第8話世界および事件とSF

 「ファンタジーとSF」でも「ミステリとSF」でも、世界がどう違うのか、起きることになにか違いはあるのかというあたりについては触れていませんでした。「ミステリとSF」の冒頭では、「SFではなんでも書けるから」と説明したというか、放り投げていましたが。夢の中に、ゆめゆめ忘れるなかれとでも言っていそうな感じで後光を輝かせて出てきたものがあるので書いておきます

 とは言っても、面倒な話ではありません。ニーヴン&バーンズによる「ドリーム・パーク」という作品がある、というだけです。

 この「ドリーム・パーク」は、内容よりも設定が興味をひくという類のものだろうと思います。その設定は、体感型RPG施設「ドリーム・パーク」です。RPGを実際に体験できるようなテーマ・パークです。箱に乗って眺めていくというものではなく、プロのGMもいる、ちゃんとしたRPGを遊べるんです。ドームごとに、地形が変化するとか地震とかなんてところまで再現できるような施設です。視覚的効果については、ホログラムを使っていたのか、ゴーグルをつけていたのか、ちょっと思い出せません。視覚効果の面も含めてということになりますが、ロボットも使っていた気がします。

 最近でこそ、VRやARが人口に膾炙していますが、1980年代前半(原作はいつなのだろう?)の作品です。しかも、VRやARだけに頼らず、ドームごとに地面が揺れたり陥没したり隆起したりするんですよ。実際に。物理的に。RPGを体感型で遊ぶためだけに。大人数を箱に乗せて、映像を見せていくという、利用者を一気に片付ける方法も、もちろん使えません。「遊ぶのにいくらかかるんだろう?」という単純な疑問がでてくるほどの施設です。「ほほう、設定としては面白い」と思っていただけなかったら、「その設定はSFだな」と思っていただけなかったら、「SFってなんなんだろう」という文章を書いている私は困るかもしれません。

 では、そのドリーム・パーク内でのセッションで何ができるのか。単純に考えて、何でもできます。「SFではなんでも書ける」というのは、そういうことです。ドリーム・パークという場所を、SFというジャンルにあてはめて考えてみてください。少し単純すぎる話に持って来てしまいましたが、そういう話ということになります。

 さて、SF読みの困った習性に、「世界だけ」でもその作品を評価してしまう場合があるとか、あるいは内容よりも「世界の方に」魅力を感じてしまう場合があるという点があります。ドリーム・パーク、こんな施設があったら遊んでみたいですよね?

 いまどきだとどうなるのかはわかりませんが、当時ですと、当たり前とでも言えそうに、TRPG「Dream Park」がやはりありました。設定資料はやはり小説よりTRPGの方が詳しかったように思います。「TRPGの中で、RPG施設の中で遊ぶの?」と疑問に思う方もいるかもしれません。ですが、そこは、それを支える技術などがあって云々というところを意識しながら、それも含めて楽しむわけです。その技術のところに言及する場面があったりして、現実と、想像の向こう側を橋渡ししてくれる「ドリーム・パーク」があるという感じでしょうか。あるいは、「やはりそれはどうも」という場合であれば、ドリーム・パーク内でのセッションではなく、ドリーム・パークそのものを舞台にした何かを遊べば構わないわけです。これだけ無駄技術や無駄エネルギーを使っている舞台です。いろいろなことが起きる場所としては充分でしょう。小説は、後者の感じだったと思います。

 まぁドリーム・パークが夢のなかに出てきたというだけの話でした。

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