第8話 空から来る刺客

 トマトレッドたちは宇宙に飛び立つべく、宇宙船発着所にまでやってきた。黒の帝国は、ブラックホールの周りをぐるぐる回っており、宇宙船の航行は慎重な制御が必要だった。ブラックホールの周りにあって、光りある者を皆殺しにしようと企むのが黒の帝国だった。光はブラックホールに吸い込まれていくため、光りある者が生息するのは非常に困難な場所だった。それでも、光りある者はまれに生まれてくるのであり、黒の帝国から逃げのびながらも、生きていくしか道はなかった。

 トマトレッドが目指しているのは、ブラックホールの外側を回る光り輝く恒星サイレントスターにたどり着くことだった。サイレントスターにたどり着けさえすれば、黒の帝国から抜け出して、光り輝く生活を送ることができる。

 しかし、ことはそう簡単ではない。サイレントスターはもう死んでしまった星なのだ。死んでしまった星をいくら探そうとしても見つかるわけがない。

 死んでしまった星、サイレントスターにいったいどうやったらたどり着くことができるのだろうか。トマトレッドに希望はあるのか。

 そこで関わってくるのが、光の使者だ。トマトレッドがかつて一度だけ会ったことのある人物で、光り輝く恒星サイレントスターを復活させることができるといわれていた。光の使者は、黒の帝国を打ち倒すべく活動をつづける秘密結社であり、黒の帝国が血眼になってその存在を追っていた。

 トマトレッドは、そのかつて一度だけ会った光の使者との約束を守って暮らしていた。光の使者のことを誰にも話さないこと。光の使者に出会ったら、応援すること。光の使者に渡された星の種を持っていること。

 トマトレッドは三つの約束をみんな守って暮らしていた。

 黒の帝国としては、そんなトマトレッドが非常に重要な人物なのだった。もしかしたら、三つの約束を守って暮らしているトマトレッドに光の使者がまた会いにくるかもしれないからだ。

 光の使者によるサイレントスターの復活を期待して、宇宙に飛び出すというのがトマトレッドの決意だった。

 宇宙船発着所で、黒の兵隊に見つかるわけにはいかないトマトレッド一行は、秘かに、光の者の宇宙船乗りがいないか、探したのだった。

 しかし、黒の兵隊に見つからずに宇宙船乗りと交渉できるわけもなく、また黒の兵隊たちと一戦戦うことになった。

 反エントロピーの絵筆で黒の兵隊を絵の具の三原色に戻していくトマトレッド。黒の兵隊は青になったり、緑になったりで、大騒ぎだ。そして、トマトレッドに潜入捜査をしている他の三人も、仕事だから、情け容赦なく黒の兵隊を痛めつけていくのだった。

 大騒ぎして、黒の兵隊をやっつけていると、それを聞きつけて様子を見に来た光の者がいた。新しい登場人物、スカイグレイだ。

 スカイグレイは、光の者として生まれながらも宇宙船乗りをやっているという変り種だった。

 トマトレッドたちが一通り、黒の兵隊をやっつけ終わると、スカイグレイの方から話しかけてきた。

「よう、宇宙船乗りをお探しのようだが」

 スカイグレイは気軽に話しかけてきた。

 まさに、渡りに船だ。

「そうなんだ。おれたちを宇宙に連れて行ってくれる仲間が必要だったんだ」

 トマトレッドが交渉をする。

「もし、なんだったら、おれの船に乗せてやってもいいけど。行き先は決まっているのか」

「行き先は、今はまだいえない。だが、ぜひ、乗せてもらいたいんだ」

「話に乗ろうじゃないか」

 スカイグレイは、気軽にトマトレッドの話に乗ってくれた。

 運よく宇宙船乗りをつかまえた四人の旅は、見かけ上は順調のように見えた。

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