第9話 待ち受けるはやはり闇
こうして新しく仲間に入ったスカイグレイだが、もちろん、彼について非常に気になる点があった。それは、黒の帝国のスパイかどうかということだ。
トマトレッドの三人の仲間のうち、三人が黒の帝国のスパイなのである。四人目も黒の帝国のスパイじゃないのかというのは、当然の疑いだった。
トマトレッドが、スカイグレイに、今までの仲間を紹介していく。トマトレッドにとっては、かけがえのない大切な旅仲間なのだ。黒の帝国のスパイだなんてことは、これっぽっちも思ってはいなかった。
「彼女はターコイズブルー。黒の帝国に呪いをかけられて、重病人なんだ」
トマトレッドが、スカイグレイにまずターコイズブルーを紹介する。ターコイズブルーは、げほっ、げほっ、と血を吐いて答える。
「呪いを。それは大変だな」
スカイグレイが心配そうに様子を伺う。
「死ね。あたし以外のやつはみんな死ねばいいわ」
ターコイズブルーがあまりふさわしくないことばで挨拶する。
「彼女は呪いをかけられて、他のことに気をかける余裕がないんだ。許してやって」
トマトレッドがとりなす。
「ああ、まあ、気にしないさ」
スカイグレイが答える。
ターコイズブルーの短い紹介が終わり、次に出てくるのは歴戦の猛者カーキーだ。
武器の手入れに余念のないその姿を見て、スカイグレイも気を引き締める。
「彼は、カーキー。敵には厳しいが、味方には優しいやつさ。よろしく頼むよ」
トマトレッドに紹介され、
「おっす」
とだけ、答えるカーキー。
「おっす」
と、スカイグレイは答えた。
勇士と勇士はことばが少なくても分かりあえるものだ。
「そして最後がクリームイエローだ。ちょっと危なっかしいけど、大切な仲間だから」
トマトレッドがそういってクリームイエローを紹介する。
「よろしく」
スカイグレイがクリームイエローに挨拶する。
「こちらこそ、よろしくだわあ。宇宙船に乗れるんだって。すごいねえ」
クリームイエローがいう。
表向きはこれで、トマトレッドの仲間四人と挨拶がすんだ感じだ。
トマトレッドはこれで一安心して、ターコイズブルーの看病にいってしまった。
しかし、カーキーやクリームイエローにとってはここからが本題だ。彼がはたして、トマトレッドの動向調査に潜入してきた捜査官なのか、できるだけ安全に確かめなければならない。
二人はスカイグレイをトマトレッドからできるだけ引き離して、ひとつの確認作業に入ることにした。
カーキーがそっと黒の皇帝直属部隊の勲章を見せる。それで一発でわかった。
「自分は、黒の帝国空軍特選隊の一員であります」
スカイグレイが直立不動して、敬礼する。
「これは、トマトレッドにだけは絶対に内緒だからな」
カーキーは新しい仲間スカイグレイに念を押して、うかつに喋らないように頼んだ。
またしても、新しくトマトレッドを助けるべく現われた人物は、黒の帝国の派遣したスパイだったのだ。トマトレッドは四人のスパイに監視されて、その行動が黒の帝国に筒抜けな状態だった。トマトレッドは人を信用しすぎる。
だが、いくら誰でも、自分の仲間全員が黒の帝国の派遣したスパイだったとは思わないだろう。トマトレッドが罠にはまるのも仕方ないといえる部分もあった。
トマトレッドは、スカイグレイの操縦する宇宙船に乗って、光り輝く星を目指して宇宙に旅立つところだった。
トマトレッドの目的地は、ただの闇雲な宇宙探査とは考えられなかった。トマトレッドは光の使者を知っている。なら、トマトレッドの行く宇宙とは、この黒の帝国の存在を揺るがしかねないくらい重要な場所である可能性があった。
トマトレッドはこう見えても秘密を守る性質だ。そのトマトレッドの隠していた秘密というものが、黒の帝国の存亡を賭けたほど重大なものである可能性があった。
トマトレッドには四人のスパイが張り付いて、その動向を逐一探っているところだった。
今、黒の帝国の存亡を賭けて、大きく歴史が動き始めるところだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます