魔王は訳が分からない
「授業受ける気がないんなら初めから教室に入んな。真面目に受けたい奴の迷惑」
どしりと腰を落ち着けて、ドスの効いた声と厳しい目つきで彼女は言う。
魔王様は今日も絶好調だった。
あぁまた始まった……放っとけばいいのに。っていうか先生、何か言えよ、何で彼女のするがままに任せてるんだ?
しかもその、授業中だっていうのに友人の席まで立ち歩いてって大騒ぎしてる奴も、並大抵の神経の太さじゃないからそうできるんであって、そんな魔王様の脅しに少しも屈する様子なく食って掛かるんだ。
「ぁあ? うるせぇ仕切んな何様だっての」
お前もおとなしく退き下がってくれよめんどくさいなぁ。
「別に何様でもねぇ。ただの同輩ごときに注意されてんじゃねぇよガキが」
彼女は無表情にただ冷たく言い放つ。
「んだとコルァ」
巻き舌ぎみに応戦する学級崩壊野郎。おお、何だか今日は長く続きそうだ。
彼女は哀れむように嘲笑した。
「見苦しいんだよ。授業くらい大人しく受けてろ。
……そうじゃねぇんなら、もっと主義主張はっきりさせやがれ。てめぇがまともに音楽受けたくねぇ理由はなんだ? 言ってみろ」
……何か妙な理屈を捏ね回し始める魔王様。そんなのどうでもいいから、授業受けさせてくださいよ……。
「はぁ? ダリィじゃんこんなの。別に役に立たねぇし」
「……下らんな……」
身も蓋もない彼の答えに魔王様は失望したような声を出した。それがますます彼を逆上させる。
「ってーか授業中断させてんのはてめぇも一緒だろうが、てめぇもうるせぇぞ」
そうだそうだ、もっと言ってやれ。けれどその言葉に我に返ったのか、魔王様はそこで大人しく手を退いた。
「そうだな。先生、失礼しました。こいつとは授業後じっくり話してみる必要があるようです。どうぞ授業をお続けください」
誰がてめぇなんかとじっくり話なんかするかよ、と彼は毒づいていた。
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