第3話 力試し

サタンが飛び去った後、一人取り残された私は当然のごとく暇になった。

なんとなく携帯を取り出してみるけど、誰からも連絡はない。

寂しいな、私。

つくづく友達が少ない事を痛感する。

それでも、私には数少ない親友が一人いるので別に気にしなかった。

その子にでも連絡しようかなぁなんて呑気に待っていると、急に突風が吹いた。

慌てて体制を立て直すと、目の前に私を虐めていた四人が宙に浮いていた。

「へいお待ち!」と寿司職人さながらの掛け声と同時に、サタンは手に抱えていたその四人を乱暴にコンクリートの床に投げつけた。

四人は状況がよくわかっていない雰囲気が見て取れる。

すると、リーダーの女がイライラしながら不満を口にした。

「もうなんなの?意味わかんないんだけど。風呂入ってたらいきなり何かに掴まれて学校に連れてこられるとか意味わかんない。マジなんなのこれ??超常現象ってやつ??なぁあんたらもわかる?」と取り巻きに質問しているが、当然他の三人がわかるはずもなかった。という事は、サタンはこの四人には見えていないって事だ。姿を見せたらそれはそれでややこしくなると判断したのかな。

よくみると、リーダーの女だけ裸だった。容赦ないなぁサタンは。せめてタオルぐらい持たせてやってもいいんじゃないかと少し哀れんだが、そんな気持ちはすぐに消えた。やっとこいつらを・・・・・・


目の前に私がいる事に気付かずにうろたえているそいつらに向かって、「おい!!」と私は叫んだ。

その声を聞いて、全員がこちらの方を向いた。

何故私がいるのかが理解できてないが、すぐに私を見てリーダーの女はキッと私を睨んだ。

「何であんたがいんのよ。ここにいるって事は、何か知ってるんだよなぁ」

「当然。ま、知ったところでどうせあんたらは死ぬんだから関係ないけど」

「はぁ!!意味わかんねーし!ていうか何でお前そんな偉そうなんだよ!いつもは黙って殴られてるくせに!キモイんだよ!!」

「あぁーうるさいなぁもう。やっぱあんたらは早く死ぬべきだ。一刻も早くね」

「はぁっ?ほんとあんた何言ってんの?頭いかれてんじゃないの?」

話をするたびに殺意が沸いてくるので、私は次の言葉で話を終わらすことにした。

「もう話す必要もない。さようなら。世界に必要のない人たち」

そう告げて走り出した瞬間、私はおよそ十メートル程先にいたはずの女達の目の前に一秒もかかることなく立っていた。自分でもびっくりしたが、体の重さを感じない。まるで体重がなくなってしまったかのようだ。瞬間移動とまではいかないが、それでも十分身体能力は上がってる。

急に目の前に自分たちが虐めていた女が来て、さぞかし驚いただろう。

いろいろ考えたが、まずはリーダーの女の腹に一発蹴りを入れてやろうと決めた。

殴るより蹴りの方が強いと誰かが言っていた気がしたからだ。

私は思いっきり力を込めて、おらぁっ!!と叫び声をあげて、缶蹴りの缶を思いっきり蹴るが如く足を振りぬいた。

見ると、自分の蹴りあげた脚が思いっきり、リーダーの女の腹を貫いていた。

「うわぁぁ!!」

自分がやった行為なのに思わず驚いて叫び声をあげてしまったが、私はすぐに冷静を取り戻し、貫いているその脚を今度は上にあげ、腹から頭まで魚の開きのように裂いてやった。

女は床に倒れこみ即死。残るは後三人。

次はどいつを殺してやろうかと思っていたが、こいつらの顔を見るたびに嫌な思い出がフラッシュバックするのが嫌になり、まとめて殺すことにした。

涙を流して腰を抜かしている三人を掴んで、少し時間をずらして空高く放り投げた。

凄い。これが悪魔の力・・・・・・。ほんとに人知を超えている。今こうして、私を虐めていた女共を圧倒的な力で追いつめている。どうやら、悪魔と契約して成功だったみたい。

放り投げた女共が一人ずつ順番に落ちてきたのを確認し、急いで一番先に降ってきた女の下に行き、私は腕を上げて待った。そして、二人、三人目も同じ方法で腹を貫いて殺した。

糞女の串刺しの完成。滴り落ちる血を浴び続けるのが不愉快になり、腕を振り抜いた。

そして、一人ずつ顔面を踏みつぶしていき、顔の原型がなくなるまで続けた。

刃物と化していた腕でついでに体もサイコロステーキの様に細かく切り刻んでやった。

十分後。ようやく全員を殺すことに成功。

本当はもっといたぶって殺してやりたかったが、悪魔の力が想像以上すぎてすぐに殺してしまった。

深呼吸をして落ち着こうとしたその時、後ろから聞きなれた声がした。

「どーや、篝ちゃん。これで気ぃすんだかいな?」

「うん。最高の気分」

「そうかいな。なら、うちも嬉しいわ。特殊能力がわかる間もなく普通の身体能力だけ殺してしもうたなは残念やけど。まぁ人間相手やとしゃーないな」

「ていうか初めて名前で呼んでくれたね。ちょっと嬉しいかも」

「まぁ名前っちゅうのは呼ぶためにあるもんやしな~。でもほんまは、あんまり気が乗れへんというかなんというか」とサタンは少し困った顔で私を見ている。

「気が乗らないって何でよ。呼びにくいとか?」

「いや、せっかく悪魔になったんやし、うちみたいに悪魔っぽい名前の方がええんちゃうかなぁ考えててな。日本名やとなんかしっくりこおへんくてな。ほんでな、一応うちが名前を考えてきたんやけど・・・・・・聞いてくれるか?」

そういってサタンは、少し恥ずかしそうにもぞもぞしだした。可愛い。

「そうだね。もう私は人間じゃないんだし、それもありかも。それじゃ教えてくれる?」

「おっ、ものわかりがええなぁ。ほんじゃ発表するでぇ」

ドゥルルルルルルルルとドラムロールを口で言い出したサタンはノリノリだった。

この悪魔、ほんとに大魔王だったのかな。

そしてドラムロールが終わり、バン!と大きく声を出した後にサタンは言った。

「メサイアや!!!」

ひゅーーーっと夜風がなびいて、静寂が訪れた。

「あれ?なんで無反応なん?気に入らんかったか??」と泣きそうな顔でサタンは見てきた。

「いやいや、違うよ。メサイアって意味を思い出していたんだけど。確か、救世主って意味じゃなかったっけ?かっこいいけど、なんか悪魔より天使とかそっちよりの感じがするんだけど」

「気にせんでええって!なんたってこの"元”大魔神サタン様が命名したんやからな」

「わかったわかった。それじゃ、ありがたくこの名前を使わせてもらいます。それにしても、なんでメサイアって名前にしようとしたの?」

私の問にサタンはよくぞ聞いてくれましたとばかりに、ビシッと親指を自分に向けて言った。

「『うちにとっての救世主』っちゅう事や!」

なるほど。なるほどなるほど。なかなか良い理由だな。

「そうなれるように頑張るので、よろしくお願いします」

「おう!これからうちとあんた、二人三脚で頑張ってくで~!!」

そしてガッチリとお互いの手を握り合った瞬間、バキバキと骨が砕ける音が響いた。

「いったーーーーーい!!」

「あぁ、すまんすまん。握る力間違えたわ」

ぺロっと可愛らしく舌を出して謝るサタンの笑顔は、まるで小悪魔のようだった。

萌えた。

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