。

 大塚は焼き鯖弁当と梅のお握りにゴマドレッシングの海藻サラダとカップの味噌汁、鮎沢の方は豚生姜焼き弁当と鮭と昆布のお握りに青じそドレッシングのサラダであった。

「相変わらず、お互いに食べる速さは落ちないな。」

 弁当の容器を買ったときのビニール袋に片付けながら自嘲気味に呟くと、鮎沢も同じように自嘲気味に返答する。

「大塚さん、仕方ありませんよ。あの時は1分1秒も無駄には出来なかったですし、こびりついてしまった癖はそう簡単には治りませんよ。」

「燃費が悪いのも、変わってくれないから困るな。」

「・・・全くその通り、ですね。」

 鮎沢は立ち上がると、大塚のゴミを受け取り、捨てるついでにおやつとコーヒーも買ってくると言って離れていった。

 鮎沢の後ろ姿を見送ると、目の前に停泊している巡視艇PLH-31“しきしま”に視線を向ける。

(の“しきしま”さん、か。)

 大塚は徐に懐中時計を取り出すと、蓋をじっと見つめる。

(同型は、確か“あきつしま”・・・)

 大塚は懐中時計を仕舞うと、“しきしま”を見て笑みをこぼす。

 そして、“しきしま”の船尾側後方には消防艇FL-01“ひりゆう”の赤い放水銃が辛うじて見えている

(しかも“ひりゆうひりゅう”もいる。・・・そういえば、は呉にがいるのを知っているのだろうか?)

 大塚は海上保安資料館横浜館の出入り口に視線を向けると、目を瞑って首を軽く横に振る。

(これ以上、無駄な事を考えるのはよそう。過ぎた時間は戻らない・・・。私の知っている彼女達は、僅かに残っているだけだからな。それも・・・時間の問題だろうがな。)

 大塚が考えに耽っていると、グレーのスーツ姿の男性が彼女の左隣に腰をおろす。

 突然の事に大塚が左を向くと、三十代位の男性がコンビニで売られているロールケーキを一つと、缶コーヒーとフォークを三本ずつ袋から取り出し、コーヒーとフォークを一本ずつ大塚に差し出す。

 見知らぬ男性の行動に大塚が放心していると、男性はさらにコーヒーとフォークを突き出してくる。

「大塚幹枝なら受け取れよ。それから鮎沢恵利のバカはどこ行った?」

 初対面の人物からの怒りが込められているような物言いに、大塚が戸惑いつつ男性に同姓同名の人違いではないかと声をかけようとする。

「幹枝だけなら人違いって考えられるだろうが、恵利の名前も出してるんだから人違いしてる訳ないだろう?解れよ、それぐらいさぁ?」

 男性は自分と大塚の間に缶コーヒーを置き、その上にコンビニでもらったビニールに入ったフォークを置く。

 その隣に同じようにコーヒーとフォークを同じように置くと、男性は自分のコーヒーを開けて軽く煽ると、自分の左側に飲みかけのコーヒーを置き、ロールケーキのパッケージの蓋を取って袋を開けてフォークを取り出してロールケーキを食べだす。

「申し訳ないが貴方は何故、私達の名前を知っている?」

 大塚がそう切り出すと、男性は二口目のロールケーキを口に入れてコーヒーで流し込むようにしている。

 そこで男性は説明に入るのかと耳を傾けようとした大塚だったが、男性はそのまま食べ進めて一切れ目を食べきり、コーヒーを飲み干す。

 男性は少し落ち着いたように見えたが、眉間に皺を寄せると大塚へ向かって怒鳴りだす。

「そんなん聞いたからに決まってるだろうが!大体な!?あんた達が勝手するから、俺は北海道航空の16便に乗り遅れそうになったんだよ!ふざけんなよな!?」

 大塚が勢いに圧され慌てながら謝罪しようとすると、男性はフォークを彼女の目の前に突きつける。

 10cmほど離れているが、大塚は殺意が込められているように感じ、微動することも許されていないように思ってしまう。

「しかもだ!今日は横須賀にいるはずのお前らが横浜ここに来てるから!寝てる時に上からいきなり呼び出されてここへ来ることになったんだ!あんたの提案と行動のせいで、まともに寝てないんだよ!こうなったら上に無理矢理にでも有給認めさせてやる!!!」

