とある男の参加理由と末路
とある男の参加理由と末路(1)
「あいつって臭いよな」
「ああ、臭い、臭い」
「なんであんな臭いやつが学校に来ているのさ」
それら全ての罵声はオレの隣に座るあーちゃんに向けられたものだった。オレとあーちゃんは幼馴染だった。
そんなあーちゃんのお父さんはかつて一流企業の社長だった。今は違う。何もかも失ってしまった。
急成長を遂げた『リエンター』って企業にお客を取られた。それでもへこたれず家族のためにアルバイトをしている。その姿は世間から見れば情けないかもしれない。でもオレはそれをすごいことだと思っていた。尊敬していた。
オレの親戚のおっちゃんも社長だったが不景気で工場がつぶれ、自殺していた。それに比べれば、あーちゃんのお父さんはすげぇ。
そして貧乏になったあーちゃんは風呂に毎日は入れないらしい。ボロいアパートには風呂もなく、かといってお金もないから銭湯にだってそんなに通えない。だからあーちゃんは毎日お風呂に入れない。
でもオレはあーちゃんがそれを気にしていつも濡れタオルで身体を拭いているのを知っている。っと勘違いすんなよ。それを見たわけじゃねぇーから。あーちゃんが気恥ずかしそうに言ってくれたんだ。当然信じるさ。
だからあーちゃんは臭くない。
一緒に弁当を食っている時、「気にするなよ」なーんて言えれば格好いいんだが……オレはグレてるわりには度胸なしだった。
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