第21話 お茶会

 目を覚ましたトワはキティに朝食を貰い、エリザに会い診断とリハビリのメニューを伝えて、他の用件の前に一度部屋に戻りキティを探す、どうやら寝室でベッドメイキングをしている様だったので寝室に近くと。


「クンカクンカ、トワ様の匂いだよ」


 シーツに顔を埋めているキティだが気配を感じたのか、ギギギと音が鳴っているような錯覚の様に、首を回してトワを確認すると血の気が引いた顔になる。


「とととと、トワ様」


「あー、お楽しみ中だった」


 トワが踵を返し寝室から出ようとすると、キティがキシャーの声と共にトワを飛び越えた。


「トワ様、この事はどうかご内密に」


 キティはいきなり土下座をする、トワは苦笑しながらキティの肩に手を置いて頭を上げさせる。


「うん、まー、事故だよ、お互いに忘れよう」


「そうです、事故なんです、トワ様の匂いが好きだからシーツを嗅いでいたのは、はい事故です」


 キティはパニックになっている様だ。


「とりあえずキティ、深呼吸しよう」


「ふー、ふー、ふにゃっ」


「落ち着いたか?」


「すいません、それでどうしましたか?」


「今日の夕食の何だが、夜遅くになりそうだからキティは先に食事をしていてくれと言いにきたんだ」


「いえ、トワ様をお待ちします、御一緒に夕食を食べたいです」


「そ、そうか、分かった」


 キティの気迫に押され同意した。


「ああ、それでキティ、国王が会いたいと言っていたのは何時だ?」


「はい、今確認して参ります」


 キティはととと部屋から出て行ったのでソファーに座って待っている事にした。

 暫くしてキティが戻ってきた。


「トワ様、今すぐに国王がお会いになられるそうです」


「ありがとう」


「はい、ご案内致しますので参りましょう」


 キティに案内された先は執務室の様だ、国王が実務をこなしていた。


「良く来たトワよ、すまぬが実務が溜まっていてな仕事しながらで悪いが用件の済ませよう、そこに座って茶持って越させよう、茶でも飲んで待っていてくれ」


「はい、では失礼します」


「トワにあれを」


 控えている執事がトレーに通行書と地図を乗せてテーブルに置いて下がる。

 トワは地図を開くと歪な円が書かれた大陸だった。

 人間の領土は北西の部分に当たるようだ。


(「ニーナ、地図をスキャニングしてコンテナの位置と照合」)

(【スキャン開始・・・照合・・完了】)

(「一番近いのはどの辺りだ?」)

(【王都の南東20km辺りです】)

(【了解した】)


 地図を見るとその辺りは森が記されていたがこの星の製図能力が高く無いため正確さに欠けるため、国王のベガに聞く事にする。


「お聞きしても?」


「申せ」


「この辺りには何が有りますか?」


 トワはコンテナのある場所の位置を地図上で指差す。


「ふむ、その位置なら残花の祠があるな」


「祠?」


「うむ、祠っと言っても内部に入れば下に続くダンジョンが広がっておる」


「そこは誰でも入れますか?」


「各種ギルドで登録するば、この人族のダンジョンは入れる様になっておる」


「分かりました」


「冒険者に興味が有るようだか?」


「冒険者と言うより、この残花の祠に興味がありますね」


「そうかならば、「陛下時間です」うぬ」


 執事が次の予定の時間なのか話を遮った。


「すまんな、また機会があれば話をしたいな」


「分かりました、またの機会に」


 トワは礼をして退室する。

部屋を出るとステラが壁に寄りかかっていた、トワと目が合うと駆けてくるがトワの前で何故かステラの笑顔になり一歩下がる。


「やぁトワくん待っていたよ、さあ行こうか」


 既にステラはトワの手を掴んでおり有無を言わさずに歩き出す。


「ちょっと待てステラ、何処に行くんだ?」


「事情聴取」


 事情聴取と不穏な単語出したステラに、引き摺られるように着いた先は庭園であった、庭園の中程に設置されたテーブル一式には、アリアナとエリザとサクラが座っていた。


「はい、ではトワくんはここに座ってお茶会をするから」


「ああ、ああ?」


「おはようございます、お兄ちゃん」


「またお会いできて嬉しいですトワ兄様」


「トワおはよう」


「皆で集まってどうしたんだ?」


「今日はエリーちゃんの所にお泊まりなのです」


 アリアナとエリザがねぇ~と同意し合い、サクラは護衛で同行している。


「エリーはアリアナと知り合いだったのか」


 トワの言葉を聞いたアリアナがトワの服を引っ張る。


「エリーちゃん愛称で呼んでるのお兄ちゃん、私は?」


「ああ、ああ、じゃー・・・リアでいいか?、それよりリアは何故ここに?」


 愛称でアリアナを呼ぶと笑顔になって服を離してくれた、どうやらお気に召した様だ。


「アリアちゃんとはずっと前から友達なんですよ」


「なるほどね、ああ、そうだサクラ」


「どうした?」


「リアが帰るまでの間は護衛は自分がやるよと伝えてくれ、城の中なら自分の方が動きが取れるからな」


「了解した帰る時に交代する様に伝える」


「ああ、頼む」


「ではアリアナ様、私はこれで」


「ありがとうサクラお姉ちゃん」


 サクラはお辞儀して帰る際にトワに耳打ちして行く。


「明日街の広場に10時」


 と言い残して去っていった。


「さあ、本題に入ろうかな」


 ステラが逃がさないとばかりに後ろからトワの肩に手を置いて話す。


「え~と、本題ってなんだ?」


「いやね、今日の朝飯の時にマーニャ姉さんがボーとしているかと思えば急に顔を赤くして何を呟きの繰り返しで、何なのかな~とマーニャ姉さんの部屋に行ったらさ、何故かトワくんの外套がマーニャ姉さんの部屋に有って、マーニャ姉さんが外套の前で溜息吐いたり、顔を赤くしたりしているのはトワくん‼マーニャ姉さんに何したの!?」


 そういえば昨晩、マリアな外套を貸したままだった。


「いや、昨日の夜にバルコニーで寒そうにしていたから外套を貸しただけだ」


 当たり障りの無い事を話すがステラは納得するはずもなく、アリアナとエリザもこの手の話は好きなのか身を乗り出して話を聞いてくる。

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