第6章 永遠の高嶺へ



 やがて僕らの行く手は道が途絶え、深い底なしのような崖が足元を暗く飲み込んでいた。


 ──────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────── 



 僕が辛いとき


 もっと辛かった皆が

 支えてくれるんだ、



 大丈夫


 ありがとう



 ≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡




 道は次第に険しく、崖に細く続く一本道は上り坂。徐々に足元の景色が遠ざかっていく。こんなところから転がり落ちたら大変なことになる。なるべく下は見ないように僕らは壁伝いに前だけを見た。できれば危険な道程は回り道してでも避けて通りたいところだけれど、王の道がそれを許さない。



「マーキス。大丈夫?」



 僕の後ろを付いてきているマーキスの息遣いがおかしい気がして、僕は声をかけた。返事がなくて不安になる。



「マーキス?」



 壁に張り付いたままゆっくりマーキスを振り返ると、マーキスは尋常じゃないくらい脂汗を掻いていた。



「具合が悪いの?」


「……いや。まだ大丈夫、」



 大丈夫なひとはそんなに青ざめてなんかいない。



「あと少し行けば、道が広くなるのでそこまで頑張ってください!」



 先頭からゾドットさんの声がした。



「あと少しだよ、マーキス」


「ああ、すまない」



 そう言っている間にもマーキスの額からポタポタと汗が落ちる。視点が定まっていない気がするし、こんな細い道では手を繋ぐこともかえって危ない。



「ちょっと待ってね」



 僕は袖口の魔法のタクトをまさぐって握る。確か呪文はこんなだった。



「フル・フエラ・アスタランテ・ボーサ!」



 小さく振るったタクトの先でマーキスの背中に狙いを付けて、僕は必死にその魔法を発動させた。





 翼を与えるフル・フエラ・アスタランテ・ボーサは、比較的上級魔法だ。普段の僕なら尻込みして多分上手くはいかないのがオチだけど、魔法を左右するのは想いの力。マーキスの背中には大きな翼がふわりと伸びた。なかなか上出来の翼だった。


 万が一マーキスが足を踏み外した時の保険だ。だけれど僕ら人間はどんなに立派な翼があっても自由に空は飛べないんだ。鳥が軽やかに羽ばたけるのは実際に身体が軽いからだよ。僕らとは造りが違う、骨は空洞で、折れやすい。空を飛ぶために大事なものを捨てたんだ。


 翼だけでは飛べない。



「さあ、行こう!」



 前に進む為にはマーキス自身が動かなければならない。



「ああ、」



 今にも気絶してしまいそうなマーキスを励まして、僕らは広い場所へと気持ちだけ急ぐ。


 僕なんかの魔法では、ちっとも君を救えない。もしかすると絶望とはその一つ一つを噛み締めることなのかもしれない。自分の無力さを知れば知るほど、僕は更なる高みを目指してしまう。諦めたくはないからだ。


 マーキスの見ている世界はどんな景色なんだろ。僕よりずっと高い場所にいて、どんな気持ちで僕を見ているんだろ。どうして、僕になりたいなんて言ったのだろ。



 このバックヤードで。僕は君の力になれるのかな。



(……違う。僕が力になるとか救うとか、そんな話じゃない。僕らは力を合わせるんだ。足りない力を振り絞って)



 マーキスには遠く及ばない僕の魔法でも。


 精一杯を尽くすこと。


 弱いからこそ、頑張らないといけないんだよ。




 ゾドットさんの言ったとおり、全員が休めるくらいの広さがある場所にたどり着いた。でもそこは行き止まりだった。


 崖に張り付いて進んできた僕らは、一先ずマーキスの容態を見たり強張った体をほぐしたりした。



 岩壁にもたれて座り込んだマーキスはぐったりとしている。その顔はまるで蝋人形のように色がない。



「よく頑張りましたね」



 ゾドットさんがマーキスの額の汗を軽くハンカチで押さえてから、目を見たり脈をとったりした。その間にもゾドットさんの地図を借りたクックバレンさんは辺りの地形を見ていた。


 水筒の水で口を潤して、マーキスはゾドットさんに言った。



「すみません……病気ではないので大丈夫です」



 マーキスの膝はガクガクと震えている。よくここまで無事に歩けたと思うほど。



「一口だけアルコールを飲んだ方がいいかもしれない。体温が凄く下がっている」


「でもそれはゾドットさんの大事なお酒じゃ……」


「怪我や病気のときのために持ってきたものです。今使わないでどうしますか」



 ゾドットさんがマーキスにお酒を渡した。


 瓶を開けると僕らこどもにはキツい臭いがする。



「どうやら次はあっちに飛び移らなきゃならないみたいだぜ」



 クックバレンさんは荷物からロープを用意しながら、少し離れた場所を指差した。



「あんなところに……!?」


「なるべくいらない荷物は捨てていけ、特にお前ら」



 クックバレンさんはミランさんとパシファムさんを見た。大きな鍋を背負ったままだと確かに危ないかもしれない。必ずしも調理が必要ではない今の僕らでは、いらない荷物と呼ばれても仕方ないのかな。でもそれはミランさんにとっては大事なもののはずで、思い出だってたくさんあるだろう。



