第9話 真夜中の進路変更
鏡の用意したゲートを抜け安宿に戻り、考えられないほどに固いベッドに腰を掛ける
身体が本体に追い付いていないせいか、若干のだるさが残る
「腕慣らしには良かったわね・・鏡、これからどうするべきかしら?」
「はい、王妃様。この者のレベルが上がるまでは、身体を馴染ませる程度・・あのレベル帯の魔物を狩り続けることをお勧めします」
鏡はそういう意見か・・
「ねぇ、鏡。私はあの程度のレベルで戦い続けて身体を慣らすより、今のこの身体でどこまで行けるのか、ちょっと試してみたいわ」
「王妃様・・それでは戦闘狂でございます」
若干引きぎみな雰囲気で鏡に突っ込まれた
いえ、違うのよ?王妃の立場からこの憑依状態とか、落差がありすぎて楽しいと言うか、暗部の訓練生時代を思い出すとか
あー、あの頃は死の予感を感じなかった日は無かったわね。常に自分の実力ギリギリの線で戦わされて、脱落者や脱走者が出ない日も無かった・・王様に見初められてからは、そういった訓練や任務は無くなったのだけれど・・最低限の鍛練すら王命で止められたのよね。あれ、泣き落としして撤回してもらえば良かったわねー。そうすれば7人程度の傭兵ごときに不覚を取ることもなかっただろうし、私一人で黒幕を暴く程度は出来たかもしれない。そういえばあの国は、私がいなくなった後どうなってしまったのだろう?王様は無事なのかしら?そしてあの娘も・・・・
「王妃様?」
「あ、あら、ごめんなさい。少し昔を思い出してしまっていたわ」
もうあの世界に戻れない
なら、この世界でしっかり生きていかないとね
「王妃様。今、情報を精査したところ・・あの魔物たちは、この表世界では最強の魔物の一角でございます。頂点には、その勇者が目指す魔王がおりますが、魔王の居城ということで最高ランクの魔物が集まっていたのだと推測されます」
「あの程度で最強の一角と言われると・・随分ぬるい世界なのね、ここは・・・・」
ん?
そこまで言って、少し違和感を感じる
表世界・・表の世界・・表?
「ね、ねえ、鏡。お、表世界ではって事は、もしかして・・裏の世界っていう世界もあるっていう事かしら?」
「はい、王妃様。古文書のデータベースによりますと、表世界にある大穴の底、もしくは火山の火口内に設置してある転移装置から向かえるようです。先程地下に向けて感知を向けてみましたが、戦った魔物よりも強いと思われる反応が多数と、数体の高位種族、それと・・一体のみですが、感知を受け付けない魔物がおります。何かの加護か、能力を無効化するアイテムを身に纏っているのかもしれません」
裏世界・・暗部にいた頃の使い方だと、後ろめたい業種とか敵国の暗部自体を指す隠語だったけれど・・本当の世界があるのね!
「早速行きましょう!鏡!!さぁ、案内なさい!」
「お待ち下さい王妃様。簡単な調査すら終わっていない段階で、王妃様をお連れするわけには参りません。それに、後2時間程度でその者は覚醒いたします。ひとまず、今日のところは御休みくださいませ」
ぐむむ、この制約のある身体が恨めしい・・
「分かったわ、鏡。今日は、慣らし戦闘で酷使してしまったこの身体を休ませるために寝ておきます。だから鏡、私が起きるまでに裏世界とやらの調査をしておく!いいわね!!」
そうして、半分自棄になりつつ毛布をかぶる
「畏まりました、王妃様」
音もなく転移した鏡を見ることもなく、私は毛布の中でニヤニヤしていた
今日は身体の事も含めて完全な不完全燃焼
こんなんじゃ、足りない
だけど裏世界という場所では、私を楽しませるような戦いが待っているに違いない
さらに、鏡の感知ですら弾く謎の魔物・・
ふふふふふ・・・・良い予感がするわね
だから、勇者とやら
早く強くなりなさい
早くしないと・・
魔王とやらを、
倒しちゃうかもしれないわよ?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます