第1話

朝から晴れた。新学期を新しい気持ちで始まるには何の不足もなかった。急いで家を出た。はじめて登る学校への道、それは険しい山道のようだった。いや、実は前にジョン・スミスを探す為たまに登ったりしてたからはじめて来る道だとは言えなかったけど、とにかく北高って厳しいところにあるんだね。まったく、もう!疲れちゃうのよ!こんな場所に学校を建つと思ってたのっていったいどこの馬鹿なのかしら?イライラするわ。これから3年もこの道を登り続かなければならないなんて。周りを見るとほかのやつらの顔ももう絶望的だった。同じ制服を着ているんだしたぶんあたしと一緒の新入生だな。しかめ面してるんだし、ほぼあたしと似た気持ちであるはず。

'でもこんなもんで凹んじゃうあたしではないわ!'

そう、このくらいの難関があってこそナゾが転がり込んで来るべきだしね!不思議な何かを絶対に見つけ出すのよ!


北高の入学式は普通だった。ただ体育館で校長がつまんない説教するだけで、特別とか不思議とかはまったく関わってない。これじゃ普通すぎる学校って感じだ。やっぱ公立学校の限界かな?どっかは違わないかなと期待してたのに。

あたしは1年5組に割り当てされ、その教室の空気はちょっと静かだった。担任の先生が来るまではひそひそ話してる声がたまに聞こえるだけ。普通だな。何分かすぎて岡部とかいう体育の先生が来た。うちの担任だと言ったあの先生はハンドボールが好きみたいで、ずっとハンドボールの話ばかりして、クラスの反応が薄くさらに静かになったのを気付いた後でからやっと話をやめてくれた。がっかりだよ。くだらないしつまんない。

岡部はほかに何を話すか考えなかったようで、その時点からクラスの自己紹介を始めさせた。

"……!"

自己紹介!あたしは昨日の決心を思い出した。そして周りを見た。一番前に座った人から順に進んで紹介をし始めた。よろしくお願いしますとか、お目にかかれて嬉しいですとか、みんな普通のセリフしか言ってない。

'こんな普通さは…'

脱したかった。あたしの新しい始めがただの普通だけじゃいけない。

'特別な何かは……!'

そう、この学校にならきっと何かがあるのだとあたしは信じてるから。

'やるわ!'

やがてあたしの前のやつまで普通に自己紹介をして席に座った。普通なのよ。挨拶して拍手もらって… これは何かダメなの。

順番になったからあたしは立ち上がった。そして

"東中出身、涼宮ハルヒ!"

言い出した。

"ただの人間には興味ありません。この中に宇宙人、未来人、異世界人、超能力者がいたらあたしのところに来なさい!以上!"



言っちゃった。

"……。"

あたしは立ったそのまま反応を待ってた。そして帰ったのは… 予想通りの冷たい反応。ま、当然なのよね?

"……!"

あたしの前のやつが振り返ってこっちを変な目で見つめてる。あたしも同じように見つめてやった。どこを見てもただ普通の男子高校生だ。'これ、笑うとこ?'って思ってるようにあたしを見上げていた。

"ふん……。"

そうよ。どうせこんな反応だろうと分かってた。もしもここに宇宙人なんかがいたとして手放しで現れたりはしないでしょ?それに確実なのは…

'前席のこいつはないね。'

その後、あたしが席に座ってからも残り何人かが引き続いて紹介し、この時間が終わった。

'いいの。これでいい。'

まずあたしがだれなのかをこの学校内に告げるのが最優先だと考えたわ。そして不思議な存在を見つけ出すのよ。学校のどっかで隠れているのならその理由があるはず。でもあの存在達にあたしの意志を見せ付けられるなら彼らも気になってあたしを無視できなくなるでしょ?そして彼らはあたしの事を知る為に接近して来ると思うのよね!完璧な作戦だわ!

自己紹介の時間が終わってから岡部は新しい学校の生活の為に守るべき規則とかなどをいろいろ、担任らしい言葉だけを並べた後にあたし達を返してくれた。そうやって一日が終わった。


その後始めての金曜日だった。あたしは金曜日の髪型ー四つ編みをしていた。宇宙人との交信に役立つんじゃないかなっと考えていつからか始めた事だ。髪型って一種類の呪いに近い物、髪型を変えるのも一つの信号として働くかもしれないから。こういう規則だ。月曜日は編みなし、火曜日からは編みを増やして日曜日には六つ編みになる。色は月は黄色、火が赤、水は青で木は緑、金曜日は同じく金の色、土曜日は茶色、最後に日曜日には白色にする。各曜日のイメージってそういう物じゃないかな?

あたしは登校し席に座ってからほかにやることがなくて、ただ黒板と教卓をにらみ付けていた。でも意味のない行為ではない。もしクラスの連中の中に特別で突飛な存在がいたら今のあたしに警戒してるはず、だったら朝から教室の中を見回してたら相手が緊張してもっと隠れる可能性があるのだ。だから敢えて誰とも話さないし目も合わせないのだ。相手から近ついて来ない限りは。

ところで、あたしの前席のあいつが登校して座ったらあたしの方を見ながら話かけて来た。

"なあ。"

なんか不自然な笑みを交えてる。

"初っぱなの自己紹介のアレ、どの辺りまで本気だったんだ?"

これを聞いてわかったのは、こいつはただ話題を探していてまじめな会話をするつもりはないって事だった。

"初っぱなのアレってなに?"

"いや、だから、宇宙人がどうとか。"

やっぱり。こいつ、あたしのことをおもしろがってる。あたしをなめてる気もする。なんかむかつくんだけど。

"あんた、宇宙人なの?"

"ちがうけどさ…"

"ちがうけどなんなの?"

"…いや、なんもない……。"

"だったら話かけないで。時間の無駄だから。"

そこで会話が終了。あいつも断念したのかため息をつきながら首を前に戻した。

本当に時間の無駄なのよ。こんなやつの言葉に耳を済ませる余裕があったら校内を探索した方がいいんだよね。クラスの中から探すのは中断するわ。あたしを檻の中の動物みたいに考えてるのかしら?あたしは本気で真面目なのよ!本当の不思議なある存在と合いたいんだってば!ま、いいわ。昔からそうだったから。誰もあたしのこと本気で理解してくれないもの。


その後からは校内探索をはじめた。休み時間のたび学校のところどころを調べたのだ。

"ここもあやしい。"

怪しく見える場所は全部確認するつもりだった。屋上へ言ったら屋根の丸い部分が気になった。手が届かないからボールを投げてみた。もしかして宇宙人とかとの連絡を取る物ではないのかな?プールの中も怪しかった。じっと見つめてみた。もしかして溺れて死んだ子の霊魂みたいのが眠っているんじゃないのかな?

しかし、なかった。なにもかも。

校内を全部回った結果、北高はただ普通の高校でしかなかった。

…つまんない。学校も人たちもみんな普通。どうなってんの。あたしが判断を間違ってたのかな。すべてが不満なのであたいはずっとしかめた顔でいた。これじゃ中学の時と同じなのよ、もう。ああ、本当にないのかしら。不思議な何かは……。

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涼宮ハルヒの視点 @Gcham

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