「僕の本は。確かにいらない荷物になるんだろうな」



 パシファムさんは視線を落として呟いた。パシファムさんの本は伝記や物語だった気がする。



「それが嫌なら体重を落とすことだ」


「だが俺が代わりに運ぶことも出来る」



 デュラーさんは筋肉をほぐしながらクックバレンさんを見た。



「それなら問題ないだろう?」


「はっ。好きにしろよ。持ってったってこの先何の役にも立たねえだろうけどな」




 何度かクックバレンさんとデュラーさんが向こう側へ飛んで、ロープを張ったり荷物を運んだりした。


 クックバレンさんは大人の男の人にしては身長は低いほうだけど、さすが冒険家というだけあって見事な身のこなしだ。


 でもゾドットさんやパシファムさん、ミランさんや僕らでは、自力で向こう側へ飛び移るのは難しい気がした。



「僕の魔法で負担を減らします、マーキスたちは歌ってください」



 向こう岸に届けば、デュラーさんとクックバレンさんが引っ張りあげてくれる。



 あとはマーキスの容態が落ち着けば、といったところだ。



 作戦会議を終えて、僕らは休憩する。マーキスの隣に腰掛けると僕は荷物から魔法書を引っ張り出した。ローバー学長から貰った本だ。具合が悪いときや飛びたい時に使える魔法の項目をパラパラと捲る。


 モーガンさんに教えてもらった魔法は全部覚えているけど、ちょっと難しいものになると直ぐには出てこない。でもほんとに凄い魔法使いはスペルなんか間違えたって使いたい魔法が使えるらしい。要はその魔法を使いたいという気持ちの強さが大事なんだ。


 覚えておかなきゃいけないのはスペルよりその能力。どんな特性を持つ魔法かを理解すること。



「マーキスの体調不良は何が原因かな。原因がわかれば魔法でどうにか出来るかも……」



 僕がブツブツ呟いていると、膝を抱えて仮眠していたマーキスがゆっくりと瞼を持ち上げた。



「さっき。クックバレンが言っていただろ」


「何をだい?」


「余計な荷物は置いていけって」



 ポツリポツリとマーキスが力無い声で呟いた。



「でもそれはもうデュラーさんが運んでくれたよ」


「……いや、」



 マーキスの声に、僕は魔法書から視線を上げた。



「この先役に立たない荷物がまだある」



 マーキスにしては珍しい掻き消されそうな小さな声だった。体調が良くない時は何かと気弱になるだろうから、仕方ない。


 しばらく休んだからかマーキスの汗は止まっていた。でも表情は優れない。



「チェチェトの葉の香りを嗅ぐかい? 自律神経を調えてくれるって」



 ミランさんと採ったチェチェトの葉を一枚魔法書に挟んであったからマーキスに差し出した。



「優しい香りだ」


「うん。僕も小さな頃からお世話になってるよ」



 僕が魔法書を読んでいる間、隣でマーキスは一人で歌を歌っていた。途切れ途切れの歌だった。いつも堂々と見せていたマーキスとは別の、きっと素のままの彼。



「それは何の歌?」


「これは……魔法の歌じゃない。昔母さんが歌ってくれた。『何もできない自分はただ祈るだけ。願いがどうか叶いますように』」



「ただ祈るだけ、か。それでもきっと想いは魔法になるよ。ふんわりと心に積もってずっと残ると思うんだ」



 僕の何気ない相槌を聞いて、マーキスは呟いた。



「この歌を歌い続けていた母さんの気持ちも今ならわかる気がする……」



 そういえばマーキスのお母さんは見たことがない。バックヤードへ旅立つ時も見送りには来ていなかった。



 僕がマーキスと話を続けようとした時、クックバレンさんがデュラーさんと僕らの前に立った。



「そろそろ調子はどうだ、魔法使いさんよ」


「……はい」



 クックバレンさんに見下ろされ、マーキスは亡霊のような顔で頷いた。


 それでもマーキスが歌い出すと、パシファムさんとミランさんも歌う。



 心配そうにゾドットさんはマーキスを見ていたけれど、歌はちゃんと歌えていた。



「頼んだぜロイ。あとはお前さんにかかってる」


「よろしくな、」



 クックバレンさんとデュラーさんは僕の肩を叩いて向こう側へ飛んだ。


 向こうでどこかへしっかり繋いであるロープをクックバレンさんは自分の胴体に結んだ。崖っぷちに身を乗り出すデュラーさんを支える役らしい。僕らは最悪デュラーさんの手が届く所まで飛べばいい。


