第4話 彼の結論

 珈琲を一口すすると彼はカップを手に持ったまま、その見解を語った。

 「生きる意味、分からないと言っていたね」

 首肯する。

 「もしかしたら私も自分の生きる意味が分かっていないのかもしれない」

 でもね。と言って彼はつづける。

 「私はこの生き方に納得しているんだ。きっかけは与えられたテンプレートをなぞるところだったかもしれない。でもね、それはもうすっかり、私の、自分のものになっていると思うんだ。だから、私は人生に納得しているよ」


 「答えになっていませ――」

 ぼくの背後のドアがバタンと音を立てて開いた。

 「お金はいらないよ。君はもう帰ったほうがいい」

 彼の膝の上で丸くなっていた黒猫は開いたドアから出ていってしまった。


 彼も、だめだった。ぼくのことを理解してくれなかった。

 生きる意味が分からない気持ち、もやもやっとした気持ちは、ぼくしか知らない。伝えられない。伝わらない。


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