童話 ダカチャンものがたり

yujiiji

第1話

ここはある池の中です。水草がいっぱいあっちこっちに生えています。

水草をよく見ると、何かが動いています。

メダカです、メダカの赤ちゃんの誕生です。

卵の中から、パチンパチンと弾かれるように水草の中でたくさん生まれています。

近くでお母さんがうれしそうに見つめています。

その赤ちゃん達と一緒にダカチャンも生まれました。

そのダカチャン達に、お母さんが大きな声で言いました。

「ここに集まりなさい」ダカチャン達はお母さんの所に集まりました。

「これからお母さんの言うことをよく聞きなさい。分かりましたか!」

「ハアイ」元気よくダカチャン達は返事をしました。

「水の中は危険がいっぱいだから、一人でうろうろしていると他の魚に食べられてしまいますよ。だからお母さんの言うことを良く聞きなさい、集まれと言ったらお母さんの所へ早く戻って来なさい、いいですね」

「ハアイ」

「さあ、これからみんなでお食事に行きましよう。絶対にお母さんの側から離れてはいけませんよ」

ダカチャン達は、お母さんの後について行きました。

「さあ着きましたよ。この水草に付いている藻を食べなさい」

みんなお腹かが空いていたので、おいしいね、おいしいねと楽しそうに

ワイワイガヤガヤお腹がいっぱいになるまで夢中で食べています。

「静かに食べなさい。誰かに見つかったら食べられてしまいますよ」

お母さんにみんな叱られました。

突然お母さんの大きな声がしました。

「みんな早く集まりなさい!」

ダカチャン達は、お母さんの所に集まりました。

「早く早くこの水草の中に隠れなさい!」

ダカチャン達は水草の中に隠れました。

「しいっ。声を出してはいけません・・・」

やがて、がぼがぼ、がぼがぼ、大きな音がすぐ近くで聞こえるのです。

よく見ると大きな鯉がすぐ近くに来ていて、目玉をぎょろぎょろさせながら何か食べ物がないかなぁと探しているのです。

ダカチャン達のすぐ近くにいるのです。もう怖くて怖くて、ダカチャン達はじっとしています。

突然、友達の一人が怖くなって、お母さんの言うことを聞かないで水草から飛び出してしまいました。

鯉にすぐに見つかって、大きな口でぱくっと飲みこまれてしまったのです。

ダカチャン達は、その様子を見て、もう怖くてぶるぶる震えていました。

やがて、鯉はどこかへ行ってしまいました。

「もう大丈夫ですよ!」みんな出てきてお母さんの所へ集まりました。

「さあ!散歩に行きましょう」ダカチャン達は嬉しそうにお母さんについていきました。

ギャー、後の方で大きな声がしたのです。見ると、ザリガニがいっぱいいて

友達をはさみで挟んで食べているのです。ダカチャン達は怖くて、あっちこっちに逃げました。

ダカチャンも逃げているうちに、いつのまにか一人になってしまいました。

そのダカチャンを、一匹のザリガニが大きなはさみを振り上げて、ガシャンガシャン音をたてながらすぐ近くまで追っかけて来ています。

目の前をはさみがガシャン。

ダカチャンはもう少しで、ザリガニに捕まりそうになりました。

夢中ではさみを避けながら、ダカチャンはザリガニから逃げています。

その時です「ダカチャン早く早くこっちこっち」と大声がするのです。

見ると、ドジョウさんがダカチャンを呼んでいるのです。

夢中でダカチャンはドジョウさんの所へ行きました。

「早く早く!この穴の中に入りなさい」

急いでドジョウさんのいる穴に逃げ込みました。と同時に、ザリガニのはさみが穴の入口の所でガシャンと大きな音をたてました。

もう少し逃げるのが遅かったら、ダカチャンは捕まってザリガニに食べられてしまったでしょう。

ドジョウさんにしがみついて、ダカチャンは震えています。

「可愛そうに怖かっただろうに」

ドジョウさんはダカチャンを抱きながら、ダカチャンは一人ぼっちかいっと

聞きました。

「お母さんは、どこにいるのか分からないんだね。よしよし、おじさんがダカチャンのお母さんを探してあげよう」

ドジョウさんは穴の近くを、お母さんがいるか探してくれました。

ダカチャンは「ドジョウさん有難う、僕一人でお母さんを探すから」と言いました。

でも、何処にお母さんがいるのか分からないし、どうやってさがすの?ドジョウさんは心配そうに聞きました。

ダカチャンは、「大丈夫です一人で必ずお母さんを見つけますから」と言いました。

近くにザリガニが居ないか見てきてあげようとドジョウさんは辺りを見渡して

「ダカチャン大丈夫だよ、ザリガニはいないから」とドジョウさんは言いました。

ダカチャンは、ドジョウさんに有難うとお礼を言って穴から出ました。

「気をつけるんだよ、お母さんが見つからなかったら戻ってくるんだよ」

「ドジョウさん本当に有難う」

