第9話


第八章

 1

 

 翌朝シュンタローはフロントから光太郎の部屋に電話を入れた。しばらく呼び出し音が続いたが、電話口に光太郎が出た。

「小暮さん! 今どちらに?」

「お泊りのホテルのレセプションにおります。もしよろしければ、ご足労願えませんか?」

 光太郎は直ぐに降りて来た。二人はレセプションの横にあるカフェに入り、セブンス・アベニューを見渡せる席に腰を降ろした。通勤時間帯で、通りにはオフィスに出勤するサラリーマンやOLの姿が目立った。

「わざわざ来ていただいて申しわけありません」

 コーヒーカップを手に持ったまま、光太郎が言った。

「いや、実は昨夜からわたしもこのホテルに泊まっていたんですよ」

「えっ、それはまたどうしてですか?」

 光太郎が不思議そうにシュンタローの顔を覗き込んだ。

「ちょっと事情が出来まして、アパートには帰れないんです」

 そう言ってシュンタローはコーヒーを飲んだ。

「差し支えなければ事情をお話していただけませんか?」

 光太郎が促した。

「実はある組織に追われているんです」

 シュンタローは事の顛末を話した。光太郎はシュンタローの説明に頷きながら耳を傾けていた。

「それは大変でしたね。まるでサスペンス・ドラマのストーリーを聞いているような気がしますな」

 光太郎は同情している様子だった。

「ホテルを泊まり歩くのは落ち着かないし、第一不安で仕方がないでしょう?」

 シュンタローは昨夜のエレベータでの出来事を思い出していた。これからあんな風にびくびくしながら逃げ回ることを考えると、憂鬱の極みだった。

「どうでしょう。一度シスコさんに相談してみましょうか。彼なら何かと力になってくれると思いますよ」

「ありがとうございます。甘えさせてもらっていいでしょうか?」

 シュンタローにとっては渡りに船だった。

「今夜シスコさんと会うことになっています。ご都合は如何ですか?」

 光太郎はシュンタローをシスコに引き合わせることになった。

「ところで小暮さん、ひとつ尋ねていいですか?」

 光太郎がシュンタローの眼を見つめて言った。

「どうぞ」

 光太郎は姿勢を正した。

「最初日本人会でお会いした時、小暮さんは国吉にその後一度も会ったことはないとおっしゃいましたが、本当のところはどうなんですか。いや、わたしも警察の端くれでしたので、相手が本当のことを言っているかどうか、ある程度感が働くんです。失礼ですが、あの時小暮さんは嘘をおっしゃったのではありませんか?」

 シュンタローは観念しようと思った。

「申しわけありません。お父さんが余りにも国吉に対する憤懣を述べておられたので、つい・・・・・・」

「国吉にお会いになったのは何時のことですか?」

 光太郎が迫った。

「先月上旬のことでした。WTCに飛行機が突っ込む三日前のことです。突然アパートに現れたんです」

「国吉は一体こちらで何をしているんでしょうか?」

「先程申し上げたテロ組織の工作員でしたが、組織を裏切り、あいつも組織から追われているようです」

「光一も組織と繋がっていたんでしょうか?」

「わたしが知る限りでは、国吉は二十九年前ニューヨークにやってきた頃から息子さんを日本人会に入れ、日本や日本人関係の情報収集スタッフとして利用していたようです。日本人会の記録には、ニューヨークに来た頃国吉も日本人会の会員だった時期がありますが、その後は日本人会を息子さんに任せ、組織本体の工作に専従していったような感じです。これは単なる想像に過ぎませんが、息子さんは国吉とは関係があったが、組織そのものとの繋がりはなかったんじゃないでしょうか」

「誰が息子を殺したのかという点ですが、国吉に殺されたという可能性はどうでしょうか」

「いや、そこまではわかりません」

「その真実を知るためにも、わたしは国吉と会わなくちゃならない」

 光太郎の顔が険しくなっていた。

「国吉が小暮さんにコンタクトを取ってくることはありそうですか?」

「ここ一ヶ月以上、国吉からは全く連絡がありません。わたしもあいつに問いただしたいことがあるんですが、こちらから連絡を取ることが出来ませんから、何とも申し上げられません」

