ゲームスタート act.翌檜 光
ゲームスタート(10)
「少し、お待ちくださらない?」
おれや他の参加者が散ろうとした間際、戌亥はおれ達を呼び止めた。
ちなみに仮間瀬は投票部屋(さっきおれ達がいた部屋。便宜上そう呼ぶことにする)に拘束されることを了承しており、今この場にはいない。
投票までの一時間、投票部屋に拘束され続けるらしい。考えてみるとそれは酷のように見えたが、本人が拘束されるのを了承したのだ。それにもとより犯罪者だ。かわいそうなどと思ってやる必要などまったくない。当然の報いだ。
「何か用か?」
不機嫌そうな声で答えたのは雉城。
「提案がありますの。最初の投票で、まずは仮間瀬を脱落させませんこと? いくら利点があるとはいえ、それでも何が起こるか分かりません。犯罪者を留まらせるほうが危険ですわ」
「私は……賛成です」
弱々しい声で賛同するのは揺島。
「あちきも……賛成」
続いて賛同したのは犀川。
「おれも賛成だ」
利点は確かに魅力だが、同時に危険性は否めない、そう判断したおれも賛同しておく。
「さっきはスリリングだって言ったけど、こうも賛成が多いようじゃ、撤回しようかな……」
「じゃ僕も賛成しておこうかな。一千万円貰えるだけでもいいや」
他の参加者に便乗するように風火と安食も意見を覆す。
「俺は反対だ」
次々と賛成意見が出るなか、雉城だけが反対した。
「どうしてですの?」
「そもそも一千万円程度で脱落させるのか? あいつを留まらせたほうが確実に優勝金額が増えるんだぞ」
「そういう問題ではありませんの。今は金銭ではなく道徳で考えるべきなのです」
その言葉を聞いた雉城はアホかといわんばかりの顔で、
「拘束しているだろ。それともこのゲームの主催者を信用してないのか。だとしたらそれすら信用できないお前を俺は信用しない。それに道徳ってなんだ。何であれ、誰であれ人を拘束する、それが道徳か。そして何より俺達は賞金を貰うためにゲームをやっているんだ。今は道徳よりも金だろう」
「何をおっしゃいますやら。何事も優先すべきは道徳ですわ。当然ともいえます。拘束しているとはいえ、万が一はありますでしょう? 彼は大量殺人犯なのですから」
ああ言えばこう言う。終わらない応酬を繰り返す戌亥と雉城に辟易する。一時間しか時間がないのに何をやっているんだ。
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