 彼はフォークを下ろすことなく、大塚達や彼の上司らしき人物へ文句を言い続ける。

「くそっ!たかが紙切れ一枚、自分達で届けろってんだよ!下が下なら、上も上で頭がおかしいんだよ!!」

 大塚は気配を感じ、男性の背後に目だけを向けると鮎沢が忍び寄っているのが見える。

 その右手には鮎沢の普段も使っている万年筆が、逆手で握られている。

 視線だけで鮎沢を止めようとするが、大塚を守ろうとする気持ちが優先しているのか動きは止まらず、鮎沢は万年筆を持つ右手に左手を添えると、機をうかがいながら両腕を振り上げ、さらに静かに近付く。

「言っておくけどなぁ!?自衛隊の連中に、見つからないように政府専用機のガキ共をベッドに寝かせるの大変だったんだからな!?聞いてんのか!?鮎沢!!?」

 男性がそう言って咄嗟に振り向きながらフォークを鮎沢の腕に突きつけ、鮎沢が男性の肩を狙って万年筆を降り下ろそうとし、大塚が止めに入ろうと立ち上がるのがほぼ同時であった。

「良かったな、鮎沢。俺が持ってるのがナイフだったら、どうなってただろうなぁ?あぁ!?」

 男性がそう言い、鮎沢も思わずブラウスの左袖を見ると、鋭利な刃物で切られたように左肘の辺りが切られている。

鮎沢は驚愕の表情で数歩後退り、男性はそれを見て腕を降ろす。

「ど・・・、どこの世の中を探せば、こんな、ナイフのような切れ味のあるプラスチックのフォークが手に入るのか、この私にご教授願いたいです。護身用に一つ、持っておきたいので。」

 しかし、不思議な事にブラウスだけが見事に切られていて、腕には傷が一つもついていない。

 大塚は鮎沢の様子を見て小さく安堵のため息をついたが、男性に対する警戒だけは怠っていない。

「何者ですか、貴方は?」

 鮎沢は万年筆にキャップをはめると、ブラウスの胸ポケットに仕舞いながら大塚を守るように横に立ち、男性を睨み付ける。

「大丈夫か?」

 大塚が心配そうな声で鮎沢を見ると、視線はそのままで切られたブラウスを見せる。

「ブラウス以外は無事です。嫌な予感がしたので何も買わず、急いで出て来てしまいました。」

 大塚は少しだけ安堵して、ベンチに座りなおす。

 男性は二人の様子に青筋を立て始め、二切れ目のロールケーキへ、潰すような勢いでフォークを下まで突き刺す。

「『ご教授願いたいです』じゃねえよ!そこらのコンビニで自分でもらってこいよ!それから、お前のせいで俺は羽田の便に乗り遅れそうになったんだよ!後でこの借り、絶対に返せよ!?」

 男性はフォークを持ち上げると大きく口を開け、ロールケーキの半分を口に突っ込む。

 生クリームが口の周りに着いた事も気にせず、口に含んだ分を飲み込むと、フォークに残った半分も同じように食べる。

 咀嚼しながら自分の飲んでいた空の缶コーヒーを、ポケットに仕舞うや否や、直ぐ様手を離すことなく取り出す。

 大塚と鮎沢は、彼のとった行動の意味が分からずにただ黙って見ていると、彼は取り出した缶コーヒーの

 空だったはずの缶の中の空気が押し出される小さい音がして、密閉されていた事が音によって証明される。

 驚く二人を他所に男性は一気にコーヒーを飲み干すと、コンビニでもらったおしぼりで口の周りのクリームを拭う。

「甘いもん食うと落ち着くな・・・。そうだ、お前ら。人間達の経済も少しは回してやれるように、必要な時以外には俺の真似しないでちゃんと買えよ?上の連中は無頓着だから、多分言ってないだろうがな。」

 男性の言葉に対してそんな、手品のような芸当は出来る筈がないと二人が口を揃えると、何かを呟いて自分で納得したかのように小さく数回縦に首を振る。

 男性は徐にコンビニの袋へ、自分で飲んだ空き缶と使ったおしぼりを入れると、四切れ残ったロールケーキを大塚に手渡して立ち上がる。

「あと大塚。男物の制服着て空自に乗り込んでんじゃねえよ。恵利から3種とかいう女物の制服、渡されていたんじゃねえのか?何で自分から偽物だって主張してんだよ。バカじゃねえの?」