 ゾドットさんは僕の魔法がなくてもデュラーさんたちの手を借りて無事に渡れた。


 次はミランさんの番だ。



「力一杯デュラーさんに飛び込んでね」



 緊張しているミランさんを応援して僕はいつでも魔法が使えるようにタクトを構えた。


 マーキスとパシファムさんの歌がまるで別の世界の音のように重なる。僕の気持ちを高めている。



 ミランさんの背中にも翼を付けた。本人の意思で羽ばたける翼にミランさんは驚いていた。



「すごいわね、わたしきっと鳥のように上手く飛べるわね」



 そう信じて、ミランさんは飛んだ。成功するイメージを描けば魔法は強まる。多分歌の魔法も効いていたからミランさんも気が大きくなっていたんだろう。



「僕の体は重いから、鳥にはきっとなれないよ」



 向こう側で喜んでいるミランさんを見つめてパシファムさんが呟いた。



「じゃあパシファムさんには別の魔法にしましょう。脚の力があがる魔法とか」



 僕たちの間には深い谷の闇が広がっている。此方ではマーキスが、彼方ではミランさんが歌う。大丈夫、きっと跳べる。


 パシファムさんは助走をつけて大きな体で軽やかに跳ねた。デュラーさんやクックバレンさんの頭上を越えて、着地に失敗したのかごろごろと転がった。


 慌ててゾドットさんとミランさんが駆け寄りパシファムさんに怪我がないか確かめていた。


 パシファムさん本人は愉快そうに笑う。ちょっと魔法が強すぎたみたいだ。



「あのデカブツが頭の上をいった時は潰されて死ぬかと一瞬肝が冷えたぜ」


「まったくだ」



 デュラーさんはすっかりクックバレンさんと意気投合しているようだった。




『さあ次は僕らの番だ』



 僕が口を開くより早くに、ガシリと重く肩を掴まれた。


 その力に驚いて僕はギョッとした。



「――向こうへ行けるか」



 低い声に問われる。



「行くしかないよ」



 僕の応えに、だけど彼は小さく固唾を飲んだ。



「ここまで頑張ってきたが、僕はもう駄目だ。この先は、君たちだけで行ってほしい」



 意味がわからなかった。


 その真剣な眼差しが何を見てるかわからない。



「僕は     なんだ。だから、行けない」



 何を言われたのか、一瞬頭が凍りつく。キンと耳鳴りでもしたのか、肝心のところだけすっぽりと抜け落ちた。でもそんな気がしただけで僕は色んなことを走馬灯のように思い出した。


 王国祭のシンボルに、おじさんたちと乗っていたマーキス。立派な炎を吐いてきらびやかに演出をしていたけれど、一番低い場所にいた。


 あの時、僕の周りにいた群衆の声を、聞きたくなくて心から追い出した。


 ティンクベル家のシンボルは有名で、町の皆が楽しみにしている。人気ある噂はそこかしこ、去年はどうだったとか、おばさんたちはお喋りに花を咲かせた。



『上のお坊ちゃんたちの頃は大きなシンボルで空を飛んでみせてくれたけれど、下のお坊ちゃんになってからはお顔がわかるくらい近くて、それもいいわね』



 代々、派手で、その力を誇示するパフォーマンスを続けてきたティンクベル家は。でもマーキスの参加を機に、小さなシンボルになったという。それでも僕ら庶民のシンボルとは明らかに格が違う立派なものだった。


