第4話 動き出した計画
とりあえず私の目的は達成したので、今後の事についてサタンにいろいろ聞いておく事にした。
世界を壊すとかなんとか言ってたし、もう一度確認しなければ。
私は目の前で一服しているサタンに質問した。
「とりあえず、今後どうするか聞いておきたいんだけど」
「ん?せやなぁ。ほんじゃ、ちょっと詳しく話そか~」と言い、サタンは姿勢を正した。
「まず、生きとし生ける物の頂点に立つためには、うちが再び悪魔のリーダーに返り咲く事が最低条件になる。そうせえへんと、この世界を壊すどころか神と天使にも勝つことは不可能や」
「なんでそれが最低条件なの?」
「大魔神になった時、その者だけが破壊の力を手に入れる事ができるんや」
「だったら、なんでサタンが大魔神の時にこの世界を壊せなかったの?」
「大魔神になったからって物事は簡単に進むわけやないねん。世界を壊すためには、神と天使を相手にせなあかんのや。天使と神の長もそれぞれ創造の力も持っとるからなぁ、こいつらを消し去らへんとあかん。せやから、うちら悪魔は毎日の様に争っていたわけやねんけど、どう考えたって分が悪かった。悪魔・神・天使。お互い仲が良いわけやなくて、普段はあまり干渉する事はない。まぁ、三国志でいう魏・呉・蜀みたいな感じや。それぞれが均衡を保っているから今のこの世界は存在している。けど、うちら悪魔勢がこの世界を壊そうとして、まずは天使を消そうと戦を仕掛けると、必ず神が天使の手助けをしよるんや。普段は仲良くないくせに、こういう時だけ出しゃばってきよるんや。天使の相手だけならまだ勝負はわからんねんけど、神が手助けするとなったら話は別や。なんとか応戦してたんやけど、一回も勝てる事はなくてな。利害の一致かなんか知らんけど困ったもんやったわ。そうこうしてるうちに、うちの事を好いてなかった一部の悪魔達が反旗を翻して王の座を奪われたっちゅう事や」
「ふーん。なんか色々大変なんだね。話は大体わかったけど、とりあえず現段階の大魔神を倒せばいいって事だよね?」
「そうや。簡単やろ?うち一人じゃ厳しそうやったけど、あんたが一緒ならなんかいけそうやし」
「えへへ。嬉しい事言ってくれるんだね」
なんだか話してると楽しいなぁ。大変な話をしてるはずなんだけど。
「よし、ほんなら本格的に話していくで」とサタンはキセルを胸にしまい、真剣な眼差しで私を見ながら話し始めた。
「最初にする事は、『魔界を守りし七大魔王』と呼ばれとるやつらを一人ずつ倒していくんや。大魔神の配下となってるこいつらを倒していかへんと、王のいる場所への鍵が手に入らへんのや。可哀想な事にな、この七大魔王の中にはうちとめっちゃ仲が良かったやつが二人もおるんや。ほんとはうちと共に行動するつもりやってんけど、今の王の命令には逆らう事が出来ひんくてな~。だからしゃーないけど、今回はとりあえず戦わなあかんのや。悲しい話やで。今すぐにでもうちと行動したいやろうに・・・・・・」
「サタン可哀想・・・・・・」
「せやろ!?うちの気持ちを分かってくれるんか?ええ子やな~。ますます好感度上がるわ」と嬉しそうな顔をして、私を抱擁してくる。なんとも感情豊かな悪魔だろう。ここらへんは人間と同じで、悪魔にもそれぞれ性格があるんだろうな。嫌いなタイプじゃなくて助かった。
「なら、まずはその七大魔王を倒せばいいんだね。でも七大魔王って言うぐらいだし、かなり強いんじゃないの?悪魔歴半日の私がそんなすぐに戦えるの?」
「んまぁ確かにな。そりゃそこらへんのやつよりかは強い。けど、その七大魔王の中に一人だけ弱っちいやつがおるんや。なんで今の大魔神がそいつを七大魔王の一人にしようとしたのかいまだに理解不能なんやけど、とりあえずそいつを倒しに行くで。多分、うちが手ぇ出さんでもあんただけでいけるんちゃうんかな?そいつがあんたの記念すべき一回目の対悪魔戦になるわけやけど、そこであんたの能力もわかるはずや。四天王の一人を倒すことも出来て、あんたの訓練にもなる。一石二鳥やで!」