 男性に言われた大塚は、申し訳無さそうに視線を下に向けると謝罪を口にした。

 それを受け取った男性は黙ってネクタイを絞め直して身なりを整えると、フレームの無い細い眼鏡をかけて、ジャケットの内ポケットから紙を取り出し、自分の目の前で広げる。

「それから、貴女達の言う“蛸”からの伝言です。良く聞きなさい。『天候荒レル予報アリ。休暇取リ消ス。至急横須賀ヘ戻レ、以上。』、だそうです。ちなみには、この紙の文面以外は知らされていません。」

 男性は眼鏡の位置を人差し指でなおし、スラックスのポケットに片手を突っ込んで先を続ける。

わりいが、質問があるなら“蛸”にしてくれ。は知らん。」

 彼が書類を差し出すと大塚の代わりに鮎沢が受け取り、目を通している最中に男性はその場を立ち去っていった。

「何故あいつは、私達だけでしか話していない“蛸”を知っているんだ?」

 男性の背中を視線で追いながら、大塚は疑問をこぼす。

 鮎沢は紙に向けていた視線を、大塚に向けながら紙を差し出す。

「“蛸”も気になりますが、これを見てください。」

 大塚が受け取った紙には、男性が読み上げたプリンターで出力された文の他に、少し乱暴に手書きされた文字が加えられていた。

「鮎沢宛か?」

 大塚はその紙を鮎沢に返すと、ベンチに置かれたロールケーキに視線を向ける。

「あの男が書いたものでしょう。『弱い癖に強い酒飲むんじゃねえ!一杯をノンアルコールにしてやった意味がねえじゃねえか!』とは・・・。」

 大塚はフォークを袋から出すと、ロールケーキを一口分に切って口にした。

 鮎沢は男性が座っていた所に座ると、大塚からフォークを受け取り、同じようにしてロールケーキを口に運んだ。

「信用されていないようだな・・・」

「仕方無いです。自分達で撒いた事ですから。」

 二人は同じタイミングで缶コーヒーに手を伸ばすと、缶を開けて口をつける。

「確かにな。だが、制服の件だけは譲りたくはない。彼等の事を忘れそうで、それが怖いんだ。」

 大塚が二口目のコーヒーを飲もうとすると、鮎沢は缶をベンチに置く。

「仰る事も分かりますが、これから行くのは横須賀です。昨日も総監部へ行く前にも言いましたが、服装も徽章も違います。あの男の言う通りに、用意された服を着て下さい。急いでスラックスも用意しますので、万が一それまでに着る場合は、申し訳ありませんがスカートで我慢をお願いいたします。」

 フォークを手にとった鮎沢は、大塚と共に黙々とロールケーキを食べ進めた。


○横浜市中区山下町山下公園地先


 ロールケーキを食べ終えた大塚と鮎沢は、荷物の引き取りと宿泊のキャンセルのため、海上保安庁横浜海上防災基地から歩いて、山下公園内の某施設まで来ていた。

 二人は入場料を支払って券を受けとると、真っ直ぐ船首の一等食堂に向かって歩いていく。

 しかし、目当ての人物はそこでは見当たらなかったようで、今度は一つ上のフロアであるAデッキへと足早に向かっていく。

 到着すると【一等読書室】と書かれた案内パネルを見ながら、部屋へと入っていく。

 中には一人の女性が椅子に座って読書をしていたり、観光客らしき親子が棚を覗き込んだりしていて、大塚達が入ってくると、親子は隣の【一等社交室】へ出ていく。

 読書をしていた女性は本を静かに閉じて立ち上がると、鮎沢を見て一瞬驚くが、その事をおくびにも出さないようにして大塚達の入ってきた入り口に右手を向け、どこかへと移動する。

