第18話 護衛任務

 教会の敷地に入ると昼食の準備をしているのだろう、風に混じって食べ物の匂いがする教会の中に入ると司祭と思われる男性がいたので声を掛ける。


「すいません、お尋ねしたい事が」


「ようこそユリアナ教会へ、して聞きたい事とは?」


「警備隊長のマルキス殿と会う予定でして、マルキス殿はどちらに居りますか?」


「マルキスですか、確か今は警備隊の詰所にいるはずです」


「ありがとうございます」


「いえいえ、ああ他の者に案内をさせますよ、シスターミアこちらの方を警備隊までご案内してあげなさい」


 ミアと呼ばれたシスターがこちらに来て会釈する。


「ミアと申します、では警備隊までご案内します」


 ミアに案内させ教会の端にある部屋までたどり着くとミアが振り返り告げる。


「こちらが警備隊の詰所になっております」


「ありがとう」


「いえ、それでは失礼します」


 ミアはお辞儀をして去る、トワは警備隊の扉を開くと数名教会騎士と奥の机にマルキスがいた。


「失礼します、マルキス殿に呼ばれたので会いに来た」


「よく来てくださった」


 マルキスが立ち上り手招きをしてトワを招く。


「少し早かったですか?」


「大丈夫です、他の二人を呼んで参るのでそこの会議室で待っていてください」


 会議室の扉を開けてマルキスは他のメンバーを呼びに行った。

 暫くして会議室の扉が開くマルキスが他のメンバーを連れて戻って来た。


「お待たせした」


「トワさん昨日振りです」


「初めまして、サクラです」


「ああ、よろしく」


 サクラが手を差し出し握手を求めてきたので応じる。

 マルキスが護衛の説明を始める。


「この説明が終わり次第トワ殿がまずは護衛に就いてもらい次はユーラ、自分、サクラの順で護衛に当たるが問題は一週間後に行われる予定のオルター王子国葬だ、これには各国の王族などの国賓や有力者等か集まる、その会場でアリアナ様を殺めればユリアナ教会が内部分裂するのが目に見えている」


 トワが手を挙げる、マルキスが頷いて発言を促す。


「ユリアナ教会が内部分裂したら、教会内部の人間だと不利益が生じるのでは?」


「教会にとってはそうですね、内部を秘密裏に調べたところ内部の人間はどうやら反抗組織有明けの翼の人間だと分かった」


「有明けの翼?」


「信仰は堕落の考えを教えに過激な武装集団で、組織の全貌はよく分かっていないのですが今回の犯人達の一人は組織の幹部らしいのです、何としても捕縛したいと他の教会はユリアナ教会への協力と敵視が半々な現状で疑心暗鬼になっており、そこでアリアナ様と面識があり、教会関係と一切関係を持たないトワ殿に白羽の矢が立ったのです」


「なるほど、しかし自分は、国葬の際は王宮側で出席の要請がありそうなんだか」


「ふーむ、でしたら当日は国葬の全体的に視て貰えれば良いかと、王族の関係者の席なら会場の全体が見渡せるはずですので」


「了解した」


 それから細かな注意点などの説明され、終了は昼が少し過ぎた頃になった。


「では以上で解散です、トワ殿はアリアナ様の護衛をよろしく頼みます」


 部屋を出る際にサクラに呼び止められた。


「トワでいいですか?」


「構わないが用件はそれだけか?」


「いえ、次のトワと私が護衛から外れているとき話が有りますので時間を空けておいてください」


「分かった」


「ありがとうございます、では仕事に戻りますので」


 用件を済ませると足早に去って行くサクラ。

 会議室を出てマルキスの所に行く。


「どうしました?」


「どうしたかって、自分、アリアナの場所知らないのだか?」


「あ、ああ、すいませんユーラ、トワ殿をアリアナ様の所までご案内を」


 机で事務仕事をしていたユーラを呼ぶ。


「仕事はいいのか?」


「はい、マルキス隊長が滞った分の仕事はやってくれますから」


「あ、はい、やらせてもらいます、あ、でも早く帰ってくださると助かります、いえ、急がないでいいです」


 ユーラがマルキスを冷たい目線で見るとマルキスは萎縮して頷く。

 マルキスは隊長と呼ばれてた威厳が何処かに行ったのか?部下に睨まれて部下の仕事をしている。


「トワさん行きますよ」


 ユーラは何事も無かったかの様に歩き出す。


「マルキスは大丈夫なのか?」


「ええ、普段は頼りない感じがしますが、有事の際は決断力と武力はかなりの物です、でなければ教会騎士の隊長にまで上り詰める事は出来ないですから」


 廊下を歩き階段を登って教会の奥まで歩くと目的の部屋に着いたのか扉をノックする。


「アリアナ様、ユーラです、トワさんをお連れしました」


 部屋の中から何かがひっくり返った音がしてから扉が開いた。


「お兄ちゃん、いらしゃいませ」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る