「歯がゆいですなあ。こちらから連絡がとれないということは。光一の場合と同じです。連絡しようにも光一は全く行方がわからなかったわけですから」

 光太郎は左の手のひらを開き、右手の拳骨でたたく動作をしていた。

「シスコさんに息子殺害に関する情報がわかれば教えて欲しいと頼んでいるんですが、まだ確たる情報はないんです。探偵事務所にお勤めだから、仕事として依頼すればまた別でしょうけど、調査費用は結構高いらしい。彼はわたしとの関係があるから、ボランティアとして元の職場の同僚や知り合いを通じて情報を得ようとしてくれているんですが、やはり現役の警官じゃないですから、確度の高い情報を入手するのはなかなか難しいようです。仕方ないことです」

 光太郎は半ば諦めたような表情を見せた。

「小暮さん、今日これからのご予定は?」

「午後から塾の授業があるんです」

「そうそう、塾の先生でしたね。その塾は何処にあるんですか?」

「マンハッタンの郊外、スカースデール駅前のモールにあります。S学院というところです」

 夜七時にWホテルのロビーに集合することが決まり、シュンタローは一旦部屋に戻った。

今日はとりあえず塾を休もうか。何と言っても昨日の今日だ。出歩いて拉致でもされたら取り返しがつかない。そう思ったものの、最近少し色々な理由をつけては授業を休み過ぎている気もしていた。冷ややかな態度を見せている塾長の顔が浮かんだ。

 悩んだ挙句、シュンタローは塾に出掛けることにし、フロントに更に二泊する予約を入れ、ホテルの横から地下鉄の駅に降りた。ちょうどハーレムの中心125丁目行きの電車がプラットフォームに滑り込んで来た。

 ラッシュアワーが過ぎており、空席があったのでシュンタローは座席に腰を降ろした。何処かに怪しそうな人物は乗っていないかと辺りを見渡した。誰もいないようだった。

 125丁目駅で地下鉄を降り、ハーレムの中央通りに出た。アポロ劇場の前を通り抜け、郊外に向うメトロ・ノースの電車の駅に着いた。 

メトロ・ノースの電車が発着するGターミナルの爆破事件から二十日ほどが経っていた。事件以来、主要な駅には巡回する警官の姿が目立っていた。少しでも不審な素振りを見せると、徹底的に調べられた。あの事件から当局は、ますます神経質になっていた。

 電車に乗り、シュンタローはスカースデール駅に向かった。

スカースデールにはユダヤ人の豪邸が多く、キリスト教会に加え、シナゴーグ(ユダヤ教会)も点在していた。

 シュンタローは豪邸やシナゴーグの傍を通る度に、WTC事件を事前に知らされていたユダヤ人というインターネットの裏情報が脳裏を掠めていた。

地元にある現地校には一時に比べるとかなり減ったものの、日本企業駐在員の子弟が通っていた。シュンタローは放課後その子弟を相手に、塾でTOEFL(外国人のための英語科目)を教えていた。

 その日の授業を終えて、シュンタローはスカースデールの駅前通りを歩いていた。途中、店でポップコーンを買い求めた。駅前の中央には小さな公園があり、真中に円形の壁が立っていた。

 何か文字が刻まれている。一体何だろう。シュンタローは大きな紙コップに入ったポップコーンを頬張りながら近くに寄り、眼を凝らした。その壁には第二次世界大戦で戦死した地元出身の兵士の名前が刻まれていた。

 何処の戦線で亡くなったのだろう。ヨーロッパが多いのかな。それとも太平洋で日本軍と戦った兵士なのだろうか。

 シュンタローは戦死者に想いを馳せていた。

 その時、シュンタローの肩に背後から手のひらが触れたような気がした。はっとして振り向くと、黒っぽい上下服と帽子を被り、サングラスをかけた小太りの男が シュンタローに不敵な笑いを投げかけていた。

" You must be Kogure, right ? "(小暮さんだね?)

