第5話 I think,you're hiding something.


 僕が買い物に出かけようとすると、彼女は酷く嫌がった。

「食材なら庭に生えているでしょ!? 野菜なら余るほどあるわ!」

「君は妖精だからそれでいいかもしれないけど……僕はそうもいかないんだよ。たまには肉とか食べたいし」

 僕がこう言ってもケイティは譲らない。

 断固拒否で、家の鍵を全部閉めてしまうくらいだ。

「鍵はどこだよ! ケイティィ!」

「ヤダ! そんなに出たいなら自分で見つければ? 見つからないだろうけど!」

 むかつく。

 視えていれば窯焼きにするのに。

 ケイティは家中の鍵をバラ撒いて、至る所に隠してしまった。一つずつ探すのは骨が折れるし、見つけた鍵が玄関のドアを開けられるとも限らない。

「もう嫌だ……」

「嫌なら諦めて今日も野菜のスープね」

 僕は声の方を睨みつけた。

 ようやく見つけ出した時には日没を過ぎていて、ケイティの言葉通り今日は諦めることにする。だが、そろそろ食料に余裕がなくなってきたのも確かなのだ。

 買い出さねば僕の方が息絶える。ケイティは最悪、花の蜜だけでも生きていけるが、人間の僕にはそうもいかない。

 今日明日、いずれにしても食料を買いに下町に降りなければならなかった。

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