第17話番外編 SFを形容する言葉
SFを形容する言葉はいろいろあります。そのあたりについて少し書いてみます。基本、なろうなどでの書き手の意識に関係したものだろうと思います。
まず、「スペース・ファンタジー」、「サイエンス・ファンタジー」あたりですが。それ、自分で「ファンタジー」って言ってますよね? なので対象にするまでもありません。ご退場はあちらから。
さて、「少し不思議」という言葉もあります。ですが、この言葉って「一周回った人」だからこそ言える言葉だと思います。何でもいいです、「少し不思議」と思える作品を読んでみてください。それ、本当に「少し」不思議ですか? おそらくは、「この世界はどうなっているんだろう」とか、「この人物はどう考えているんだろう」とか、かなり強いモヤモヤが残ると思います。それを「少し不思議」という言葉で済ませられますか? 「少し不思議」とは、見た目では少し不思議で済んでしまうけれど、読むと底無し沼のように深い作品を形容する言葉だろうと思います。なので、「少し不思議なものが書けた」という時の「少し不思議」とは、たぶん意味が違うでしょう。
あるいは、野田氏の「SFはやっぱり絵だねぇ」という言葉もあります。これもまた、「絵です」というもの指しているのではなく、「魅せる絵」を指しているのだろうと思います。「こんな絵を書きました」とは違うんじゃないかと思います。
これらを踏まえて考えてみると、書き手としては、「少し不思議」、「絵だねぇ」という言葉は、ひとまず封印してみるのがいいだろうと思います。というのも、簡単に逃げ道になりかねないから。「少し不思議」や「絵だねぇ」という言葉は、精製された、何か純度の高いというか、突き詰められたものだからこそ通用するのだと思います。
ここで「逃げ道」と書いたのは、「少し不思議」とか「絵だねぇ」について、「あ、少し不思議な感じのを書けた」とか「こんな絵を書いてみました」というところで、「これでSFだ」というように思ってしまうとか、そんな感じのことがあるだろうと思うからです。
SFについては、他に「センス・オブ・ワンダー」という言葉もあります。私としては、これもどうかなと思います。この言葉も書き手としてはひとまず封印してみるのがいいだろうと思います。というのも、「少し不思議」にいくぶん似てるかもしれません。書き手が「わお!ワンダー」と思い、「これでSFだ」と思ってしまうとか。それとともに、捉えどころのなさもやはり疑問になります。
このように、よく言われるSFを形容する言葉は、捉えどころがなく、かつ書き手にとって簡単な逃げ道にすらなる。SFの捉えどころのなさが、そもそもあるのだということもありますが。それでも、どうしたものだかと思わないではありません。
そこで掘り起こしたい言葉があります。サイバー・パンク時代に言われた「ON THE EDGE」という言葉です。サイバー・パンク時代とは違う意味で、それを考えてみたいと思います。いや、実際には当時からここで書く意味もありましたけど。でも、こっちの方はあまり浸透していないかもしれません。
「ON THE EDGE」のこの意味での感覚は、「時代のその先へ」という感じと思って下さい。「時代」というのは、現実の時代についても、虚構が編み出す時代についても、あるいは現実の時代に存在する複数の虚構によって編み出される時代についても、指しています。
サイバー・パンク時代は人物がON THE EDGEな解釈が普通だったと思います。それに対してこっちの場合、言うならペン先にあるもの、書いているものこそがON THE EDGEな感じです。あるいは、ペン先にあるもの、書いているものそがEDGEな感じ。そのEDGEが触れている「時代」が、EDGEにONしてる。なので、「時代」がEDGEによって、ピリピリと切り裂かれ、「その先」が見える感じ。という印象で、「ON THE EDGE」だからこそ、「時代のその先へ」という感じです。
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