 ヒスパニック訛りの英語のアクセントだった。男はシュンタローの背中に拳銃を突きつけた。

「お前は一体誰だ。組織の人間か」

「御託を並べないでついて来な」

 男は低い声で唸り、シュンタローの背中に拳銃を突き立てたまま口笛を鳴らした。同じような出で立ちの男がひとり何処からともなく現れた。その男が手を大きく振り回すと、黒塗りのセダンが広場の入り口に来て停まった。

「さあ、乗れ!」

 男が拳銃の先でシュンタローの背中を小突いた。

 シュンタローは咄嗟にポップコーンを男に投げつけた。男がひるんだ隙に、セダンの反対側に転がるように身を隠した。

「往生際の悪い奴だな」

 男が銃口をシュンタローに向けた時、背後から誰かが叫んだ。

「銃を捨てて、両手を頭の後ろで組め!」

 銃口が自身に向けられているのを確かめた男は銃を放り出し、両手を挙げた。銀髪を振り乱した年配の男が拳銃を両手で構えていた。その隣で光太郎がセダンの男に銃口を向けていた。

「二人とも頭の後ろで手を組むんだ!」

 銀髪の男が再び叫んだ。

「北村さん!」

 シュンタローは北村の背後に身を隠した。

 ドライバー席にいた男がセダンのドアを開けて両手を挙げたまま外に出て来た。銀髪の男は銃を構えたまま、男に歩み寄り、傍らに投げ捨てられた拳銃を足で思い切り遠くに蹴った。

 円形の壁の陰から制服警官が三人、姿を現わした。皆銃を構えていた。

「後を頼みましたよ」

 銀髪の男が声を掛けると、警官は男らを念入りにボディ・チェックした後、連行して行った。

「小暮さん、やっぱり独りで出歩くのはよろしくない」

 光太郎がほっとした表情で微笑んだ。

「こちらがシスコさんだ」

 光太郎が銀髪の男を紹介した。シスコは微笑みながらシュンタローと固い握手を交わした。

「危ないところを、どうも」

 シュンタローが二人に礼を言った。

「シスコさんに事情を話したんだ。小暮さんが独りで塾に出掛けたと言ったら、危険だから彼の身辺を守ろうと言い出したんだよ。それで二人でここにやって来た。シスコさんは地元警察に事情を話し、何かあった場合の応援を頼んでくれた」

「そうでしたか。わたしは連日冷や汗ものですよ。一体これからどうしたらいいのだろう」

 シュンタローは困惑していた。

「その件を今夜話し合おうということです」

 光太郎が言った。



 シュンタローはその夜Wホテルのロビーで光太郎らと落ち合い、シスコの車に乗り込んだ。車はマンハッタンを何度も西に東へとストリートを迂回しながら、南に向かっていた。組織の尾行をまくためだとシスコが説明した。車はマンハッタンの南端、バッテリーパークの近くにある倉庫の裏手でようやく停まった。

「ここなら安全だ。車内で話しましょう」

 シスコが言った。

「小暮さんは昨日と今日身を持って体験されたように今非常に危険な状態にある。当分の間、フェッド(FBI)が用意したハウスで過ごしてもらうように手配しました。そこはマンハッタンの某所にあり、二十四時間身辺警護がついています。とにかく組織が近付けないところです。よろしいかな?」

 シュンタローは頷くしかなかった。

「そこで過ごしてもらう間に、小暮さんが今まで知り得た組織の情報を全てフェッドに提供してもらうことになります」

「組織の情報と言いますと?」

「昨日事故で亡くなったリサという組織のエージェントやあなたの同期生国吉のことです」

「初めに伺っておきますが、シスコさんはニューヨーク市警を退職され、今は民間の探偵事務所にお勤めですね?」

「その通りです。それが何か?」

「フェッドとニューヨーク市警というのはそれぞれ捜査機関として張り合う関係にあるのじゃないですか? 片や連邦の警察であり、もう一方は自治体警察だ。元ニューヨーク市警のあなたがフェッドと関係があるのは矛盾しませんか?」

