第3話 私たちの壁
先日、新体制になって初の基礎合奏をした。前田先生から沢山注意をされた私たちは、今日はパート練に取り組む事になっていた。しかし、今日も問題があった。
「こんにちは。」
部室へやって来た前田先生に部員が挨拶する。
「そういえばこの部活48人部員がいるんだよな?」
決して穏やかでない口調で先生が言う。
「はい。そうです。」
私が答える。
「で、昨日の合奏に乗ってたのは?」
私は急に恐怖感を抱いた。横にいる奏美に助けを求める様に顔を見合わせる。そして、恐る恐る口にした。
「30人です…」
部室には先生も含めておよそ30人程いたが、異様な静けさが流れていた。
「今日も同じくらいか?」
「はい…そうです。」
その静けさはより増した様に感じた。先生の次の言葉に身構えた、つもりだった。
「一週間、停部にする。」
先生はそのまま部室を後にした。
立ち尽くしている私に奏美が声を掛ける。
「優季…?」
私は部室を駆け出し、静かに陽が差し込む自分のクラスの教室に駆け込んだ。誰もいない静かな部屋だった。
「優季、ねぇ…?」
私は目元を何度かこすり、前の席にこちらを向いて座った奏美に向かった。
「これからっていう大事な時期なのに…。私…部長失格なのかな?」
奏美は私の手に優しく触れた。
「私はそんな事、一度も思った事ない。正式に部長になってまだ数ヶ月じゃん。でも、私はもう優季と過ごして3年目。優季を信頼する材料は沢山持ってるつもりだよ?」
私は、心の中に刻まれた傷跡を魔法の様に消し去ってもらった感覚になった。
「奏美、ありがとう。」
私は奏美のせいで溢れた涙をまた、拭った。
「それじゃあ、今後の事について考えよう!…コダーイ、来て!」
号令を聞いた兵隊の様に教室に駆け込むコダーイ。
一呼吸置いて、私は切り出した。
「今後の部活について話し合います。」
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