 大塚達が到着したのは、博物館のように展示されている【一等特別室】の隣に並んでいる【一等客室】のうち、公開されていない一等客室であった。

 彼女達は慎重に周囲を伺って人がいないのを確認すると、鮎沢は古めかしい鍵を取り出して解錠し、丁寧に扉を大きく開け大塚に入室を促す。

 案内していた女性は鮎沢が入室した後、自分が入る直前にもう一度周囲を伺いながら、扉を閉めて鍵をかける。

「休憩中に申し訳無かったな。」

 大塚は女性にそう話しかけると、その女性は笑顔を浮かべる。

「いえ本来の仕事が出来ずに、ずっと休憩しているようなものです。大塚様と鮎沢様の御相手を出来るのが、とても光栄でございます。」

 女性は会釈すると、大塚達へ椅子に座るように薦めるが断られる。

「実は、もう一つ謝らないといけない。急用で横須賀に戻らなければいけなくなってしまって、荷物を取りに来たんだ。」

 大塚が相手の女性と話をしている間に、鮎沢はこの部屋にあった自分達のスーツケースをどこからか取り出して、ジャケットを羽織っていた。

「そうですか。せっかく色々なお話を、大塚様達と出来ると楽しみにしていましたのに・・・。お仕事ですか?」

 小首をかしげて大塚に質問すると、大塚はそんなようなものだと答える。

 鮎沢は小さく頭を下げると、女性に鍵を返却する。

「現役の時にも、そういったお客様がいらっしゃいました。懐かしいです。」

 そう言いながら鍵を開けるとドアノブに左手をかけ、受け取った鍵を持ったままの右手で、大塚達を制して外の気配を伺っている。

 ドアノブをゆっくり回し数cm開けて目視すると、さらに開けて顔を出して周囲を見渡す。

 女性は扉を大きく開けると、無言のまま右手で外へ出るよう合図する。

 大塚と鮎沢が出ると、女性は受け取って持ったままだった古めかしい鍵で施錠して、二人の方へ姿勢を正して向く。

「大塚様、鮎沢様。このお部屋は、お二人の為に予約リザーブしておきます。お戻りになられましたら、いつでもわたくし『氷川丸』へ御用命下さいませ。」

 氷川丸がお辞儀をすると、大塚と鮎沢も返答するようにお辞儀して、それぞれにスーツケースを持って出口へと向かっていった。

 氷川丸は二人の姿が見えなくなると頭を上げ、自室へと戻ると大きな引き出しを開ける。

 中には大量の書類があり、五十音順に並べられているのか、【ああ~うえ】や【うお~おみ】と書かれた分類用の見出しが見えるのだが、かなりの年代が経っている書類が多いようで、全体的に黄ばんだように見える。

 古い書類群の中から、『鮎沢恵利』と書かれた新しいように見える書類と、『大塚幹枝』と書かれた同じく新しく見える書類を取り出して机の上に置く。

 それにはA4用紙程の大きさの紙に、A5用紙程の大きさの紙がクリップで留められている。

 上になっているA5用紙には、左上に【宿泊者名簿】と書かれている。

 この宿泊者名簿は宿帳とも呼ばれ、旅館業法によって宿泊施設には備え付けなければいけない事が規定されている。

 鮎沢の宿泊者名簿の宿泊予定欄に、今日の日付とその横に“キャンセル”と書き込んで仕舞うと、大塚の方の書類にも書き込もうとする。

 しかし、そこに書かれた日付に違和感を感じて、ペンを止める。

「あらっ?確か、お二人の予約は今日の受けだったような?」

 氷川丸は気になったのか、先程仕舞った鮎沢の書類をもう一度取り出す。

 宿泊者名簿の予約日を確認すると、鮎沢の方も前日の日付で宿泊予約を受け付けておりA4用紙の内容と照らし合わせる。

 ただ、A4用紙の方も宿泊者名簿と同内容のため、何かの間違いがあったのかと大塚の方も、もう一度両方を確認すると頭を傾げる。

 氷川丸が確認していたA4の書類『ゲストヒストリー』には、各宿泊客の予約日時や宿泊日、宿泊頻度、どの部屋を利用したかや食事の好み、さらに最近の客の場合にはアレルギーの有無なども書き込まれている。

 他のホテルや旅館等でも行われていて、最近ではコンピューターによるデータベース化が進み、宿泊客それぞれに細やかなサービスが出来るようにデータが利用されているが、氷川丸にはそういったものは備え付けられておらず、彼女は昔ながらの紙の書類で『ゲストヒストリー』を管理している。

