第14話ラノベの系譜
ライトノベルって、どこまで遡れるのでしょうか。それを少し考えてみたいと思います。それ書いてなかったなと思い出したので。
以下、ラノベの系譜に注目しているため、著名な作家でもあまり関係しそうにない人は無視しています。
さて、「ラノベの元祖っていったらアレだよね」というようなことを思った方、おそらくちょい流れを見るのに練習が必要です。
ラノベは、日本においては少なくとも明らかにジャンルが「ジュヴナイル」と言い現わされていた頃にまで遡ることが可能です。1970年代とその前後が最盛期でしょうか。眉村卓、筒井康隆、小松左京も書いていました。有名なのは、眉さんのだと『なぞの転校生』。筒井康隆だと何と言っても『時をかける少女』かなぁと思います。ジャンルとしての作風などに違いはあるろうとは思いますが。
さて、「ジュヴナイル」としてSF的要素を含むジャンルになっていたのは、たぶん日本独自かなと思います。米国とかだと、あるいは現在の日本だと、「ヤング・アダルト」ととも言われます。その場合、SF的要素、あるいはファンタジー的要素を含むとは限りません。児童文学よりも対象年齢が上という程度の分類ですので。もちろん、そこに含まれるのは「ヤング・アダルト」とか「ジュヴナイル」と、対象年齢を示す必要もない作品も多くあります。
まぁ日本で「ジュヴナイル」がSF要素を含むものとなった理由は想像がつかないわけでもありません。「SF的要素を含むようなものは女子供の読むもの」という、日本における歪な認識があるんだろうなと思います。ですが、眉村卓、筒井康隆、小松左京も書いていたようにいい作品がたくさんあります。
で、「SF的要素を含むようなものは女子供の読むもの」という同じ理由で、「ジュヴナイル」以前に系譜を辿るのも、ちょっと難しくなります。というのも、明らかに子供向けなのと、コメディとスラップスティックとかが混在しているためです。
その後、その系譜は一旦途切れかけます。というのも皆、先鋭化を進めようとしたからです。筒井康隆は、先鋭化については極端な人かもしれません。
本人の感としてはどうかはわかりませんが、そこに新井素子と大原まり子が現われました。まぁどっちかというと大原まり子の作品は少し難しい感じがしないでもないので新井素子の方を代表にしておきます。それまでのジュヴナイルとは少し感じが違いますが、ある意味では気楽に読める感じはジュヴナイルともラノベとも共通するものではないかと思います。
その後、日本においてはSFが一旦消えかけます。もうみんな先鋭化しちゃって。作家の人数は変わらなかったかもしれないけど、目立った新人もどれほど現われただろうかという状況だったと思います。
そうしている間に、ラノベが現われました。ジュヴナイルからの流れだとSF的要素を持ったヤング・アダルト向けという面が見えるかもしれません。あるいは、ある程度気楽に読めるSFあるいはファンタジー的要素を持つ作品という見方をしてもかまいません。そこの解釈はどっちでもかまいません。ヤング・アダルト向けと書きましたが、別にそこを程度の低いものと見ているわけでもありません。
というわけで、作家や作品に直接の系譜はないかもしれません。ですが問題は、「そこが空隙になる」ということです。その空隙が現われては埋められ、また現われては埋められということが起こっているというところに、ここでは注目しています。
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