「わたしの探偵事務所は両捜査機関とも仕事上の付き合いがあります。その時々の事情により、最も効率的な対応を考えます。今回は身の安全をはかる必要のある人物、つまりあなたがいるから、その安全をはかることが可能なハウスを持っているフェッドに依頼したということです」

「なるほど。それと今、リサが事故で亡くなったとおっしゃいましたが、リサの名前はまだマスコミに流れていませんね。わたしは現場にいたから、ニュースを聞けばリサが死んだことはすぐわかりましたが、どうしてシスコさんはご存知なのでしょう。まだ、マスコミは発表していないのに」

「いいですか、小暮さん。リサはニックネームで、本名はメグ・ホーキンス。闇の業界では有名な産業スパイでした。お得意の色仕掛けで多くの国際的な企業の極秘資料やデータを盗み、フェッドが極秘裏に追っていた女です。最近では工作の失敗が重なり、組織の中での評価は下がっていました。男漁りが過ぎたせいだと陰口をたたかれていたそうです。組織の情報をつかむためにフェッドは組織にスパイを潜入させ、情報を日々掴んでいます。今回もリサがロックランドの事故で死亡したという情報が組織に入り、我が方のスパイからフェッドにその情報がもたらされたというわけです。マスコミに出るような情報は、事が終わってからの滓(かす)のようなものです。発表される前に、既に事態は新しい展開を見せている。従ってマスコミの情報なぞ、われわれの業界には何の役にも立ちません」

 シスコは冷ややかに言った。

「問題は国吉です。国吉は組織からドロップ・アウトして、フェッドがGターミナル爆破事件の実行犯として指名手配したアラブ過激派、モハメッド・イスラーム・ヒラムと合流しました。ヒラムは今からちょうど二十年前、ニューヨーク州で発生した現金輸送車強奪事件の主犯のひとりで、WTCのテロにも関わった疑いが濃い人物です。国吉は一九七二年日本を離れ、ニューヨークに潜入し、アメリカの過激派に接近した。ヒラムとはその当時からの知り合いで、恐らく現金輸送車の強奪にも関わっていた可能性があります。今のところWTCやGターミナル爆破との関連は、はっきりしません。小暮さんは最近国吉と遭遇した数少ない方ですから、フェッドの担当官が会いたがっています。出来る限りの情報を提供してやって下さい」

身の安全を保証するから、それと引き換えに国吉らの情報を渡せ、ということだ。要するに取引だ。

シュンタローはそう思ったものの、とても独りで出歩く勇気は失せていた。組織に拉致されれば、命の保証はなくなる。データを奪われたら、後は証拠隠滅のため消されるだけだ。ここは、やはり国吉の情報をフェッドに渡すしかなかろう。

 シュンタローはハウスでのフェッドによる尋問を覚悟した。



 シスコは早速シュンタローをフェッドのハウスに案内した。ハウスは表向き、ジャズクラブにカムフラージュされていた。シュンタローらはハウスに辿り着く前の車中から専用のアイマスクを被り、FBI要員の案内でジャズの生演奏が聞こえるクラブの横を通り抜け、狭い通路からクラブと隣り合わせになっている建物に入って行った。

 アイマスクをはずす許可が出て辺りを見渡すと、建物の入り口にある小部屋にはフェッドの監視員らしい人物が数人待機していた。皆肩のホルスターに拳銃をぶら下げていた。

 建物の中に入ると、表の演奏の音が全く聞こえなくなるほど、気密性が高かった。入り口が分厚い金属製のドアで覆われているせいもあった。更に奥に行くと、幾つかの部屋が両側に並び、ドアが開いていた。部屋を覗くと、窓がない代わりに煌々とした照明が部屋を照らし出していた。

