第6話 宿場町



宵の口になって漸く宿に到着した、日が沈み宿の食堂は食事処と酒場を兼業しているためか人が多く賑わっていた。

受付で手続きをしていたオージが先に食堂のテーブルで待っていたトワとアリアナの席まで来る。


「適当に注文していて良かったのだが?」


テーブルには飲み物が載っているだけで、二人は何も食べずに待っていた。


「いや、流石に宿の手続きをしてもらっているのにこちらだけ飯を食うのはどうかと思い待っていた、それで部屋は取れたか?」


「うむ、丁度良く二人部屋と一人部屋が取れた」


 オージは席に座り周りを忙しそうにしている店員を呼んで三人分の料理を注文していて、少しして料理が運ばれてきた食事を摂るとお腹膨れて落ち着いたのかアリアナが眠そうにしている。


「すまないがアリアナ様を部屋に運んでくれまいか?」


「構わないがいいのか?、よく知らない男に大切なお嬢さんを任せても」


「うむ、それもそうであるがアリアナ様が此処まで懐かれるのも不思議に思うが、それにそれでは私が運ぶわけにもいかんだろう」


 オージの視線をトワが追うと、その視線の先には落ちかけているアリアナがトワの外套の端を握り締めていた。


「そう言う訳だアリアナ様をよろしく頼む、私はここで情報収集をしてから休む」


 しょうがないとトワがアリアナを背負って部屋に戻る事になった。

ベッドにアリアナを寝かせて、なんとかアリアナが握り締めていた外套から手を解いて自分の部屋に行く、アリアナを連れて部屋に戻る際にオージから明日は朝食を食べてから出発する事を伝えられていた、トワは自分の部屋に着きベットに腰を下ろしてデバイスを操作してニーナを呼び出す。


「ニーナ確認したい事がある」

【何でしょうマスター?】

「用意された装備のレベルはどの程度だ?」

【この星のレベルが不特定かつ任務遂行に支障が無いようにする為、現在用意出来る限りの最上位レベルで準備しました】

「・・・」


つまりだ、今着ている服や外套、そしてナイフ等の武装は自分が知ってい最高水準な訳で、この星のレベルが不特定言えど民間人が身に付ける様な物では無い、例えるなら冒険譚等に出て来る様な勇者の装備と同じかそれ以上の物だ。

ニーナは心配性な気がするのだか。


「もう少しランクを下げても良かったと思うが」

【否定します、マスター、今回の装備は考えられる全ての危険性を考慮しました】

「まぁ、今さらどうこう言ってもしょうがない」


今日は色々な事が有ったためか疲労を未だに感じる、まだこの星に慣れていないのかもしれない。

ニーナに敵意を持った者が近づいた場合のみ起こすように言ってベットに横になり眠りに就く。



***


 朝起きると体が重い気がした起きようと思い掛け布団を捲るとベットには何故かアリアナが眠っていた。

 捲った掛け布団を元に戻して透かさずニーナに連絡を取る。


「???、・・・ニーナ」

【何でしょうマスター】

「何でアリアナがベッドにいるんだ?」

【昨晩マスターが眠りに就いてから、暫くしたら扉から来ましてベッドに入るのを確認しました】

「何で起こしてくれない?」

【敵意を持っていない為に必要がありませんでした】

「・・・そうか」


 体を起こし眠っているアリアナを抱えオージに渡そうと思い、不用意にオージ達の部屋を開けるとそこには着替え中の知らない少女がいた。

 トワは少女と目が合い双方動けないでいるとアリアナが起きた様だ、アリアナの動きで固まったトワと少女は動き出す。


「・・・すいません、部屋を間違いました」


 トワは謝罪と共に扉を閉めると、閉まった扉の向こうから少女が叫び声を上げる、トワは周囲の宿泊客に謝罪してから再度部屋を確認するが間違いなくオージとアリアナの部屋だった。


「・・・ふぁーあ、あ、お兄ちゃんおはよう」


「・・・あ、ああ、おはようアリアナ」


 寝ぼけ眼を擦りながらのアリアナと朝の挨拶を交わす。


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