第4話ファンタジーとSF

 いろいろ書きましたが。今回はファンタジーとSFについて、とくにその融合について書いてみます。


 さて、ファンタジーとSFは分離できるのでしょうか? これが実のところ案外難しい問題です。要点は、魔術などはテクノロジーなのかというところになると思います。魔法や超能力があるのだ。それが何なのかは説明を試みないというのもフィクションとして正統的なものですが、それはこれとは別の話ということで。

 現実の歴史ですと、どこのものであったとしても魔術はなんらかの意味でテクノロジーと考えられてきました。どういう理屈で、それが体系化できると考えたのか。それは分かりません。ただ、自然に対して介入するテクノロジーと考えられ、体系化が試みられてきました。

 これについて補足すると、声であっても文字や記号であっても、言葉そのものが魔術であったことは挙げておかないといけないかなと思います。日本の言霊というのは有名かと思いますが、これは別段日本に限った話でもなく、世界中どこでも同じです。「考えが伝わる」ということだけを見ても、不思議なことです。もうね、意味論とか「暗黒大陸」なんて呼ばれたりもしているとかいないとか。言葉を根っこにして魔術の体系化が試みられても、それについては不思議ではないと思います。その後が不思議ではありますが。

 現実とフィクションの境目としては、心身二元論を挙げておいていいかと思います。生命が宿るとか、考えることができるとか、そういうのはなぜなのか? 物質的なものとしてそれを説明することはできず、生気とか魂とかそういうものがあるからだというような考えです。ちなみに、昔の西洋では動物には魂はないと考えられていたことを補足しておきます。つまり、心身二元論は人間について何か説明をしようと考えたものです。その生気とか魂が、自然に対して介入できるのであればという考えは、浮かんでも当たり前でしょう。まぁ、心身二元論自体が、「それってどうなの?」と言われているわけですが。そうであっても、少し形を変えたものが何回も何回も現れています。今っぽい言い方をすれば、「人工知能やロボットに魂はあるのか?」という感じのものは心身二元論に近い疑問でしょう。


 んと、脇道になりますが、これに関係しそうなものとして注意が必要かもしれないものとしては、アリストテレスの「栄養霊魂」というものがあります。名前がどうなんだろとは思いますが。これは心身二元論というものでもなくて、「仕組み」であり「メカニズム」です。生命をもたらす「仕組み」があるというような感じです。


 さて、ではフィクションに話を移します。

 超人ロックでは、サイ・エクスパンダーやパペットやジャマーとか、超能力に介入するテクノロジーが登場します。技術面、あるいは理屈付けとしては、第一波動、第二波動、第三波動というものが登場します。波動関数とかからの発想だと思いますが。第一波動は通常の物質とエネルギーに関するもの。第二波動は超能力に関するもの。第三波動は、それ以外の何か。描写としては時間に介入できるようなことは描かれていますが。

 そういえば、超人ロックの結構昔で、誰かが「俺はお前の影だ」とか言っていましたが。誰でしたっけ? どっかに飛ばされたけど復活はしないのかな?

 また、作品名は失念しましたが(大変申し訳ありません)、術式を構築するというところがテクノロジー寄りに描写されている作品もあります。これについては少しだけ関係する話を後ほど。

 同じく作品名は失念しましたが(本当に申し訳ありません)、量子の場のようなものに介入するという描写がなされているものもあります。ロジャー・ペンローズの「量子脳理論」というものがあります。これはフィクションではなくて、本当にあります。脳細胞のなかの微小器官の中で量子的効果があって云々というものです。まぁちょと「どうなんだろ?」と思わないでもありませんが。どこまで介入するのでしょうか?クォーク? 色量子論のあたり? 仮想フィールド? この設定をきっちり記述や描写をすると、ファンタジーや超能力ものでありながら、ハードなSFになるかもしれません。

 フィクションですから、「こういう設定を使ってはいけない」というようなことはないと思います。まぁ、あまりに科学的であったりすると雰囲気が削がれるというようなことはあるかもしれません。

 さて、術式構築系について少しばかり補足を。これは例えて言うなら、「プログラミング」という概念を導入したものでしょう。実のところ魔術の概念としては極めて正統派です。呪文、呪符、魔法陣、それらはプログラミングであったのですから。これの中身をみると、おそらく2系統あります。まずは、魔術そのものを使うためにプログラミングを行なうもの。特にプログラミングの概念を現代的なものにしたもの。そしてもうひとつは、「実は魔術などない。テクノロジーがあるのみ」というものです。後者については拙著 Methuselahの3-2 ( http://ncode.syosetu.com/n9320cn/1/ )に試みを挙げてあります。


 なお、こちらでの追記:

 プログラミングの概念を魔法に導入するのはかまいませんが、それが手続き型言語の形式をしているのはどうかなと思います。というのも、魔法は基本「かくあれ!」というものなので、手続き型よりもむしろ関数型や論理型のプログラミングに近いはずです。

 追記ここまで。


 あるいは、これ以外のものとしてラリー・ニーヴンの「リングワールド」を挙げてみても面白いかもしれません。計画的な交配を重ねて「幸運な人間」を生み出そうというのが盛り込まれています。まぁ「誰にとって幸運なのか」というあたりで結末に結びついていますが。説明などない。ただ魔法なり幸運なり、何かそういうものがあるのみという系統に属するといえると思います。おおっと、この系統については除外しておいたのに。でも、その系統も科学的設定をつけようという試みはやはりあるんですね。

 さて、魔法や超能力に説明をつけるとしたら、どのような説明を試みますか?

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