「これがミスター・コグレの部屋です」

 案内したフェッドの担当官が一番奥にある部屋のドアを開けながら言った。

 シュンタローは部屋に入った。ホテルの一室のような雰囲気で、ベッドとデスクが置かれ、バスルームや応接セットの設備があった。

「今夜は遅いからもう寝ていただいて結構です。明日から色々とお話を伺うことになります。食事はどの時間帯でも食べられます。入り口の手前を左に行くと食堂がありますので、そちらでどうぞ」

 そう言うと、担当官は出て行った。シュンタローはシスコと別れ、改めて部屋の中を見渡した。

窓のない部屋はやはり閉塞的な感じが否めなかった。こんなところで一体いつまで過ごすことになるのか。シュンタローは不安に襲われた。


 翌日食堂で朝食を済ませると、早速二人の担当官が部屋にやって来て、シュンタローの聴取が始まった。

 担当官は一人がジェフ、もうひとりはハンセンと言った。ジェフは聴取の担当で、ハンセンは記録担当だった。

「国吉がアパートに現れたのは何時(いつ)ですか?」

「九月八日です」

「国吉は何の目的でやって来たのですか?」

「娘をWTCのテロから守るために、協力して欲しいということでした」

「娘の名前は?」

「明子です。姓は野口でした」

「アキコ・ノグチですね。彼女の職場はWTCにあったのですね?」

「ええ」

「それであなたは当時付き合っていたリサに娘を連れ出して欲しいと頼んだのですね?」

「連れ出して欲しいとは申していません。国吉が言った通り、九月十一日に娘さんがWTCのオフィスに出勤しないようにしてくれと言いました」

「その時リサはどう言いましたか?」

「わたしに全て任せてくれと言いました」

「具体的にどういう方法をとるか、リサは話しましたか?」

「いいえ、後で必ず話すと言いましたので、それ以上尋ねませんでした」

「リサに協力を仰いだのは、何か理由でも?」

「他に頼める人物がいませんでしたから」

「その時はまだリサの正体を知らなかったのですね?」

「全く知りませんでした」

「セバーゴ湖であなたが拉致されそうになった時、リサは娘について何か言いましたか?」

「娘を誘拐し、国吉をおびき出そうとしたが、取引に応じず、国吉の暗殺工作は失敗したと言いました。娘は組織が預かっていると」

 ハンセンはシュンタローの発言を聞き漏らすまいと、パソコンを打ち続けていた。

「国吉についてその他見聞した事柄について話して下さい」

「わたしの知っているマンハッタンにある日系のスナックに現れたそうです」

「ということは、あなたはその場に居なかったという意味ですか?」

「そうです。店長に後で聞きました」

「その人の名前は?」

「ケンジです」

「それはファースト・ネーム(名前)ですね。姓はわかりますか?」

「いえ、知りません」

「国吉がその店に現れたのは何時(いつ)のことですか?」

「アパートに現れた同じ夜です」

「九月八日ということですね?」

「そうです」

「何処の、何と言う店ですか?」

「セカンド・アベニュー四十九丁目を少し下がったところにある舞という店です」

「メイ?」

 ジェフは一度で「舞」を聞き取れなかった。

「マ、イ、です。日本語でダンシングという意味です」

 ハンセンもパソコンの入力に困っているようだった。

「その店の営業は何時からですか?」

「夜七時です」

ジェフは時計を見て携帯電話で別のエージェントを呼び出し、その夜七時に舞という店に行き、ケンジという店長に接触して国吉について話を聞くように指示した。

俺の話のウラを取ろうという魂胆だな。シュンタローはそう確信した。

ジェフが続けた。

「そこで国吉はどんな話を?」

「大学時代の武勇伝を話したそうです」

「それはどういう意味ですか?」

「自分が革命を目指す過激派のリーダーであったことをアピールしたということです」

「その他には?」

「その場にいた日本人の若者が、国吉の世代の人間が日本社会を堕落させたと話したのを聞いて、国吉は激高し若者に暴力を振るったそうです」

 ジェフの質問は微に入り、細に入り続いた。

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