「そんな簡単に言うけど、ほんとに大丈夫なの?」
「大丈夫やて!もしほんまに危ないときはうちが助けたるさかい安心しーや」
どこからその自信が湧いてくるんだろう・・・・・・。まぁいっか。助けてくれるって言ってるし。
意外に私、強いかもしれないし。
あの大魔神サタンのお墨付きをもらってるんだし、もっと自信持とう。
「なら、今すぐその弱っちいやつを倒しに行こうよ。どうやって行くの?」
「おっ、やる気になったな。そのやる気が消えんうちに連れてったるわ。本来、悪魔はこの人間世界にはおらんくてな、異次元世界におるんや。まぁうちの様に、それなりの力を持っとる悪魔はこうやって人間世界にふらふら遊びに来れるんやけど」と言いつつ、サタンはごそごそと股の中に手を突っ込んで、金色に光る笛を取り出した。どこから取り出してるんだよと突っ込むと、よくどっかに無くしちゃうからここに入れてるねんとサタンは苦笑いしながら答えた。まったく、キセルも胸の谷間に挟んでたし、もうちょっと保管方法を考えたらいいのに。こういう所は人間と違って適当なのかもしれない。
サタンは取り出した笛を口にくわえて吹き始めた。その音色がまた心地良くて、聞いているだけで癒されるような音。サタンが奏でるメロディーは一分近く流れていた。
「ふーっ。よし、これで大丈夫」
「これでどうなるの??」
「それはやな~」とサタンが何かを言おうとしたところで、突然目の前の空間が歪みだした。そうして、大きく歪んだ真っ黒の空間から、何かがひゅんと飛び出してきた。
その飛び出してきた物を見てみると、それは真っ赤な炎に包まれた大きな鳥だった。
「紹介するわ。この子はうちの移動手段に使ってるフェニックスっちゅう子や。人間世界では不死鳥って呼ばれとるやろ?ま、それはその通りや。この子は不死身。不死身ゆえに苦労する事もあってやな。ある悪魔達に虐められてた所をうちが助けたってな、そのお礼にこうやってうちを運んでくれるんや。まぁ、こんな事言うのもあれやけど、別にこの子がいなくいても移動はできるんやけどな」
「え?じゃあなんで自分で移動しないの?」
「単純に疲れるからや。うちらもこの翼で移動しようとしたらできるんやけど、めちゃくちゃ時間もかかるし、体力も使うからなぁ。まぁ助けてくれたお礼がしたいってこの子が言ってくるから、こうして移動の手段に使ってる」
サタンはフェニックスの頭を撫でると、嬉しそうにサタンにすり寄っている。よっぽど懐かれているんだ。まぁ確かにサタンは好かれそうな感じだし。現に人間だった私もサタンの事は好きだ。
目の前に現れた伝説の不死鳥を観察していると、フェニックスは私の方を向き、頭をひょこんと下げて挨拶をしてくれた。急いで私は「よろしくお願いします」と挨拶し返した。こちらの言葉はわかるが、どうやら言語は話せないようだ。そこは動物っぽいんだな。
「ほな、紹介も終わった事やし早速行こかー」とサタンは、フェニックスの上に乗った。
燃え盛る炎を纏っているが、近づいても全然熱くはなかった。
サタンいわく、敵とみなしていない者に対しては何も感じないようになっているらしい。
よいしょっとフェニックスの背中に乗ると、案外乗り心地が良くて驚いた。
なんというか、高級な羽毛布団を何枚も重ねている上に乗っているような感じ。
乗り心地に感動していると、そろそろええか?とサタンが聞いてきた。
「あぁ、ごめん。もう出発しても大丈夫」
「了解。ほんならフェニックス、今から『グレムリン』のいる場所まで頼むわ」
そういうと、フェニックスはこくんと頷き、大きな鳴き声を上げて巨大な翼を羽ばたかせながら、大きく歪んだ真っ黒の空間に飛び込んだ。
いよいよ私たちは、目的への第一歩を踏み出した。
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