第20話 想いで

 城に着いたトワはエリザの部屋を訪れた、ニーナに体の異常の有無を確認してリハビリのために城内を一緒に歩く。


「トワ兄様、庭園まで行きたいのですかよろしいですか?」


「エリー次第だな、庭園まで体力が持てばいいよ」


「頑張りますトワ兄様」


 トワの言葉で廊下をエリザと歩き出すが、庭園までの道のりの半分位まで歩いた時に、トワはエリザの体調を考慮した判断してトワはエリザを抱き上げる、するとトワの突如の行動エリザは固まった。


「ふぇ?」


「エリー今日はここまでだな、この調子で頑張ろう、疲れただろう部屋まで嫌かもしれないがこれで我慢してくれ」


「あ、いえ、だいしょうぶです」


「大勝負?」


「な、なんでもないです、はい、お願いします」


 エリザがポンコツになったが、とりあえずは返事は貰った為、部屋に戻るために歩き出すと誰からか呼び止められた。


「トワ様、お帰りなさいませ」


 振り返るとキティがお辞儀をして出迎えてくれた。


「ただいまキティ、・・あ、部屋に何か食べ物を準備してくれないか、エリーを部屋に寄ってから戻るよ」


「畏まりました」


 キティは再びお辞儀をして立ち去る、こちらもエリザの部屋を目指し歩き出す。

 エリザを部屋のベッドに寝かせて後の事はエリザのメイドに任せる事にする。


「エリー、おやすみ」


「トワ兄様、おやすみなさいませ」


 エリザとおやすみの挨拶交わして部屋を出て自分の割り当てられた部屋に向かった、部屋に入ると料理の匂いがした、テーブルに配膳しているキティを見つける。


「戻ったよキティ」


「お帰りなさいませトワ様」


 席にキティと対面して座り食事を始めた、キティは水を飲みながらこちらを見ている。


「明日は夕食を二人分用意してくれ」


「分かりました、どなたかと食事ですね、でしたら明日のお食事の際はトワ様の近くに控えさせて頂きますね」


「何を言っているだ?」


「ですから、明日の来客の私の立ち位置の話ですよ」


「明日の二人分は自分とキティの分だよ」


「は?・・・ひゃい、いいいけません、何処にメイドと食事をする方が居るのですか」


「いや、ここに、やっぱり嫌か?」


「嫌ではないです、むしろ嬉・・い・す、はい、分かりました、明日は食事を御一緒させていただきます」


 また聞こえない所が有ったがニーナの機嫌が悪くなっていそうなので通信はしないでいる、キティは上機嫌なのか頭部の耳がピクピクしている。


「王様からの言伝ですトワ様、明日ベガ国王がお会いしたいとの事です」


 キティは思い出したかの様に用件を伝える。


「トワ様にお願いされていた物を用意したとの事です」


 国王に頼んでいた地図と通行書が手にはいるのか、これでコンテナの位置を把握出来る、エリザとアリアナの件が片付いたら捜索を始めよう。

 食事が終わりキティが片付けする、キティに城内を散歩すると伝え部屋を出る。

 城内を歩いているとバルコニーにマリアがいた、風に乗って石鹸の香りするので、どうやらお風呂上りの様だ。


「クシュン」


 夜風に当たり体が冷えたマリアはくしゃみをした、トワは着ていた外套をマリアの肩に掛けてやると、驚いた顔でこちらを見たがトワだと分かると優しく微笑む。


「風邪をひきますよ」


「ありがとう、暖かいわ」


 マリアは外套をギュッと握って外套に顔を埋める。


「こんな時間にどうしてここに?」


 マリアに夜も更けてきたこんな時間にバルコニーにいる理由を尋ねてみる。


「オルターはこのバルコニーから見える城下町の灯りが灯っている景色が好きだったの」


「そうなのか、自分は死際のほんの少しだけ会っただけだから、オルターってどんな人だったんだ?」


 マリアは一瞬寂しげな表情をしたがすぐにいつもの様に微笑み浮かべ語りだす。

 オルターはレイと、とても仲が良く小さい時は二人でいたずらしてベガに怒られた事や、冒険者ギルドに登録してダンジョンに冒険した事な取り留めの無い話や大事になった話を語った。

 おもむろにトワはマリアの肩に手を置いく、びっくりしながらトワを見るマリアに、もう片方の手でマリアの瞳に溜まった泪を掬う。


「温かい泪だな、オルターとちゃんと会ってみたかったな、マリー、君が語るオルターはとても気持ちのいい奴みたいだな」


 トワの言葉を聞いたマリアは俯き、少し震えた声で、


「トワ様、少しの間でいいので胸をお貸しください」


 そう言ってマリアはトワの胸に顔を埋めて声出して慟哭する、マリアが落ち着くまでトワはマリアの頭を撫でながら泣き止むのを待った。

 暫くしてマリアが落ち着きトワから離れると顔が朱に染まっていた。


「すいませんトワ様、優しいですね」


「いや、誰かのために泣けるのはいいことだ、自分はもう涙は涸れたからのか、知っている人が死んでも泣かないだろな、冷たいヤツだよ」


「冷たいだなんて、そんなこと無いです、私が泣いているとき、嫌な顔をしないでずっと一緒いてくれました」


 トワは苦笑してマリアに何を言っても無駄かと思った、どうやらマリアの自分に対する評価が妙に高い様だ。


「マリー、もう遅いからお休み」


「はい、ありがとうございました、では、おやすみなさい」


「ああ、おやすみなさい」


 トワは部屋に戻り少し濡れた服見ながら、ベッドに入り目を瞑り。


「自分は、他人の為に泣けるのか?」


 その言葉は誰に向けて放たれたか、夜の闇に消えていく。

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