 現役の頃は氷川丸が見える人間達も、彼女の『ゲストヒストリー』に加えられていたのだが、最近の宿泊客は横浜大さん橋を利用する船霊位であり、自衛艦艇や海保の船艇の艦魂達は近くに来ても、挨拶に立ち寄る程度になってしまっている。

「おかしいですね?ゲストヒストリーに書き込む時は、必ずカレンダーと時計で確認してから書き込むんですが・・・」

 だからこそ博物館船になった氷川丸は、現役の時以上に慎重に宿泊客のために、宿泊客の事を考えて、宿泊客一人一人に最上級の持て成しが出来るようにと、全ての面で慎重に作業をしていた。

「困りました。何故今日受けた宿泊予約が、ゲストヒストリーには昨日の日付で受け付けてるのでしょうか?大塚様と鮎沢様が昨日来られたんですよね・・・」

 所が今回、自分の行った作業に僅かな部分ではあるのだが問題が発生してしまい、僅かにと言えど納得がいかなくなってしまう

 氷川丸は腕を組んで、自分の記憶を昨日から思い出しているのだが、ふと違和感を感じて大塚と鮎沢のゲストヒストリーを手に取る。

「そう言えば・・・私はいつ、お二人のゲストヒストリーを書いたかしら?日付では昨日ですけど、その記憶は無いですし・・・。今日だとしたら、私は何時頃書いたのかしら・・・?それに、お客様の詮索はいけない事ですから聞けませんでしたが、鮎沢様のブラウスの左袖が、刃物で切ったように綺麗に切れていました。何かあったのでしょうか・・・。」

 それ以上の追及を諦めた氷川丸は、大塚のゲストヒストリーに今日の日付とキャンセルを書き込み、大塚と鮎沢のゲストヒストリーをそれぞれ元の位置に仕舞う。

 氷川丸は先程中断した本の続きを読むために、一等読書室へ戻ろうと部屋を出る。

 鍵の束をポケットの中から取り出し、一等特別室の物よりも古く見える鍵を選び出して自室に施錠すると、やや憂いの残る雰囲気のまま、船内通路をゆっくりと歩いていった。


○横須賀地方総監部 吉倉桟橋Y2 砕氷艦“しらせ” 1043i


 少し時間を戻して横須賀地方総監部を見てみると、大村に連絡を入れた西原は、一人で“しらせ”乗員に聴取を進めていた。

 一方で、マスコミを避けるため大村は総監部庁舎に立ち寄ってから、頃合いを見計らって吉倉桟橋の“しらせ”を目指した。

 桟橋に到着すると“しらせ”のラッタルを登り、大村は迎えに来た海曹の案内で中へと入っていく。

 大村が士官室に通されると、西原は霧島と白瀬を呼ぶように海曹に伝える。

「室長、何か分かりましたか?」

 西原は書類を纏めながら立ち上がると、大村に席を譲って1つ隣に席を移す。

「“するが”本人には会えなかったが、逸見とは別に、この騒ぎの起きる前に、“するが”の艦魂に会っていた人物にも会ってきたよ」

 西原は驚いた表情で大村を見ると、立ち上がりかける。

「落ち着け。民間人で名前は長谷恵一君。今年の6月、横浜大さん橋での“するが”艦艇公開で迷子になった時に出会ったそうだ。そして“するが”と、ある約束をしたそうだ。」

「室長、それはどんな・・・」

 西原が質問しようとすると、艦魂の霧島と白瀬が入室してきて、一旦話を中断する。

 調査室の2人は立ち上がり、西原から霧島と白瀬を紹介してもらった大村は2人に席に座ってもらうと、自分達も座る。

「初めまして。護衛艦“きりしま”艦魂の霧島です。よろしく。」

 3種夏服のスラックス姿で挨拶する霧島の肩には、海将補を表す肩章が着用されている。

「初めましてだねぇ、大村室長!僕はの白瀬って言うんだよねぇ!それで室長達は、僕にどんな事が聞きたいのかねぇ!?エンペラーペンギンなら、任せて欲しいんだよねぇ!アデリーペンギンもジェンツーペンギンも守備範囲だから何でも聞いて欲しいんだよねぇ!」

