第2話 驚愕と不安


合奏の準備を終えた私たちの前に現れた新顧問。部員たちが騒然とする中、先生は私に聞いた。

「チューニングは?」

「終わっています。」

それを聞くと先生は全体に向け声を発した。

「はい、初めまして。でもないと思うけど、前田 智といいます。」


そう、この先生はこの地区では有名な前田 智理事長。西相地区吹奏楽連盟の理事長。

「はい、じゃあ早速音聴かせて。」

驚きと感激のあまり言葉を失う私たちに前田先生が問い掛ける。

「カウントは?いつもどうやってるの?」

学指揮の昭弥が答える。

「先生が出してくださっていました。」

先生は少し考えるようにしていると、思い出したように言った。

「あっ、そうだ。これ配って。」

一人一々に配られた楽譜には、《デイリートレーニング》と書かれていた。

「今日からこれで基礎合奏するから、よろしく。それじゃあ君。前出て仕切って。」

昭弥が指名を受けて指揮台に登る。彼の合図で基礎合奏の《デイリートレーニング》が奏される。前田先生は多彩な表情をしながら椅子に腰掛けている。私はこの時にはもう得体のしれない自信の様なものの存在を感じていた。



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