第5話 それが、探してた花?

「……あ、ごめん起こしちゃった」

 私は突っ伏していたテーブルから跳ね起きた。ツルツルピカピカのテーブル。LEDの照明器具。曇り一つない窓ガラス。隣に座ろうとしているのは、きょとんとした表情の好奇心旺盛な彼女。

「ここは、どこ?」

「もしかして、寝ぼけてる?図書室だよー」

 壁の電波時計は午後四時を指し示し、電子音で刻を告げていた。

「戻ってきた?」

「花言葉の本を取ってきただけだよ。探すのに手こずっちゃったけど。で、戻ってきたら寝てるし」

「そうじゃなくて、私が図書室にね」

「えーと?」

 彼女が首を傾げる。余計に混乱させてしまったようで、私は「なんでもない。寝ぼけてただけだから」と手で制した。

 夢、だったのかな。

「それが、探してた花?」

 彼女の指差した先には、傍らに置かれて開かれたままになっている図鑑の開かれたページ。

 見覚えのある、青い花の写真。

『忘れな草』

 花の匂いが薫った気がした。花なんて図書室のどこにもないのに。

 もしかしたら、鼻の奥に香りが残っていたのかもしれない。

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