ゲームスタート(7)
「それでは、結論から申し上げましょう。このゲームの優勝者に与えられる金額は一億円ではありません。一回ごとのゲームに影響され、その金額は変動します。プラスにもマイナスにも。金額は参加者の腕次第というわけです」
「具体的にはどういうことなの?」
女のようにも見える長髪の男――胸のネームプレートには『
「それについてはあちきも知りたい」
そばかすが残る女性――胸のネームプレートには『
「このゲームは一回の投票ごとにレートが設定されています。このレートは脱落者の損益に影響します」
つまり、とマリオネは言葉を区切り、一呼吸。さらに続ける。
「脱落者が利益を持っていた場合、プラス一千万円、損失を持っていた場合マイナス一千万円にレートを乗じた金額が優勝金額に足されます」
「ちょっと待て!」
疑問が生まれた俺は思わずマリオネに叫んでいた。いきなりあげた大声に揺島がビクッと体を震わせていた。
「おれたちの損益なんてどうやって分かる?」
「それについては心配ございません」
おれの声に対してマリオネは冷静に答えた。
「既にこちらで調べて算出しております。もし自分が損失なのか利益なのか分からない場合にはこちらに申し出ていただければ収支情報紙をお渡しします」
「……なるほど」
その説明におれは納得した。レートと脱落者の損益、それがあるからこそ、脱落者を決めるという行為に意味が出てくる。
誰を落としていかに稼ぐか、それが重要ということだ。
「さて、それでは最初に戌亥エレナ様が言われた疑問。仮間瀬戌様とゲームを行なう利点についてお話しましょう」
「今のルールを聞いた限りじゃ、現時点でそいつがいることに特に利点はないように見えるよ?」
安食が気づいたように言う。それはおれも気づいていた。
「それに、その……その人と一緒にゲームをして大丈夫なんですか? 危険はないんですか?」
やはりというべきか見た目が弱々しい揺島が心配だと訴える。
「それについては今も手錠で拘束しております。そこまで心配だとおっしゃるなら拘束具を使っても構いませんよ。もっとも仮間瀬戌様からお許しが出ればですが……」
「オレはそれでもいいよ。それであんたが安心できるならね」
そう言って仮間瀬は気味悪くキャハと笑う。
本人である仮間瀬が了承してしまったので、揺島はもう何も言えないようだ。
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