第19話 童話

 扉を開けたアリアナがトワに抱きつき部屋に引っ張り入室させられる。


「アリアナ、あまりくっつかないでくれないか、隣のお姉さんが凄い怖いのだが」


 ユーラから殺気を感じてアリアナに離れて貰いたいのだが。


「いや」


「いやって、いいかいアリアナ、今から自分は君の護衛の為に君の近くにいる、離れてくれないとアリアナ、君を護れないから離れてくれ、これはアリアナ、君の事を想っていっているのだよ」


 アリアナの頭を撫でながら言うと、アリアナは渋々だが何故か嬉しそうな顔で離れてくれた。

 テーブルを見ると食事が数人分用意されていた、アリアナは今から昼食の様だ。


「お兄ちゃんが来るって聞いて、お兄ちゃんとユーお姉ちゃんとお昼食べようと思って待ってたよ」


「ユーラも?」


「ええ、仕事を終わらせてから来ようと思っていたのですが、隊長が仕事を変わって貰えましたので」


「変わって貰・・・何でもないです」


 ユーラに睨まれたトワは部屋を見渡すと別の机の下に本が散乱していた、先程の音は本が落ちた音だったのか。


「この本は?」


 目についた童話らしき本を取るとタイトル名が「光りの勇者と闇の巨人」だった。


「その童話は大陸では有名ですがご存知無いですか?」


「ああ、すまない知らないんだ、良ければどんな話か聞かせて貰えるか?」


「はい、いいですよ、とりあえず食事が終わったら話ますね」


 テーブルに座り昼食を食べて後、食後のお茶を飲みながら童話をユーラが話を始める。


 《むかしむかし人々は争っていました、とある国の王様が民の平和を脅かされる事を憂い、争いから民を守る為に破滅の巨人を呼び出す儀式をしました、国の王様は儀式の際に破滅の巨人から、自分の娘を差し出す事を条件にこの国を争いから護って貰うようにお願いしました、最初は他の国から護ってくれましたが時経つと破滅の巨人は世界中の悪い物を体に取り込むと、破壊の巨人は世界中に争いを仕掛け始めました、世界中の人々が団結して止めようとしましたが、破滅の巨人は世界中の悪い物を取り込んで闇の巨人に進化して誰にも手が付けられないませんでした、世界中の皆で神様にお願いすると、何処からともなく光を纏った勇者が現れて、闇の巨人を倒しに行こうとするが皆は人の大きさしかない勇者を止めようとします、皆の心配が分かった光りの勇者は光を纏った巨人を呼び出して、闇の巨人と対峙して激しい戦いの末に闇の巨人を倒しました、それから闇の巨人に差し出され手の届かない所に幽閉されたお姫様を無事に救い出し、こうして平和を取り戻した勇者はお姫様と結婚して国を作りました。》


「という話ですが、勇者と結婚したお姫様がどの種族かは種族毎に変わりますね」


「例えば?」


「お姫様が獣人だったり、魔族だったりします」


「なるほど」


 アリアナは食事が終ると眠そうになり船を漕ぎ始めた、この童話は寝物語なのかとアリアナを抱えると眠ってしまったのでベッドに寝かせるとユーラが仕事に戻ると言った。


「時間が来ましたらまた来ますので、それまで護衛よろしくお願いいたします」


「ああ」


 そう言ってユーラは部屋から出ていく。

トワはアリアナの近くで他に有った本を読みながら護衛を始める。



 暫くしてアリアナが目を覚ます。


「おはよう、アリアナ」


「うーん、はーふ、お兄ちゃん、おはよう」


 と挨拶を交わして、アリアナは礼拝堂に行くので護衛として後ろに付いていく。

 礼拝堂でアリアナが祈りを捧げるのを見ながら神官や修道女を観察していくが特に変わった動きはなくやはり国葬の時までは目立った動きはしないのか?と思っていると、トワが教会に来た時に会った司祭が礼拝堂の死角になっている辺りいくと、周囲を見渡しそして壁の中に消えた、誰も観ていないのか誰も騒ぎ立てない。


「アリアナ」


「なぁにお兄ちゃん?」


「あの辺りに部屋は有るのか?」


「うーんと、前は有ったらしいけど今は老朽化して危険だから封鎖してたはずだよ?」


「ありがとう」


「どういたしましてお兄ちゃん、でもよく分かったね」


「何となく違和感が有ったからな」


「凄いねお兄ちゃん」


 正しくはデバイスに教会の構造をスキャニングさせて、トワの目に映しているから気付いたので、表示を切ると小部屋に通じる扉が壁になっている、触ってみるが触感は壁その物であった。


「これはクローキングデヴァイスか!?」


 トワは驚きならがも声は小さくし平静装い、詳しく調べたかったが、扉を開けて中に入った司祭と鉢合せする上にアリアナの護衛中、後程詳しく調べるかと思っているとアリアナが外套を引っ張っていた。


「お兄ちゃん、やっと気付いた」


「ああ、ごめん考え事してた、どうしたアリアナ?」


「もー壁なんて見ても面白くないよ、礼拝堂の楊子は終わったからお部屋に戻るよお兄ちゃん」


 若干不機嫌なアリアナに付き従い部屋に戻るとそこには待っていたユーラがいた。


「お帰りなさいませアリアナ様」


「ただいまユーお姉ちゃん」


 アリアナはユーラに抱きつきながら今日のあった出来事をユーラに話していた。

 それからユーラと護衛任務をこなすと護衛の終了の時間になり城に帰る事にしたが、帰る際にアリアナが引っ付くが頭を撫でながらまた明日なと言って教会から出る。


 教会から出ると辺りは暗くなっており店の明かりと住民の陽気な声が聞こえて来る中をお城に向けて歩き出す。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る