 霧島の右手側隣の白瀬は、同じ3種夏服のスカート姿で、彼女の肩章は着用されていない。

 大村は肩章の不着用も気にはなったのだが、好奇心たっぷりな物言いの白瀬のしゃべり方に覚えがあり、すぐにどこで聞いたかと記憶を掘り起こす方へと意識を向けた。

「どこかで?・・・どこだ?・・・確か・・・」

 急に考え込み始めた大村に、西原はどうしたのかと気にする様子を見せる。

『大村室長は白瀬と同じ性格なんだろうか?』

『そうなのかねぇ?そうだとして、僕と同じようにエンペラーを含めたペンギン達を大好きでいてくれたら、もっと嬉しいんだけどねぇ!?』

『それは流石に無いんじゃないか?そこまで興味を持っているのは、白瀬と生物学者ぐらいだろう?』

『霧島君は随分と冷たい事を言ってくれるねぇ・・・。』

『南極のペンギン話だけに、そのぐらい冷たい方が良いと思ったんだ。悪くないだろ?』

『霧島君、あのねぇ・・・』

 大村の様子に霧島と白瀬も無線で話し合っている中、大村は顔を上げると白瀬を睨むように見据える。

「思い出した。・・・『初めまして』、は無いだろう、白瀬?」

 大村の発言にたじろぐ白瀬を他所に、自分の胸ポケットを指差して白瀬に詰め寄る。

「酔っ払った俺と、1週間以上前にで捨ててきた物の話を夜のヴェルニー公園で、仲良くしたじゃあないかねぇ?白瀬?」

 大村が白瀬の口調を真似て問うと、霧島と西原は白瀬の方を見る。

 白瀬は慌てて3人の顔を見ると、両手を振って否定する

「ぼ、僕は大村室長とは初対面なんだよねぇ!西原副室長!霧島君!これは本当なんだよ!で捨ててきた物の話なんて、大村室長とはしていないんだよ!!それに、僕は1週間以上前の夜にヴェルニー公園なんて、本当に行っていないんだよ!」

 白瀬が狼狽し始め、霧島が落ち着かせていると、大村と西原が小声で話している。

「どういう事ですか?以前、煙草を御前崎に捨ててきたと仰っていたように伺ってましたが・・・。」

「ブラフだ。白瀬に対してのな。それから西原、余計な事は言うな。聞かれるかもしれないだろ?」

「もしかしてこの前、室長が会ったと騒いでいた人物が白瀬だったのですか?」

「声の高さや雰囲気、あの独特の喋り方。どれをとっても白瀬に間違いがない。筈だが・・・」

「だが、と言うことは何か気になる事でもあるのですか?」

「ああ。もう少し白瀬に聞いてみよう。」

 大村は落ち着いたであろう白瀬に、追撃を開始する。

「そう言えば、白瀬はあの日の昼間に、俺とが歩いているのを見たと言っていたが覚えているか?」

 大村の問いに、白瀬は即座に否定する。

「僕は本当に知らないんだよねぇ!僕はここで会ったのが初めてで、大村室長がどこかの副長と補給長と歩いている所なんて、本当に見ていないし、“観音崎”だか“犬吠埼いぬぼうさき”だなんて、本当に知らないんだよねぇ!」