ダカチャンはドジョウさんと別れお母さんを探していると、急に水の流れが早くなってきたのです。(へんだなぁ?) ダカチャンは力いっぱい泳いでいます。

でも、流れが速くて、いくら一生懸命力を入れて泳いでも、流れのほうに引っ張られてしまうんです。

あぁっ!滝だ、怖いよって言っている間に吸い込まれて、水の中で目がグルグル回って気を失ってしまいました。

どれくらい時間が過ぎたのか、ダカチャンはやっと気がつきました。

(ここは、何処だろう)ダカチャンは辺りを見ました。

周りは草がいっぱい生えていてその葉の上に運よく乗っていたのです。

『誰かいますか!』ダカチャンは大きな声で叫びました。

でも、誰も近くにいません。

とうとう、ダカチャンは一人ぼっちになってしまいました。

『お母さん、お母さんどこにいるのお母さん!』

ダカチャンは涙が出てきて、大きな声で泣きました。

しかしダカチャンの居るところは、池ではなく滝の水が流れてくる川の中なのです。

ダカチャンは、池も川も分かりません。

でも、お母さんやお友達に早く会いたいので探しに行くことしました。

しばらく泳いでいると(ざぶん)と大きな音がして、ダカチャンは、魚を獲りに来た、良夫と言う少年のタモ網に捕まってバケツの中に入れられてしまいました。

なにがなんだか分からないまま、ダカチャンは良夫の家に連れて行かれました。

ただ今、お父さんがお勤めから帰ってきました。

お帰りなさい、お母さんが玄関で迎えました。

お父さんは、玄関に置いてあるバケツの中にいるメダカを見つけて、どうしたのと

お母さんに聞きました。

良夫が川で捕って来たことを話したのです。お父さんは良夫に言いました。

せっかく捕ったけど、メダカはバケツの中で飼うのは難しくて、

一匹では生きては行けないんだよと言いました。

「死んだら可愛そうだから、せっかく捕まえたけど近くの池に返してあげなさい」

良夫は池に返すことに決めました。

やっと池に戻ったダカチャンは、懐かしい水の臭いで生まれた池だと分かりました。

お母さんがいる池だと分かりました。お母さんに会いたい早く会いたい友達にも会いたいでも近くには誰もいません。

すると、水面をアメンボさんが泳いできました。

「僕ダカチャンと言います。お母さんを何処かで見かけませんでしたか 」

「ダカチャンですか、お母さんならダカチャンを探して西の方に行きましたよ、

ダカチャンダカチャンって探していましたよ、まだ遠くには行っていないからお母さんはきっと見つかるよ」

アメンボさんが教えてくれた西の方に、ダカチャンはお母さんを探しに行くことにしました。

アメンボさんは友達を大勢集めて、私たちもお母さんをみんなで探してあげよう、

そう言ってあちらこちらに散らばって行きました。

でもダカチャンのお母さんはなかなか見つからないのです。

探すのを諦めようとしたとき、友達のアメンボさんが、ダカチャンのお母さんを見つけて、ダカチャンがお母さんを探しているよって伝えたのです。

「本当ですか、ダカチャンは元気で生きていたんですね、何処にいるのですか」

「案内するからついてきてください」

アメンボさんの後をお母さんはついて行きました。

もうお母さんは我慢が出来ず、「ダカチャンダカチャン何処にいるの!」と大声で叫びました。その声がダカチャンに聞こえたのです。

あっ、お母さんだ、ダカチャンも大きな声で『お母さん!』と叫びました。ダカチャンの声もお母さんの声も大きくお互いに聞こえるのです。

さらに大きく聞こえるようになってきました。

先にダカチャンのところにきたアメンボさんが、ほらっお母さんはあそこにいますよっと教えてくれました。

ダカチャンはもう夢中でお母さんの処に向かって一生懸命泳いでいます。

ダカチャンっと呼ぶ声は聞こえても、お母さんは何処にいるのか、目には涙がいっぱいで何にも見えません。

急にダカチャンは誰かに抱きかかえられました。『誰だろう?・・・』 

「お母さんだよ!探したんだよ!無事で良かったねダカチャン!!!」 

ダカチャンは泣きました「お母さんなの本当にお母さんなの」ダカチャンは初めてお母さんの胸に抱かれました。柔らかくて暖かい胸の中で涙が枯れるまで泣きました。

「ごめんね、もう絶対に何があってもダカチャンを離さないから許してね」

アメンボさんたちも泣いています。ダカチャン良かったねお母さんに会えて。

お母さんもダカチャンもアメンボさんたちに有難うとお礼を言いました。

それからは、毎日毎日ダカチャンとお母さんはいつも並んで仲良く楽しそうに泳いでいるのを見かけるそうです。

ダカチャンを助けたドジョウさんも喜んで見ています。

いつまでも幸せにダカチャン、よかった よかった。  終

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