 真っ黒な嫉妬におおわれていたあの時の僕はまったく余裕がなくて、だから噂話なんか聞きたくなかった。聞こえていたのに。


 マーキスが、高い場所が嫌いだなんて。完全完璧なエリート魔法使い一族のマーキスに、そんな弱味があるなんて。


 きっと絶対に誰にも悟られてはいけなかったと思うんだ。それはマーキス自身の思いではなく、ティンクベル家の総意として。


 だから弱音を吐けない彼は、ずっと何倍も辛かったと思うんだ。


 本当は同じように苦しみや悲しみを抱えているのに、それを自由に吐き出すことが許されないのだから。



 ここまで無理をして頑張ってきたはずのマーキスが、こんなふうにリタイア宣言をすることは本来ありえない。


 ありえないはずが起きた。



 僕を本当の友達だと、認めているからだよね。


 本当に辛くて、これ以上進めないんだね。



 その思考にたどり着くまでのほんの数秒間。僕は呼吸を忘れていた。




 弱音を吐かない彼がついに白状した。


 とっくに限界など越えていただろう、ガチガチの指が僕の肩に食い込んでいる。



「……すまない」



 そこまで言われてやっと動き出した僕の頭は、真っ先に彼の腕を乱暴に払う。



「すまない、だって!? すまないじゃすまないよ! 君はこんな場所で一人残るっていうのか!」



 激昂する僕にマーキスは怯まない。青ざめた眼が僕を見ている。



「もう無理だ。迷惑にしかならない。この先役に立たない僕なんか置いて、君は進んでくれ」

「駄目だ! 絶 対 に 連 れ て い く !」



 力の限りに叫ぶ僕に彼はポツリ、ポツリといつものように現実を語った。



「君の力じゃ、二人は無理だ。二人分の体重を、あの距離を、その時間を――

 ……わかるだろ」



 今のマーキスでは魔法なんか使えないと暗に語る。



「わからない! 僕はこんなとこで死ぬわけにいかないし、君を死なせるわけにいかない。君がやれないなら僕がやるしかないだろ!」



 バカにされることには慣れたつもりでも、自分が無能のまま終わるのはウンザリだ。



「僕を信じろよ!」



 そして認めてほしい。


 僕も僕に自信を持てるように。




『“どんなに仲良くなったって、お前たちはこの先もずっと、互いを絶望させあう存在だ”』



 魔法の地図の言葉が思い出された。信頼し合う僕らが越えていかなきゃいけない壁ならいくつもある。君を絶望のドン底に突き落としても、僕は君を連れていく。



 向こう側で僕らの言い合いを聞いていたクックバレンさんが、痺れをきらしたのか口を開いた。



「諦めろマーキス。お前がどんなに恐がってもガキを一人きりで残していく奴はここにはいねえ」



 一番最初に切り捨てそうなクックバレンさんが言うのだから、きっとそうなんだろう。僕は安心した。



「でもロイには無理です。僕が行けないと思う以上、魔法は成功しない」



 どんなに高く見積もっても、成功はあり得ない。魔法をよく理解するマーキスなりの結論は勿論僕を傷付けた。



「ロイにまで危険が及ぶ」



 自分のせいで誰かに迷惑がかかることをよしとしないマーキスのそれは何より僕に迷惑だ。僕を守りたいから?




「ふざけるな! そんな女々しいマーキスなんか見たくもない!」



 激怒した僕は暴言を吐いた。



「僕に危険が及ぶのが嫌なら、僕の成功を願え! 自分の苦手に向き合えないなら、いっそ向き合わなくていい。君はただ僕にすべて委ねて大人しくしてろ!」



 すっかり頭に血が上っていたから、僕も随分乱暴でとんでもないことを言った。マーキスの目が真ん丸になって僕を見ていた。



「──七人、」



 クックバレンさんが渋々と口にした言葉はどこか苦くて、重たく響く。



「バックヤードのゴールには七人全員で行かなきゃ意味がねえ。マーキス。お前はそのうちの一人だ」



 まだ何かクックバレンさんだけが知っていることを、言おうとして言葉を探している。真っ暗な天を仰いで溜め息を吐き出した。



「本当は、俺はお前らなんかどうでもいいんだ。手伝うつもりなんかなかったんだ。このまま全員失敗して、一枚も地図を持ち帰ることが出来なくて、文字通り世界が滅んでも。もう俺には関係ない」



 急に何を言い出したんだろう。あんまり不吉で大きなことを言われたからだろうか、僕たちは戸惑った。



「どういう、意味ですか」



 マーキスが慎重にきいた。クックバレンさんは静かに視線をマーキスへ戻した。



「お前が欠けたまま進んでもこの先の扉は開かねえ。今回のチャレンジは失敗に終わる。誰か一人でもリタイアすれば世界は終わる。それがバックヤードに選ばれた七人が背負う現実だ」


「貴方は、何故そんなことを……!」



 クックバレンさんの後ろでゾドットさんが金切り声をあげた。



「そりゃそうだ。俺は【過去の参加者】だからよ。お前らの七人の一人じゃねえ」


「なんですって!?」



 愕然としたのはミランさんだけじゃない。でも咄嗟に声が出なかった。



 盲点。信じて疑わなかったことを呆気なく否定されて僕は混乱した。



「俺はクックバレン・Ⅰ・ウィーア。お前たちより百年以上前のアストリアから来た」



 それはたくさんの情報だった。クックバレンさんが僕らの七人の一人じゃないというだけでも十分に衝撃なのに、彼は、百年以上前の、アストリア王国から来た、僕と同じ【Ⅰ】の名を持つ者。