 大村はもう少し追及しようと思ったのだが、白瀬の言い方に真実味を感じて追撃を止めようと思った時、西原から耳打ちを受ける。

「失礼します。“しらせ”乗員から、『白瀬は2人いる』と聞きました。もしかしたら、室長が会ったのはもう1人の白瀬ではないでしょうか?」

 西原の報告に驚きを隠せず、大村は耳打ちをし返す。

「何でそんな重要な話を先にしないんだよ!」

「私がする前に、勝手に室長が話を進めたのがいけないんじゃないですか?」

「そうだったな、すまない。他に何か俺に報告あるか?」

「いえ、まだ聴取を始めたばかりだったので、得られた情報はこのくらいです。」

 大村は大きくため息をつくと、白瀬にもう一人の『白瀬』に会えるか問う。

「会うのは良いんだけどねぇ・・・。僕の口調とは全然違うんだよねぇ。もし、大村室長が口調で僕だと断定しているのなら、徒労に終わると思うんだよねぇ。」

 白瀬の説明に霧島も同意したのだが、どうしても会わせてほしいと大村は食い下がる。

 白瀬は渋々了承すると、あまり長い時間面会は出来ないと大村に言い添えて、霧島の方を向く。

「霧島君。座ってるから大丈夫だと思うけど、万が一の時は、サポートしてくれるかねぇ?」

「いつでもどうぞ。白瀬、それから白瀬1尉」

 霧島の言葉に疑問が生じた大村と西原を他所に、白瀬は黒縁の眼鏡を霧島に預け、テーブルに突っ伏す。

 大村と西原が、何が始まったのか理解出来ないでいるままに、白瀬は体をゆっくりと自分の調子を確かめるように起こす。

「白瀬1尉、気分はどうだろう?大丈夫か?」

 霧島の問いかけに、白瀬は大丈夫と端的に答えて起立する。

「ご挨拶遅れました。私は横須賀地方隊直轄、“しらせ”艦魂の白瀬1等海尉です。大村室長、西原副室長。よろしくお願いいたします。」

 白瀬1尉が10度の敬礼をすると、霧島に座るように促され、それに応じて着席する。

 大村はあまりの雰囲気の変化に戸惑い、西原に肘でつつかれて我を取り戻す。

「概要は白瀬さんから聞いていたのと、拝見も少しさせていただいていましたので、先程された質問に私もお答えします。」

 大村に顔を向けると、『今回が初対面で、1週間以上前に会った事はない』、『観音崎で捨ててきた物の話もしていない』、『副長と補給長とで歩いている所も見ていない』と、端的に説明する。

 西原はどうしても気になった事があったようで、大村に断りを入れてから白瀬1尉に質問する。

「2人いると聞いて双子だと思いましたが、これはどういう事ですか?」

 西原は興味深い様子で前のめりになっていて、大村も同様であった。

「私にも、詳しい事は分かりません。以前は私が表で、“白瀬さん”は、裏というかサポート役だったんです。表には出ていなかったと思います。ですが、あの大震災から少し後に、ある事情で私の方が任務続行を出来なくなってしまって、“白瀬さん”に今まで舵取りしてもらっていたんです。」

 西原は大村に小声で話すと、白瀬に質問を続ける。

「白瀬1尉。では、貴女方は大震災が原因による二重人格になってしまった、という解釈でいいですか?」

 西原の言葉を聞いて、白瀬は少し瞑目する。

 そして目を開けると、西原の解釈について否定を始める。

「西原副室長。二重人格、または解離性同一性障害をお疑いでしたら、確かに似てはいるそうですが厳密に言うと違う、と言うのが“白瀬さん”の見解だそうです。“白瀬さん”と私が舞鶴にいた頃、つまり生まれた頃からお互いの存在自体はうっすらとですが認識していました。もっとも、私にとってその頃の“白瀬さん”は、アドバイスしてくれる“声の人”という認識でした。」

 西原がメモをとっていると、大村が困ったような顔で聞いてくる。

「西原?今の話、理解出来たか?」

小さく首を横に振ると、西原も困ったような顔で返答する。

「申し訳ありませんが、私も専門ではないので違いがよく分かりません。後で横病心療内科の医官に聞いてみます。もしスケジュールが間に合えば、南極に行く前に医官に会わせましょう。もしかすると、艦魂問題の糸口が見えるかもしれません。」

「そう・・・だな。検討しておくか。」

 大村もメモ帳を取り出すと白瀬と医官を会わせるスケジュールを検討する事を書き込み、閉じてテーブルの上に置く。

(白瀬の声や会話の癖は、ヴェルニー公園で会った女と同じだが、さっきの『観音崎』と『副長』のブラフにも引っ掛からなかった。もう1人の白瀬は別人と言っていい・・・。俺が会った女は、一体誰なんだ?俺達の知らない何かが、別にあるのか?)

