第10話 真夜中の落とし穴

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取り巻く状況は、見た目は甘ったるいケーキのよう



でも、この男には全てが張りぼてに見えているようだ



何でもないような顔をして、内面では全てを流れに身を任せる



なんて悲しい「物語」




だが・・その物語は、主人公が南の大陸から北の大陸へ移動し、近くの城下町にある宿屋にて一泊することにより、ひとまず一旦停止をすることになる


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はっ!



目を開け、周りを確認する



前の宿とは随分違った部屋ね



そこそこ高級な品であろう調度品、少し肌触りの良い寝具



ううーん!良く寝たわね!



「鏡、いる?」


「はい、王妃様。ここにおります」


相変わらずのレスポンスで嬉しいわね


「鏡、あれからどれくらい私は寝ていたのかしら?」


「はい。王妃様の肩慣らしをされた日から、9日と23時間16分ほど経過しております」


・・大体で良いのよ?まぁ、大体10日ってことよね


「大分寝ていたわね・・この理由は何故?あ、確定でなくとも現段階の推測でいいわ」


「はい、王妃様。確定ではない推測の段階ですが・・野宿や民家の空き部屋などですと、この者の意識が半分以上起きてしまっているのかもしれません。もしくは、一人で寝所にいるというのも条件にあるのかもしれません」


うーん。詳しい条件が分ければ、上手く鏡に誘導させようと思ったのだけれど。まぁ、要検証ね


「分かったわ。まぁ、気長に検証するしかないわね。・・それよりも鏡。あれはどうなっていますか?」


そう、折角起きたのだから、ね!


「はい、王妃様。直接裏の世界にゲートを設置することは出来ませんでしたが、表からの入口に設置しておきました。今から向かわれますか?」


やっぱり鏡。仕事が早いわ!!


「では、行きましょう。えぇ、行きましょう!」


「王妃様、そのままで向かうのですか?」


・・自分の姿を良く見る





上半身裸の男





「おおおおお落ち着きましょう」



ひとまず着るもの着るもの・・


「王妃様、こちらを身に付けください。向こうの街にある武器屋で購入した物ですが、なかなか良い仕立ての装備品でございます」


そう言って鏡は空間魔法で装備品を呼び出す


ベッドの上には、厚手の可愛らしいローブ、水鏡のような綺麗な盾、そして立派なドラゴンの意匠の・・爪?・・えー



「鏡。この爪だけごっついのだけれど・・」


「申し訳ございません、王妃様。近場の武具屋にはそれ以上の品が無く・・」


いやいや、ローブといったら杖じゃないの?って言いたかったのだけれど・・まぁ、いいわ



厚手のローブを羽織り、爪を腰のベルトに引っ掛け、盾もその爪を隠すように背中に掛けていく






ふー







サッ!シュバッ!!ブオン!!




うん、装着感は良いみたい。動きを阻害しない軽さの盾も、思った以上に手に馴染むこの爪も、期待以上に身体へと着いてきてくれる



「鏡、この装備中々良いじゃない。気に入ったわ」


「ありがとうございます、王妃様」




思った以上の装備品に顔がにやけてしまっている。王宮では鉄面皮を求めていられたから我慢していたのだけれど、感情は表に出してあげないと可哀想よね




爪と盾を背中に戻し、フードを被る


うん、準備は済んだわね



「鏡。では、行きましょう」


「はい、王妃様。ゲートを開きます」



さぁ、私の冒険も始まるわよー!





え?









きゃーーーーーーーーーーー!!!!!!!





「あ、王妃様。裏の世界に行くには、まずこの大穴を1分ほど抜けて行きます」






そういうことは早く言ってえええええぇぇぇーーーーーーーー!!!!!!

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