 魔法の地図は言っていた、【Ⅰ】を持つ者は特別だと。あれは僕だけじゃなくクックバレンさんも含めて言ったんだ。


 そしてその特別な彼が、今も一人バックヤードに残されている。




 バックヤードに取り残され、元の世界に戻れないひとが実際にいるだなんて、僕らはこれまで本気で考えただろうか。僕は必ず全員、帰るものだと信じていた。


 クックバレンさんが、最初に会った時からくたびれやさぐれていたのは、もうずっと前にバックヤードに訪れ、過去の七人と冒険し、何かに失敗し、帰還もできず、そしてたった一人……クックバレンさんだけが残されていた。



「いやだ……一緒に行こう、マーキス」



 僕の声は震えていた。



「一緒に帰ろう」



 誰か一人でも進めなくなれば、この先の扉は開かないらしい。僕らはずっと時間もないバックヤードで、食べる必要も眠る必要もないまま、死人のように生き続ける。次代の地図を持ち帰らないと、僕らの世界はどうなってしまう? もう次代の七人の英雄はバックヤードへ来ることも出来ない。



「僕が、マーキスを、連れていく。絶対に、フェアやミスチェンバーたちを悲しませちゃダメだ」



 僕は服の中に隠れている、フェアの前髪で作られたお守りの人形を握りしめた。マーキスくんをお願いとわざわざ僕に声をかけたミスチェンバー。帰ったら家族一緒に観光しようと約束した。女王陛下が頼りない僕らに託した。