 大村は、頭の中で今までの事をまとめていると、白瀬がテーブルへと倒れ込みそうになり、霧島が慌てて体を支えながらゆっくりとテーブルに伏せさせる。

 先程より少し長く伏していると、白瀬は今起きたかのように体を起こして腕を伸ばす。

「いやあ・・・今日はいつもよりしんどいねぇ。霧島君、支えてくれてありがとう。眼鏡を返してもらっても、良いかねぇ?」

 霧島から眼鏡を返してもらうと、すぐに着用して大村の方を向く。

「大村室長?僕の言った通り、徒労に終わってしまったのではないかねぇ?がっかりさせてしまったようで、申し訳ないねぇ。そうだ!ここらでコーヒーでも飲もうじゃあないかねぇ?」

「白瀬!?ちょっと待て!時間を見ろ!コーヒーを・・・」

 白瀬は霧島を宥めると、コーヒーを入れてくると言って士官室から出ていってしまう。

 霧島は士官室の閉じられた扉を見やると、大村達の方を向き頭を下げる。

「大村室長、西原副室長。お昼が近いのにすまない。全く白瀬ときたら・・・。砕氷艦の白瀬は問題ないんだが、観測船の方の白瀬は少し・・・もとへ、かなり自由に振る舞う。そして、それを束縛されるのを極端に嫌がる。もし気を悪くしたのなら、私が代わりに謝る。」

「いえ、気を悪くするだなんて。むしろ、白瀬のその性格のおかげで、艦魂にも個性があって我々と変わらないんだと委員会に報告出来るだけでも収穫がありました。」

 霧島と西原が話を進めていると、霧島は急に左耳に手を当て黙り込む。

 突然の事に戸惑いを見せる西原と、霧島の様子をそれとなく観察している大村の耳に、微かに霧島の小声が聞こえてくる。

「・・・ああ・・・分かった。でも、どこへ?・・・・・・観測隊員用の方へ連れていけば良いんだな?」

霧島は白瀬と話を無線でしていたらしく、白瀬と話を終えると立ち上がると士官室の扉を開ける。

「白瀬から港務隊の食事会の予定だったのを、2人を歓迎する食事会に変更すると連絡が来たよ。丁度良いことに元々こちらに来る予定だったYTが2人、欠席の連絡をしてきたそうだ。食事を無駄にするのも勿体無いらしいから、是非参加してほしいと言ってきている。」

 そう霧島に言われて、大村と西原は互いの顔を見合わせると頷きあい、観測隊員用の食堂へと向かうために士官室を出る。


○横須賀地方総監部 逸見桟橋H1 護衛艦“するが”操縦室兼応急指揮所 1310i


 四谷坂防衛大臣と、ある国の首相の訪問予定も無事に終えて陸自のスーパーピューマも無事に発艦し、安堵の空気が流れ日常がようやく戻り始めた頃、操縦室兼応急指揮所に戦闘指揮所・CICから連絡が入る。

『応急、CIC。突然照明が夜間用に切り替わった。原因不明。』

「CIC、応急。確認するが、スイッチは通常の照明が入ったままで灯火が切り替わったのか?」

『応急、CIC。その通り。スイッチは通常の照明が着いたまま、灯火が夜間用に切り替わっている。』

 CICからの要請により、応急指揮所より電機員が派遣され不具合を診ることになった。

 自衛艦艇の場合、通常の蛍光灯等の白色の照明だけでなく、夜間用の赤色灯も備えられていて、夜間等の灯火管制時には外に明るい白色光を漏らさず自艦の位置を把握されにくいようにするため、また、目を暗闇に素早く対応させるためにも赤色灯が用いられている。

 突然夜間用の赤色灯に切り替わり、最初は誰かが間違って切り替えたと思ったのだが、スイッチをいくら切り替えても夜間用か切れるかするだけで、昼間用の白色灯が点灯しなくなってしまったのである。

 派遣された電機員は移動中、白色灯用の配線に不具合が発生したのかなど、考えられる原因を想定しながら向かっていた。

 電機員がCICに到着すると、白色灯はつい先程点灯したと告げられ、念のためテスター等を用いて配線関係を点検し始める。

 しかし、特に問題を示す数値等は現れず、電機員は様子を見てもらうしかないといって、報告のためにCICから操縦室兼応急指揮所へ連絡を入れ、当直士官の指示で操縦室へと戻る事になった。

 不具合の原因が分からず、電機員は要因を考えながら艦内通路を歩いていくと、その背後を見送る作業衣姿の女性士官が虚空から姿を表す。

 女性士官は電機員が防水隔壁をくぐっていったのを確認するとCICの方へと振り向き、黙ったまま悲しそうな表情を浮かべて見つめるのであった。

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