《Blue notes》

《Blue notes》①



 それはある晴れた日のことだった。見慣れない舗装の施された綺麗な広い道の片隅に停めた手押し車に腰かけて、足をプラプラさせながら。一人のんびりと空を眺めていた。行き交う人々もまばら。田舎とは違う華やかな空気。騒がしくもなく穏やかでゆとりのあるどこか優雅な空気。空がまるで近くにあるみたいでワクワクした。


 ふと近くの店の扉が開く音と、そこから流れてきた不思議な臭い。視線を向けると一人の男の子が出てくるところだった。やっぱり都会の子だからか、きっちりした身なりが上品で田舎の子どもとは違う。つい珍しそうに眺めてしまったせいか、彼がこちらに気付いた。



「やぁ。すごい荷物だね」


「田舎から来たの。お父さんたちが買い出し中だから私は荷物の番をしているのよ」


「僕の父さんも店の店主と長話だ。待ち疲れてしまったよ。隣に座ってもいいかな?」



 私は嬉しくなって荷台にハンカチを広げ、彼の席を用意した。








「あそこにトンガリ屋根が見えるでしょう?」


「あれは魔法学院だよ」


「そう! 明日合格発表があるのよ。私ドキドキしちゃって」



 それは始まりの前。お兄ちゃんがチェンバー魔法学院に合格し私たち家族が越してくるよりも前。魔法ショップから出てきた男の子がお兄ちゃんと同じ学院に通うなんてまだ知らなかった頃。無邪気な私はすべてが嬉しくて仕方なかったの。


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