「皆、僕らの帰りを待ってる」



「でもロイ。僕が向こうへ進めたとしても、クックバレンが七人の一人じゃないなら、最後の一人は誰だい。七人揃わなきゃ、その先へは行けないんだろ」



 マーキスのもっともな意見に僕は閉口した。もう一人、誰かがこのバックヤードにいるなら、僕らはその人を探さないといけない。



「もしかしたら過去の英雄が一人いるから、僕らは最初から六人しか選ばれなかったのかもしれないよ」



 パシファムさんが考えながら呟いた。クックバレンさんは大袈裟に溜め息をついてそんな彼を一蹴する。



「バーカ。だったらロイに【Ⅰ】の名を与えるかよ」


「貴方の役割が【Ⅵ】に変わったのかも知れません」



 ゾドットさんが言うとクックバレンさんは思いきり悪態をついて地面に唾を吐いた。でももう誰も一々それを咎める気にもならない。



「パシファムさんが【Ⅴ】です。ですから誰かが【Ⅵ】なのです」


「……待って? もしかしたら……」



 ハッと息を飲んだミランさんが振り返り、デュラーさんに同意を求める。



「バックヤードへ来る前に、国王陛下がおっしゃっていた言葉を覚えているかしら」



 それはウィングルドから来たミランさんとデュラーさんにしかわからない。



「私たちが数字の名前を授かった時。あの時国王陛下は『名もなき者に【Ⅵ】を授ける』っておっしゃったでしょう?」


「あの時は意味がわからなかったが……そうか、」



 信じがたいという様子で二人は確認し合う。



「じゃあ最後の一人はウィングルドの人ってこと?」


「でも、私たちの他には誰もいなかったわ。それに名もなき者だなんて……」



「《さ迷える魂を視よ、歯車を廻せ。未来はまだ生まれない》……ウィングルドの地図に書かれた詞は、七人が揃っていないことを吟ってるんじゃないかな」



 僕の思いつきの言葉で全員が黙ってしまった。もしもその通りだとしたら、名もなき【Ⅵ】の人の魂が辺りをさまよっているということだ。



「魂? 魂だって! 誰かこの中に霊媒師でもいるのかよ」


「……死者と交信する魔法は、黒魔法といわれ禁止されている」



 僕はそんな魔法があることすら知らなかった。流石はマーキス、物知りだ。



「でも、今は見えなくてもきっとここにいるよ。信じて進もう」



 僕はマーキスに、そして皆に訴えた。


 迷いや戸惑いはたくさんある。でも今解決出来ることから、ひとつずつクリアしていこう。



 やがて納得したようにデュラーさんが頷いた。



「そうだな。信じて進もう。協力してくれるかクックバレン」


「何だよ改めて……」



 クックバレンさんは居心地が悪そうに頭を掻いた。



「俺は失敗したが、ロイならどんな答えを出すのか――俺はそれを見届けてえ。だからお前らと一緒に行く。仕方ねえから手も貸すさ」



 がっちりとデュラーさんとクックバレンさんが手を組んだ。



「さあ。いつでも来い。ロイ。マーキス」




 僕はマーキスに手を差し出した。言葉なら何度も繰り返したから、もう何も言わない。


 残ることも許されない絶望を抱えたマーキスは、大人しく僕の手を掴んだ。マーキスの手は冷たい。



「いっそ意識を奪ってくれ。どう考えても成功するプランが僕には浮かばない。君はいつだって僕の予想を越えるから、これは無用な杞憂だ」



 早口でぶつぶつと独り言のような嘆き。僕は一度マーキスを抱き締めた。すると驚いたマーキスはすっかり黙ってしまう。



「僕の魔法が成功するよう。力を貸してね」



 失敗は許されない。


 足がすくんで立つのもやっとのマーキスでは、一歩を自ら踏み出すことも出来ない。僕が魔法で完全に運ばなきゃ。


 ほんの少しの距離なんだ。デュラーさんの力強い腕が届くまでのあの距離は。パシファムさんなら軽く飛び越えた。



 僕も怖いよ。でも絶対に成功させよう。



 マーキスは、今まで聞いたことのない歌を歌い出した。でも不思議とパシファムさんとミランさんが歌う【意気地無しをやっつける歌】に重なって、二つの曲が一つみたいに広がる。


 それがどんな魔法なのかは訊かなかった。僕はマーキスからそっと離れ、タクトを振るう。




 

 向かう道は続いているかマダ ココカラ ススメルカイ


 向かう先は見えているかマダ コレカラ ユケルノカイ


 

 それは真実かソレハ チカラ


 それを望むのかソレハ オモイ


 幻だと嗤うかいアキラメテハ イナイカ


 

 遥かな旅路に方角を見失しないゼツボウノフチニ ワレヲワスレ

 

 夜空に星を探すようにサイノウヲ ウラヤミ ミエナイ


 朝から夜にかけてアタリマエニ コノテニアル


 あの太陽を地図にジブンラシサヲ サァ


 

 大海原に漕ぎ出す腕がカベヲマエニ フサギコムバカリ

 

 一本では重いヤミヲ ノリコエテ


 同じ船を共に漕ぐミワタセバ ココニ


 たくさんの仲間をみようキット コタエガ アルダロウ





「フル・フエラ・アスタランテ・ボーサ!」




 大きな翼がマーキスを覆い尽くした。飛べないとマーキスが思う形。外界を遮断する繭のようで、少しでも彼の恐怖心が緩和されるならそれでいい。


 誰だって苦手はある。


 マーキスなら克服する手は尽くしただろう。それでも覆らなかったものを、僕らは誰も責めなかった。こわいものはこわい、それは仕方ないことだ。


 僕が手を貸すから、諦めたりしないでほしい。


 君が無理でも、僕らがいる。




 さて。


 自分の意志が介入出来ない物体や他人を操作するのは、力を与える魔法より更に一段上の高等魔法になる。


 マーキスだけを運ぶより、僕がマーキスを連れて飛ぶための魔法のほうが簡単な魔法で済む。でも、さっきマーキスが言ったように、二人分の重さを飛ぶには僕の魔法は弱い。基本的に自分の力は自分までしかカバーしない。


 繭になったマーキスを運ぶ。僕は目を閉じて高等魔法を唱えた。頭の中でイメージする。ふわりと浮き上がりゆっくり移動する様子を。


 デュラーさんの手の届く位置まで。



 ミランさんとパシファムさんの歌は、がんばれ、がんばれ、と祈っていた。



「もうちょっとだ……マーキス、手を伸ばせ!」



 デュラーさんの声に僕は目を開いた。マーキスが翼に包まれているから、デュラーさんはマーキスを掴めないんだ、と理解した瞬間。


 ふ、と一瞬にしてマーキスの動きが止まった。魔法が消失するより早く、僕は駆け出していた。マーキスが落ちる、奈落へ。その恐怖に駆られ、僕は崖を蹴った。真っ逆さまに落ちる景色は何も見えない。ただマーキスの青だけを追う。必死に掴んで抱き寄せた。僕より背が高くて僕より体重のあるマーキスを、僕が抱えて飛ぶことは難しい。うるさい。加えて落下運動のエネルギーが下へ加速するなか、上昇するには莫大なエネルギーが必要だ。うるさい。僕は見習い魔法使いで、まだ初等部に入学したての初心者で、うるさい、フェアのほうが魔法の才能があるんだ、パンもよくなついている、うるさいうるさいうるさい! 失敗する言い訳なんか一つもいらない、


 僕はマーキスを連れていく。


 何度だって言おう。最後に勝つのは想いの強さだ。



 頭の中にたくさんの声が聞こえた。上で叫んでる皆の声。小さい頃危ないことをした僕を叱ったおばあちゃんの声。マーキスくんをお願いといったミスチェンバー。フェアや母さんの笑い声。悲しい時味方になって励ましてくれた父さん。失敗談を笑って話すモーガンさん。最初は怖かったけど実は優しいベルランカの店主、いつだって堂々と落ち着いていたケイミラー先生、あったかい女王陛下、



