第7話 初仕事
そして現在、六月六日。時刻は午後五時。
昨日俺は一応仕事を始める事が出来た。
のだが。やっぱり連絡は来なかった。やっぱりというと諦めていたかのように捉えられるかもしれないが、なんだかんだ依頼が来るんじゃないかと楽しみにしていた自分がいた。
馬鹿だった。十六歳の男が考える事なんて所詮この程度だったのかな。
ああー。何となくは分かっていたけどつらいなー。お金を稼ぐって事を完全に舐めてたわ。
絶望を味わいながら椅子に持たれてぐったりながら、コンビニで買ってきたフライドチキンをむしゃむしゃ食べながら過ごしていると、気が付けば六時。夕飯も作る気が起こらないので、スーパーで割引されているお惣菜を買いに行こうと椅子から立ち上がった瞬間、携帯が鳴った。
「マジかよっ!!」
表示されたのは数字だったので、俺が登録してる人以外からの着信だった。
ドキドキしてる暇もなく携帯を手に取る。
「はい!雨乃です!あ、じゃない。雨乃お悩みはい相談事務所です!」
元気よく応答した瞬間、電話を切られた。
あーあ。出たよ。あるだろうとは思ったけどいたずら電話だよ・・・
がっくりしたと同時にちょっと苛ついたので、持っていた携帯をぶん投げたら、机の上に置いていた食べかけのから揚げ棒に当たり、床にから揚げが無残に落ちた。
携帯も油でべっとりしてしまった。悪循環だなおい!
上げて落とされたので気分は最悪だったが、そんな事よりお腹が空いているのでいち早くお惣菜を買いに行こうと玄関に向かった時、再び携帯が鳴った。
机の上に置きっぱなしにしていた携帯を急いで見に行くと、そこには先ほどかかってきた番号が表示されていた。さっき急に切ったくせに、何でまた掛けてくるんだ。
一応出ようと思い、べったべたの携帯を手に取り、耳に当てた。実に不愉快だった。
「はい、雨乃相談事務所です!」
すると、先ほどと違って電話が切られる事はなく五秒ほど無言の状態が続いたので、もうこっちから切ろうと思った瞬間、可愛らしい声が聞こえた。
「あ、あの!こんばんは!私の名前は
小学生だと!?まさかの依頼人だな。とりあえず話を聞くか。
「気にしないでね。それよりも、お電話ありがとうね。この電話に掛けてきてくれるって事は、何か悩んでる事があるのかな?」
「そうなんです。パパやママにも内緒にしておきたい事なんです」
「そうなんだね。それじゃあ直接話を聞きたいんだけど、何日がいいかな?」
「明日学校終わってからでお願いします!」
「いいよ。それじゃ、夕方五時に喫茶こだわりって店に来てくれるかな?」
「はい、わかりました!あ、それと教えてほしいんですけど、雨乃さんの見た目の特徴を教えてほしいんですけど・・・・・・」
「あ、それに関しては大丈夫だよ。僕しかお客はいないから、すぐにわかるよ」
「そ、そうですか。はい。じゃあ、また明日お願いします!」
「はい。ではまた明日おねがいしまーす」
話してた時間は三分ぐらいだったのに、何故か長く感じてしまった。
ていうか小学生の女の子が初めての依頼者って何だか面白いな。
初めての依頼に俺は心躍らせながら、半額の惣菜を目指しにスーパーへ向かった。
訳アリ男のお悩み解決譚 白子うに @ShirakoUni
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