第10話 どす黒い宇宙への旅
トマトレッド。光の者として生まれ、黒の帝国に逆らうボロクズの戦士だ。幼い頃、光の使者と出会い、黒の帝国を揺るがしかねない秘密を握る。他の四人を、黒の帝国と戦う仲間だと信じ、心の底から信用している。光の者が黒の帝国に寝返るなんて、想像することもできない。いってしまえば、ボンクラだが、光の者として黒の帝国と戦う心の意思の強さは本物。
ターコイズブルー。黒の皇帝と出会い、トマトレッドを黒の帝国に売り渡すことを約束した心の汚い女。呪いをかけられ重病であるため、トマトレッドに心配され看病される立場の女。トマトレッドを裏切る行為は、いってしまえば、泥沼。
カーキー。黒の帝国と戦うふりをして、トマトレッドに仲間だと思わせる心の汚いスパイ。トマトレッドに潜伏するスパイたちを実質的に管理して、運営する裏切り者の頂点。
クリームイエロー。光の者として生まれたにも関わらず、黒の帝国に魂を売り渡した女。トマトレッドにバレることなく、スパイ活動を実行している。バレていないという点では、立派な一人前のスパイ。
スカイグレイ。黒の帝国のスパイであるにも関わらず、トマトレッドに宇宙船を使わせることを約束した男。宇宙船を操縦できることからも、トマトレッド一行にいなくてはならない重要人物。
五人は、黒の帝国を敵にまわして、たった五人で戦う勇敢な戦士たちにみえた。傍から見ていれば、彼らは間違いなく、黒の帝国を敵にまわして、たった五人で戦う戦士だ。
黒の帝国の、光を嫌い、あらゆる光を抹殺すべく行動する活動原理の中で、光あるものとして生まれてきて、黒の帝国に逆らい生きていく五人は凄い人物たちだと思われた。
ブラックホールの周辺に存在する黒の帝国にとって、光を抹殺し、光無きものでこの世を埋めつくそうとする活動もわからないではなかった。
そんな黒の帝国に、自らの延命を条件に、トマトレッドの活動を報告するスパイとなった四人は、まともな常人が規範とすべき人物たちとは思えなかった。
トマトレッドが、スカイグレイに宇宙船の目的地を指示した。スカイグレイはそこに何があるのかも知らずに、目的地をいいなりで設定する。そして、五人は宇宙船で宇宙へと飛び立った。
まさか、宇宙にまでやってくるとは思っていなかったクリームイエローは、夢見心地で宇宙船の中の無重力状態を楽しんだ。
しかし、スカイグレイとカーキーは、トマトレッドの示した目的地に、いいようの知れない恐怖を感じ始めたのだった。
トマトレッドの指示した目的地は、死体の山といわれ、死者たちの流刑地といわれる場所だった。
なぜ、トマトレッドはそんな場所に行きたがるのか。
スカイグレイとカーキーは、もし、これが任務の目的地なのだとしたらと思うと、戦慄せざるをえなかったのだった。
悪魔の魂を売り渡し、心の底から黒の帝国のスパイとなったスカイグレイとカーキーの二人は、トマトレッドの指示した目的地が光の者たちの聖地である可能性を感じて、体が痙攣するぐらいの緊張感に包まれたのだった。
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