 たくさんすぎてわからないくらい、これまでの人生で出会ったすべての人々が駆け抜けたあと、僕の口走る魔法。



「フル・フエラ・アスタランテ・ボーサ! イアガー! エアート!」



 僕の背中にどんな大きな翼を与えて一生懸命羽ばたいても、落下は止まらない。イアガーで空気を纏っても、肌を切り裂く風が消えただけだ。エアートは弱い魔法で、浮力のあった水中から飛び上がる程度の、か弱い抵抗に過ぎない。でも僕はもう思考力もないまま闇雲にかき集めた。



 いつかのマーキスの声が言った。



『黄色山トカゲの尻尾にはたくさんのアーチ元素が含まれていて、気化させると空気よりもずっと軽い気体になる』



 記憶が弾ける。




 僕が知りうるアーチ元素は黄色山トカゲの粉末と、リパの花、カイガン岩の滴。



『汗かき岩の滴は非常に扱いが難しいのですよ? 我々大人の魔法使いですら上手く採取出来ないものをどうして初等部の生徒に扱えるのです?』



 うるさい。



『君が集めたものは、人が吸うには純度が高すぎる。今回のように、血の気が引いて視界がブラックアウトしたり、酷ければ窒息死を招いたりする』



 知ってます。でも、



『アーチ元素は気化させると空気よりもずっと軽い気体になる』



 僕は、マーキスを連れていく。



 僕ら二人を覆う空気の膜のなかをアーチ元素で満たした。


 マーキスの口と鼻をローブで隠して、空気を吸わないように配慮した。



 知っている物質を召喚するなんて、どれくらい高等魔法なのか僕には皆目見当もつかないけれど。風船のように、ふわふわと上がる感覚に僕は微笑んだと思う。






 そのあと、僕の世界は暗転した。多分純度の高いとされるアーチ元素を吸い込んでしまったか、あるいはめちゃくちゃに魔法をたくさん使ってしまったせいで身体がどうにかなっただろう。何も見えず、何も聞こえず、すべての感覚が停止した。



 それでも不思議と意識はあるのか、僕はぼんやりと考えた。マーキスは無事に向こう岸へ渡れたろうか。僕ら二人を軽々と持ち上げるだけのたくさんのアーチ元素を集めたから、きっとデュラーさんたちのところまで上がって行けたよね。


 僕だって、やれば出来る。



“それでお前が死んだら意味はないだろ”



 死ぬ?


 僕は死んでしまったの?



“正確にはまだ死んではいない。心肺停止の危篤状態だ”



 それってどういう状態?



“心臓が止まって息をしていない。このまま数分もすればやがて死ぬ”



 僕はまだ死ねないよ。父さんや母さん、フェアも、おばあちゃんも……何よりマーキスが哀しむ。僕は、まだ、死ねない。絶対。



“そんなお前に朗報だ、ロイ。お前に命をくれる提供者がここにいる”



 誰? 命をくれるってどういうこと?



“世界に産まれることのない『名もなき者』に【Ⅵ】を与えた”



 ウィングルドのひとだね。



“ミランのこどもだ”



 ……ミランさんにこどもがいたの?



“いいや、いない。ミランは子を宿せない体だから、だから名もなき【Ⅵ】は産まれない”


“産まれない命をくれてやる、そいつはそう言っている”



 どうして僕に、たいせつな命をくれるの?



“お前が一番、たいせつに使ってくれることを知っているからだ”


“ありがたく受け取れ。そして生きろ”



“ロイ・ⅠⅥ・ミルカ”







 横たわる僕を皆が囲んでいた。


 僕の心臓はゾドットさんの掌の下でどくどくと震えている。呼吸を繰り返す僕の名前を皆が口々に叫ぶけれど返事をする余裕がない。ぐったりと重たい体が可笑しくて僕はにへらと笑う。ちゃんと生きてる。目の前で泣くマーキスやミランさんを見て何だか安心した。



「皆、無事に、渡れた?」


「お前が無事じゃなかったが、全員こうしてちゃんと渡れたぞ」



 クックバレンさんがうんざりした顔で答え、僕は笑った。



「心配、かけてごめんなさい。でもね、いい報せもあるんだ」



 デュラーさんの助けを借りて僕は体を起こした。


 泣いていたマーキスたちも瞬きして僕を見る。



「あのね、今ね、僕の中に【Ⅵ】がいるんだ。連れてきたよ。これで全員だよ」



 驚く皆は意味がわからないという表情を浮かべたけれど、デュラーさんは僕の頭を撫でて言った。



「お手柄だな」


「ううん。【Ⅵ】のひとが僕を助けてくれたんだ、だから僕の手柄じゃなくて……皆のおかげだよ」



【Ⅵ】のひとが命をくれたけど、きっとそれだけじゃなくて。ゾドットさんたちが一生懸命僕を救助してくれたんだよね。



「ありがとう」



 皆の顔を見回してから、僕はマーキスに言った。



「君が無事で良かった」


「……それは、僕の、台詞だっ」



 また。マーキスの顔がくしゃくしゃになる。チェンバーではけして見れなかっただろうマーキスの顔に僕は満足した。


 ミランさんがはだけていた僕の服を直してくれて、ちょっと嬉しかった。これはもしかしたら僕じゃなくて【Ⅵ】のひとの気持ちなのかもしれない。



 緊張が解けて皆が思い思いに休憩している。僕の傍にいるのはマーキスとミランさんだけ。僕は二人だけに聞こえる小さな声でそっと告げた。



「あのね、実はね」



 何て言ったらいいのかな、僕は言葉を探した。



「ミランさんは、僕のもうひとりのお母さんなんだ」


「?」



 不思議そうな顔をしてから、ミランさんは僕の頭を撫でた。


 さっきデュラーさんに撫でてもらったばかりの頭は、ミランさんの優しい手付きにすごく嬉しくなる。



「【Ⅵ】のひとがね、ミランさんのこどもなんだって」


「……え」



 顔色を変えたミランさんはしばらく何も言わず、僕の顔を見ていた。驚かしてしまったかもしれなくて、そんなわけないって否定されてしまうかもしれなくて、だから僕はどきどきした。



 やがてミランさんがぽつりと呟いた。



「私、赤ちゃんを産めない体だってお医者様に言われたの……だから、結婚だってしないで、母とふたりで……ずっと」



 視線は遠くを彷徨ってから、僕の上でまた定まる。



「私がこどもなんて欲しがったらいけない、って諦めて……だから……」



 僕ははにかんで笑った。



「僕でもいい?」



 ついに決壊して止まらないミランさんの涙を心配して、デュラーさんがやってきた。マーキスが「ロイが泣かしたんだ」と真顔で報告するから、ミランさんは吹き出した。



「いいのよ、これは嬉し泣きなんだから!」



 力一杯僕を抱き締めてくれて、頬擦りする。


 僕はちょっと照れ臭かったけど、ミランさんのやりたいようにやらせてあげた。きっと【Ⅵ】も、そうしたよね。



「そうしているとまるで親子だ」


「そうよ、ロイは私の子なの。……でもあんまり馴れ馴れしくしたら、ロイの本当のお母さまに怒られてしまうわね?」


「そんなことないよ、」



 僕の母さんなら、話せばわかってくれるだろうし、ミランさんや【Ⅵ】がいなかったら僕は助からなかっただろうから命の恩人だ。感謝こそしても怒ったりはしないさ。



「いいな、ロイは。」



 マーキスが言う。



「いつも家族に愛されている」



 僕が何か言うより先に、ミランさんはマーキスのことも抱き締めた。



「バックヤードにいる間は私が二人のお母さん」



 マーキスはびっくりしてミランさんを見上げた。



「いいでしょ?」


「……だけど、」



 言いかけたマーキスに僕は意地悪な笑顔を向ける。



「じゃあマーキスは僕の兄さんだ」


「え」



 マーキスはティンクベル家の末っ子だから、急に弟なんかが出来て動揺しているみたいだ。


 僕も兄さんなんかいなかったから、マーキスが兄さんだったら何だか嬉しい。



「おいおい。本当にママゴトを始めたのかよ」



 クックバレンさんがからかって笑うけど、出会った頃の感じの悪さは欠片もなかった。



「この先にどうやら、貴方が言ったように扉があるみたいですね」



 ゾドットさんは地図を見てからクックバレンさんを振り返る。



「楽しい旅もそろそろ終点だな」


「そっか。せっかく仲良くなったのに、もうすぐお別れなんだね」



 パシファムさんが読んでいた本を閉じた。



「うまくいけば、な」



 クックバレンさんは意味ありげに言ってから小さく笑った。



「ま、お前らなら大丈夫な気がするけどよ」


「何にせよこの先に最後の試練があるわけだな、……心して行こう」



 デュラーさんに頷いて僕はマーキスとミランさんの手を掴んだ。



「さあ、行こう。そして帰ろう」



 僕と【Ⅵ】が一つになって、クックバレンさんも併せて七人。全員で帰れたらいいな。


【Ⅰ】が持つ【特別】の意味を、僕はまだ知らない。





                         《第六章》完 





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る